#12917
Ippei Tsuruga
Keymaster

お返事が滞っている間に、すでにJPO先が決まってしまったかもしれませんね。国際機関とひとくくりにいっても、各機関で全く異なる予算・人事制度をとっているようです。ILOの場合、新規案件の形成が極めて少ない印象です。これは、UNICEFのように一般からの寄付がなく、補正予算のように任意拠出金が不定期で突然各国から貰える機関ではないためだと思われます。後者についていえば、ILOを担当する各国の省庁は労働省であり、ODAは一般的に外務省が予算を多く握っていることが原因かと思います。また、資金が集まりやすい緊急支援業務を担っていないことも任意拠出金が集まらない要因と思います。ILOのさらにニッチな部局であれば、技術協力プロジェクトがほぼ皆無となり、ゆえに、新規のポストが作られることは数年、数十年に一度といった頻度となるのではないでしょうか。そうなると、誰が退職するか把握しているか、技術協力プロジェクトの多い分野を選択しているか。この二つが生き残れるかを判断するためには重要となります。端的に言えば、内部公募がないことも問題ですが、そもそもポストの絶対数が少ないです。

ILOにおけるコンサルタントの扱いについて、説明します。ほかの国際機関では、半ば職員のアシスタントのような形で「コンサルタント契約で修行する」といったことが当たり前のように行われているのを耳にします。ILOでは、コンサルタントは成果物ベースの外部専門家といった扱いで、職員ではないのでオフィスへ来たり、日常的にスーパーバイズしたりしてはいけないこととなっています。そのため、みなし職員のようなコンサルタント契約は極めて少ないと思います。

また、国際機関の多くは最近、1年未満の短期契約(TA)の運用を増やしているようです。おそらく、社会保険やその他の権利が期限付き契約(FT)と比較して低いため、予算を節減できるためかと思われます。ILOはTAも原則運用しないようにしているようです。つまり、ほとんどの職員はFTです。雇われている人はよいですが、TAが多い期間と比べると雇用の流動性は下がります。これも公募ポストが少ない要因かと思います。

JPO後にILO内でポストが見つからない場合も多く、ほかの機関へ移る方も多いです。階級を上げていくには、公募へ応募するしか道はありません。ほかの機関の事情を詳細に把握していないので何とも言えませんが、私の印象では、「どこからともなく予算がやってきて契約延長される」ことはILOではほぼほぼないです。ほかの期間で働いている知人からよく耳にするのは、「上司と契約延長交渉をして・・・」というものですが、ILOの場合、予算の有無・新規案件の見通しは中にいれば大方把握できるくらい少ないため、自分の契約延長のための予算があるかどうかは何となくわかります。その場合、交渉しても上司も予算を持っていないことは自明です。

ILOから他機関へ行く方(いかざるを得ない方)はたくさんいるのではないでしょうか。移民労働関係は割とそういうパターンは多い印象ですし、児童労働・UNICEFというパターンも耳にします。私見ですが、OECDは研究者を重宝しているような気がします。そのため、刊行物の雰囲気ももっと研究よりな印象です。ILOから転職された方も知っていますが、ILOはフランス人の多い組織なので、パリに住みたい方はOECDを選んだり、家庭の事情も関係しているような気がします。