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  • #8418
    石井暢
    ゲスト

    敦賀さま

    お世話になります。
    昨年10月にも質問させていただきました石井と申します。
    キャリア構築について新たな疑問があり、再度質問させていただきたく思います。

    前回の質問で敦賀さまが走りながら考えてみてはどうかと仰っていたのもあり、その後NGOやJICA事務所でのインターンを行い、
    結果日本が行う開発課題解決の中核を専門性をもって担える人材になりたいと思い、開発コンサルタントを目指すことにしました。

    よって修士号を取るべきことは決まったのですが、一度途上国でプロジェクトの経験を積んでからのほうが学びを最大化できるかなと考えています。

    以上を踏まえて数点質問なのですが、

    ①ジュネーヴでの勉強やトーゴでの経験から、学部課程の卒論ではアフリカの非国家主体(古くから力を持つ伝統的・社会的なリーダー等)の社会サービス供給や開発における役割に着目して書きたいと考えています。こうした事項は学問的にはガバナンスや社会福祉に分類されると考えて間違いないでしょうか。

    ②大学院進学前に途上国での経験、特にガバナンス・社会福祉分野での経験を積める場所がなかなか見つかりません。青年海外協力隊で上記のような分野のプロジェクトに関われると思いますか。また、仮にJICAに入構し上記のような分野のマネジメント業務に関われた場合、それを大学院での学びに活かすことはできるでしょうか。

    ③いろいろな方に話を聞いたところ、ガバナンス分野の開発コンサルというのはあまり存在しないようです。むしろUNDPのような国連機関のほうがそうした専門性を求めているとのことでした。この時点で自分のやりたい分野・立場とニーズが矛盾していて困っています。国連機関で勤務する際に「国籍」というアイデンティティはどれくらい意味を持つのでしょうか。当たり前かもしれませんがやはり「日本人として○○をする」というよりも「国連機関の一員として○○をする」という意味合いのほうが自分自身としても外から見ても強くなるのでしょうか。

    以上、お忙しいところ長文で恐れ入りますがよろしくお願いいたします。

    #8426
    Ippei Tsuruga
    キーマスター

    一つ目のご質問については、正直なところよくわかりません。Social Welfareが日本語で言うところの社会福祉と理解していますが、定義は国によって、研究者によって曖昧です。これは社会保障分野でもしばしばあることで、Social Security, Social Protection, Social Assistance, Social Insurance, Social Welfare, Social Policyのどれをとっても、定義が常に議論になります。

    青年海外協力隊の公募にアンテナを張ってみてはどうでしょうか。私もすべてを把握しているわけではないので何とも言えません。ただ、福祉分野のJICA事業は、障害分野に偏っている印象を持ちます。

    ガバナンス分野の開発コンサルというのはあまり存在しないのは、JICAのガバナンス分野の事業が相対的に少ないことが背景にあると思います。JICAが企画しなければ、開発コンサルタントには仕事は生まれません。JICAのような二国間援助機関はガバナンス分野の支援に一定の制約があるのが背景にある気がします。つまり、内政干渉にならない範囲でガバナンス支援をしなければならないという制約です。また、ガバナンスに不安のある国は職員の安全確保が厳しい傾向もあり、邦人職員が死傷するリスクを抑えなければならないJICAのような機関は事業展開に制約があります。国際機関も職員の安全確保は優先事項としていますが、ご存知のようにJICAがいないような紛争地帯等でも国際機関は活動しています。

    国際公務員としてのアイデンティティを持つべきか、日本人としてのアイデンティティをもって国際機関で働くべきか。私は後者を支持します。これは生まれや育ちに左右されると思います。残念ながら日本社会に適応できず、日本で働くのが嫌だから国際機関を選ぶ日本人も相当数会ってきました。しかし、どれほど綺麗ごとを言っても、国際機関は国籍を持っている者同士が働く場です。幼少期から外交官の両親とともに様々な国を転々としてきた職員の中には、自国のアイデンティティがない状況で働いている人もいますが、例外ではないでしょうか。そもそも、国際連合は世界大戦の戦勝国によって成立し現在に至っていますし、国連公用語も国籍別採用人数も私たち日本人にとっては不公平なものとなっています。予算を自国から持ってくることも日常的に求められるでしょうし、基本的には自国とのつながりで仕事をしている職員のほうが大多数かと思われます。

    #8433
    石井暢
    ゲスト

    敦賀さま

    唐突な質問にもかかわらず、大変詳しくご回答いただきありがとうございます。

    やはりいろいろな方のお話を聞く限り、「ガバナンス分野で」「日本のODA事業に関わる開発コンサル」というのは仕事が回ってこなくて難しそうですね。
    社会福祉というのも定義が曖昧な分、その中で何にコミットしたいのかよく明確化して研究を進める必要があると感じました。

    最後の日本人のアイデンティティについてのご意見、大変興味深く拝見しました。
    西欧中心の機関にあって日本人としての気概を忘れず、というのも苦労しがいがありそうなので、上記の専門分野と合わせて走りながらよく考えようと思います。

    ありがとうございました。
    (いつもTwitterなどでの情報発信もフォローさせていただいています。頑張ってください。)

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