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Agodaの二重払いへのずさんな対応

この記事はTABINCIに投稿されたものです。

Agodaはかつては良い会社だったが、利用をやめようと思う。2005年にタイで創業され、いまや言わずと知れた会社となった。2010年に利用をはじめ、今日に至るまで相当使わせてもらった。出張手配、私的な旅行。日本国内外問わず多用してきた。メールボックスに残る最初の予約は、2010年1月下旬のシエムリアップ(カンボジア)のAngkor Palace Resort & Spa。プノンペンのILO事務所でインターンをしていた時、訪ねてきた母をアンコール遺跡へ連れて行った際のものだった。2007年に登場したスマートフォンがまだ一般的ではなかった時代、旅人はグーグルマップではなく、印刷した地図とLonely Planetの文字だけの住所を頼りにアジアを歩いた。同様に、インターネットを利用したホテルや航空券の予約はまだ新しいサービスで、特に東南アジアではAgodaは草分け的存在だった。

ただ、そろそろお別れの時が来たのかもしれない。

ここ数年、Agodaのサービスの質の低下が著しいと感じてきた。予約を入れて確認メールが届かず、自動メッセージで何度も「お待ちください」と連絡が来るのみだったこともあった。ホテルに直接問い合わせると、「Agodaからは連絡も来ていない」との回答で、慌てて直接ホテルのウェブサイトで予約を入れたのは記憶に新しい。

他にも色々な面で目に付くことが増えてきた。電話番号の変更一つとってもウェブサイトで完結せず、カスタマーサービスとやり取りをしなければならない。また、Agodaで予約を入れる際に入力した情報がホテル側にわたっておらず、チェックイン時に再度個人情報などを書かなければ、何のためにAgodaに個人情報を提供するのかがわからなくなる。問題が起きても誠意をもって迅速に対応する体制にあればよいのだが、カスタマーサービスは煩雑なやり取りを生むだけで問題を解決してくれないことが多い。

極め付きは今回の出来事。二重払いは泣き寝入りとなる覚悟が必要のようだ。12月上旬の宿泊に際し、Agodaで予約と決済を行ったが、チェックイン時に未払いということで支払いを求められた。ホテルのフロントで支払いを済ましたものの、Agodaもクレジットカードから引き落としていた。Agodaのカスタマーサービスへ二重払いを報告したのが12月13日。入れ替わり立ち代わり、別の担当者から英語と日本語でやり取りが続き、領収書など提出済みの書類を何度も別の担当者から求められることが続いた。その間、二日に一回、自動メッセージで「48時間以内に対応するのでしばらくお待ちください」と届き続けるが、数週間たっても解決には至らず。もはや、人間とやり取りしているのか、機械とやり取りしているのかもわからない状態となった。

カスタマーサービスへ連絡を開始したのが、12月13日。これを書いているのが、1月14日。一か月以上たったが、約一万円の二重払いの返金はない。この間、36通のメールをAgodaの人間か機械から受け取っている。

大まかに時系列順に並べると以下のようなやり取りとなった。

12月13日 Agodaへ二重払いについて報告。支払い証明等求められ、送付。英語の翻訳を添付するよう求められ、こちらでグーグル翻訳を使い、返信。

12月18日 「ホテルのミスだったので、7営業日以内にホテルが返金します」とAgodaから連絡あり。

12月26日 続報がないので連絡すると、「もう少し待て」と言われる。

12月30日 「7営業日を当に過ぎたが返金がない」と連絡すると、「再度ホテルへ依頼した」と返答。

1月14日 続報がないので連絡すると「あなたのほうからホテルへ連絡したり、書面で請求することを勧めます」と返答あり、カスタマーサービス終了のメール(満足度調査)が届く。「責任をもって対応するように」要求すると、「支払い証明等をお送りください」と再び最初のやり取りが始まる。「これ以上時間をかけることができないので、ここでやり取りを止める」と通告すると、「支払い証明等をお送りください」と再び自動メッセージが届く。

これが、一流の会社、一流の職業人であれば、Agodaが即時返金し、ホテル側からAgodaが回収するものだ。残念ながら、Agodaはそういう対応をすることはできず、結局、私は一万円を詐取されたような感覚にある。カスタマーサービスの対応も、36通もの大量のメールを受領したにも関わらず、問題解決には至らず。その多くが別のスタッフや機械から送られてきたもので、同じことの繰り返しで時間の無駄だった。

