インドネシアのドタキャン文化と、国際社会への適応

5月7日の会議運営が終わり、落ち着いたので、直前に起きた出来事を振り返ってみる。

150人規模の盛大な会議の設営・運営・仕切りを費用含めて要請され、40人くらいは契約関係となり、残り五営業日くらいで、「やっぱキャンセルします」と言われ、「無理です」と返答。「わかりました、やりましょう」と言われ、「理解してくれて、ありがとう」と社交辞令で言うと、「どういたしまして」と言われる。チームに変なやりとりだと思わないか聞いてみると、「いや、折れてくれた向こうにありがとうやで」と。「いや、頼まれて金払ってるのはこっちだから、それは違うだろう」と言うやりとりを、今回だけでなく何十回も過去に経験している。

政府、労組、企業(APINDO)から依頼を受け、技術研修・政策支援を行うのが私たちの仕事です。ただし、依頼者からはお金を頂かない点が民間と異なります。依頼内容に関心のありそうな第三者に提案し、資金提供を受け、事業を作る。

そのため先方政府から依頼を受け、事業実施時にドタキャンされるという不義理は、他国では一般的ではありません。ただ、インドネシアでは日常茶飯事です。そして公式な謝罪がないどころか、むしろ、「実施できるように協力します」と言われることが多いです。多くのインドネシア人職員同士の会話では、ここで「ありがとうございます」と波風立たせず返答して、会議が終わります。

私は、その都度、「そちらが依頼してきて、こちらが協力しているのですよ」と明確に伝えます。親しき中にも礼儀あり。インドネシアが先進国の仲間入りを自称しつつある中、国際社会のモラルを伝えるのも大切だと考えています。

今回の場合は、一方的にWhatsAppでドタキャンの連絡がスタッフを通じて届いたので、私に直接メールで伝えるようにしてもらいました。メールを受けてから、スタッフを通じて問い詰めると「上司(副大臣)が急にこの会議に出たいと意向を示したが、その日は予定が一杯だったので、延期して欲しい」という理由でした。

こちらからは、「多くの関係者と契約を結び、運営に関わっているので一人の意向で変えられる話ではないです。代理を立てて結果を上司に報告するようにしてください。」と伝え、予定通りの開催を理解してもらった。

その後、社交辞令で「理解、ありがとう」とメッセージを送ったところ、「どういたしまして」ときたので、それは違うだろうと思った次第です。これは実はインドネシア語では定型の返答で、本人も悪気があってのことではないです。ただ、こうしたやり取り自体が当たり前で、「ありがとう」「どういたしまして」を言う人が逆になるパターンがインドネシアでは頻繁にあります。

先進国の仲間入りをするインドネシアには、大国にありがちな「国内の論理を対外関係に持ち込む姿勢」が、無意識に滲み出る場面がまだまだ多いです。