経済成長はカンボジアの慢性的貧困を改善したか?

この記事はThe Povertistに投稿されたものです。

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著者名
Ippei Tsuruga

論文の題名
Chronic poverty in rural Cambodia: Quality of growth for whom?

論文が答えようとしている問い
経済成長はカンボジアの慢性的貧困を改善したか?

政策メッセージ
経済成長によって消費は改善したが、慢性的貧困の根本的な原因の解決には至らなかった。世帯消費のみに基づき貧困削減政策の対象選定を行うと、支援を最も必要とする慢性的貧困世帯を対象外とするリスクがある。

分析手法
全国規模で実施された2つの調査から得られた定性的データ(参加型貧困アセスメント)と定量的データ(家計調査)を組み合わせることで、2004年と2010年の多次元慢性的貧困率を推計・比較。

分析結果
世帯消費を基準とする従来の方法で推計された貧困率は大きく改善したが、多次元慢性的貧困率は11%のまま変化がなかった。経済成長は確かに慢性的貧困層の消費水準も底上げしたが、貧困の悪循環を根源から断ち切るために必要な生産的資本や人的資本の拡充を促すには至らなかった。また、慢性的貧困世帯は、労働力人口の割合が低く、子供の割合が高く、母子家庭や少人数世帯である傾向があった。

URL
https://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/workingpaper/jrft3q00000026r7-att/JICA-RI_WP_No.104.pdf