たらい回しにされた挙句、問題が解決せず、消費者側が諦める。こうした経験は実はアメリカ在住時に頻繁に経験した。こういう会社とのやり取りは往々にして時間の無駄となり、会社側も消費者側が折れるのを狙っている。結論としては、こういう会社とは付き合わない方が良いということだ。

十数年間、Agoda創業期から利用してきた身としては非常に残念だが、Agodaの利用は減っていくだろう。

ジャカルタのコーヒー文化のシングルとダブル

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近所にできた小さなコーヒースタンド。

スタンドと表現するのが適切かわからないが、カフェ文化が隆盛を極めるジャカルタにおいて、コーヒー屋は大きく三つに分かれる。欧州や日本で一般的な店舗型のカフェを頂点に、キオスクの様に持ち帰りコーヒーのスタンド、路上で粉末コーヒーにお湯を注いで提供する移動販売店。大雑把な価格帯で表現すれば、30,000-50,000ルピア、15,000-20,000ルピア、5,000-10,000ルピアといった具体である。

コーヒースタンドの向こうには、家庭用を少し大きくした真っ赤なエスプレッソマシーンとコーヒーミル。

「これはアラビカですか?」

まだ真新しいエプロンを身にまとった若旦那に拙いインドネシア語で問いかける。

「アラビカです。」

自信に満ちた光が眼鏡の奥に輝く。コンデンスミルクで飲むベトナム式コーヒーを除き、ストレートで飲むコーヒーはアラビカに限る。

食後にミルクはいらない。アメリカーノ12,000ルピア。ジャカルタではエスプレッソをお湯で割ったコーヒーをアメリカーノと言ったり、ロングブラックと言ったりする。

「支払方法は?」

「現金でもQR決済でも大丈夫です。」

コーヒー豆を挽き、エスプレッソマシーンにセットする。手際よくタブレットでQRコードを示す。ジャカルタでは日常のやり取りで、言葉がわからなくても何を言っているのかはわかる。

「ダブルにしますか?シングルにしますか?」

「じゃあ、ダブルで。値段は?」

「同じですよ。」

支払いが終わってからダブルにするか尋ねられて困惑気味の私に、手際よく出来立てのコーヒーを渡す。立ち込める香り。間違いなくアラビカだ。

トボトボと帰路に着く道すがら、ふと思い出す。ダブルと言った時点でエスプレッソの抽出は始まっていた。コーヒーを二倍にはしていない。つまり、一般的なダブル・エスプレッソとは異なる。この場合、シングルと言えば、エスプレッソ一杯分で抽出を止め、お湯を注ぐ。ダブルと言えば、お湯を注ぐ代わりにエスプレッソ一杯分を抽出した後もそのままカップの上まで抽出し続ける。

ジャカルタでは店にもよるが、シングルとダブルで値段が同じところがある。値段が異なる場合は、一般的なダブル・エスプレッソのようにコーヒーの量が二倍。値段が同じ場合は、おそらく今回のパターン。

ジャカルタのコーヒー文化は独自の発展を遂げていて、飽きない。この価格。この味。日本の「コンビニコーヒー」の質の向上が著しいが、ジャカルタに五万とあるコーヒースタンドは多様性に満ちていて面白い。

マカッサルの香り

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スラウェシ島マカッサル。

空港の匂いは地域の匂い。マカッサルの空港印象は、煙草と中国語と涼しさ。

マカッサルは大航海時代に香辛料の集積地として発展した貿易港で、インドネシアの他の地域と同様に三百年以上オランダの植民地だった。

植民地時代にオランダ王室御用達だった香り高いコーヒー豆トラジャ。コーヒー好きであればピンとくる品種で、スラウェシ島が産地。インドネシア独立後、オランダが支配を止め、農園も荒廃した。日本のキーコーヒーが1970年代後半に復活させ、生産と輸出を開始。

マカッサルの名物料理は牛肉を煮込んだものが多い。特筆すべきは、スープは一様に素材の味を活かした調理法で、塩味は極めて薄い。辛い、塩辛い、甘いジャワ島の料理とは一線を画す。薄味で繊細な香りや旨味を好む日本人の舌には合う。

また、鮮魚の水揚げが有名で、インドネシアで一番魚介類が美味しいと言われている。

金融に関しては、キャッシュレス化が急速に進むジャカルタと異なり、多くの商店では現金決済が中心。交通に関しては、交通規則を守らないジャカルタ市民に比べ、信号待ちをする人が多数であることに驚く。

