#8425
Ippei Tsuruga
Keymaster

ご投稿ありがとうございます。私が経験のない分野の話になるため、ILOでの経験や他機関の知人からの見聞をもとに回答します。

期限付き職員やコンサルタントとしてのキャリアはどのようなものか。この点については、国際機関では既に終身雇用はほぼ存在しないと考えて頂いて語弊ないかと思います。たとえば、かつては国際機関の「正職員」というカテゴリをしばしば耳にしましたが、現在では何が正職員で何が非正規なのか、かなり曖昧な気がします。たとえばILOの場合、期限のない契約(WTL)、期限付き契約(FT)、一年未満の期限付き契約(TA)を総称して正職員(Staff)としています。一方、コンサルタントは職員ではないため、原則としてオフィスに通勤してはならず、成果品の提出を以て報酬が支払われることとなります。

契約の安定性についてご心配なのかと察します。日本の学術界も相当厳しいと聞いていおりますが、国際機関もそれに負けず劣らず不安定なのではないかと感じます。それは職員であれコンサルタントであれ、日本の感覚からは到底考えられないほど不安定に感じるかもしれません。予算の有無で契約が延長されるかが数か月単位で決められる状況はザラにあり、口頭では契約延長を約束されていたにもかかわらず、契約満了の一か月・一週間前になって延長されないことを知らされる最悪のケースも頻繁に耳にします。

コンサルタントのポストをどのように獲得するか。私はコンサルタントとして雇われた経験がないため、回答が難しいです。一方、コンサルタントを雇う立場で仕事をしている身としては、まったく当てがない状況で個人コンサルタントを公示した事例は、極めて少ないのではないかと感じます。TORを数名に送り、関心表明があった場合にプレゼンをしてもらい選定するのが一般的で、研究分野や専門性の高い分野については特命随意契約も相当多い(競争入札にあわない)と思います。結論としては、どのような形であれば、内部関係者にならなければコンサルタントとしての一歩を踏み出すことは難しいのではないでしょうか。OECDでインターンの経験があるのであれば、当時の関係者にCVを送り、コンサルタントの機会があればお誘いを待つというのもありかと思います。

JICAの短期契約で国際法の博士号取得者はどう評価されるか。この点については正直わかりません。ただ、日本の組織全般に言えることですが、極めて緻密な計画と規範に基づいた日常業務を回すことで会社が動いています。そのため、阿吽の呼吸で実務を回すことができない人材は敬遠される傾向にあると考えています。博士号への偏見というよりは、日本の組織文化での実務経験の有無のほうが採用に響いてくるのではないでしょうか。