移動手段はGrabとGojekを簡単に呼べる。空港には専用デスクが設けられ、担当が仲介してくれるほど便利で安心な移動手段となっている。ジャカルタはインド型トゥクトゥクが多いが、マカッサルでは目にしない。むしろ、バイクで押すタイプの力車をよく目にする。

ジャカルタの床屋

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旅人には庶民の床屋を試してみて欲しい。

ジャカルタの床屋は価格とサービスもピンキリで、高価格帯選べば必ず良いサービスを受けられるかと言えばそうでもない。ショッピングモールに入居している床屋はカットのみで200,000ルピア前後のだが、日本の田舎の床屋の質には到底届かない。ジャカルタの一般的な暮らしをしている庶民は2席前後の小さな床屋へ通っていて、価格は30,000ルピア前後。路上で営む床屋にいたっては20,000ルピアが相場となっている。価格はどれも2023年時点のものだが、場所による価格差が縮まることは今後もないだろう。

庶民の暮らしに触れたい旅人には小さな床屋や路上の床屋を勧める。「同じタオル、はさみ、ハケ、櫛の使い回しはけしからん」という人は、こだわりを捨てなければならない。ショッピングモールに入居する高価格帯でさえ、衛生面は気になるだろう。あくまでジャカルタ庶民の暮らしに溶け込むことで幸せを感じる旅人へ向けたメッセージだ。

プラカノン市場の外にある屋台

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市場外の麵屋は庶民の朝食場。

週末の朝市は托鉢の僧侶と朝食の買い出しに忙しい人々でごった返している。路上にプラスチック椅子とテーブルが並べられ、即席の屋台が朝だけ開店する。何年も通い続けている常連老婆が友人と向かい合い、お気に入りの麺をすすっている。40バーツの幸せは麺の美味しさだけではなく、朝の涼しさや賑やかさ、市場を出入りする人々と柔らかな朝日、全ての要素の価値としては安すぎる贅沢な時間。

庶民の食事を安全に楽しむ方法

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地元のグルメを楽しむには自己防衛が大切。

地元のグルメを食べ歩くには、衛生面に注意することが不可欠。衛生意識の低いインドネシアでは、ガラスケースに食物を入れたまま炎天下で丸一日営業している屋台をよく見る。もちろん、氷や冷蔵設備のない状態。30度以上の高温多湿の環境で屋台を引いている。程度の差はあれど、屋内レストランでも衛生状態が良いところは少ない。インドネシアに揚げ物が多いのは、滅菌のための調理法として人々に受け入れられてきたためかもしれない。いずれにせよ、先進国のように客が食中毒になったからといって営業停止となることもなく、あくまで自己責任で食事をする必要がある。

自己防衛の簡単な方法を紹介する。辛いものを食べ過ぎないこと。少しでも違和感のあるものは吐き出すこと。辛いものに慣れていない人は大抵の場合、胃腸が唐辛子に耐え切れず、数日間は腹痛に悩まされる日々を過ごすことになる。辛さに体が慣れるまでは控えたほうが良い。また、匂いや味が少しでも変だと感じたら、迷わず皿の隅に吐き出すことが大切。特に魚肉のすり身や厚揚げを含む豆腐料理は危険なことが多い。高温多湿の環境下で保存された肉団子や豆腐は細菌が繁殖しやすい。高温で揚げたとしても中心部まで熱が通りにくい。回転の良い食事処は比較的安全だが、回転の悪い食事処は高確率で食材が腐っているので要注意。

ジャカルタで良いカフェを見つける方法

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ジャカルタはカフェ文化全盛期。

新しいカフェが続々と開店するジャカルタ。ジャカルタのカフェ文化は競争も相まって極めて洗練されている。舌の肥えた味にうるさいジャカルタ市民の目は厳しく、評価の低いカフェはあっという間に淘汰される。新しいカフェが日々生まれ、先月あったカフェが無くなっていることも日常茶飯事。

アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ。世界中を旅する中でカフェ文化に触れてきたが、ジャカルタのカフェ文化は質も量も他の追随を許さない。カフェの店舗数、コーヒーの味、カフェの雰囲気。どれをとっても、ジャカルタは世界一のカフェ文化を持っていると感じる。どのカフェも個性豊かで洗練されたコーヒーや空間を提供する。平均して全てにおいてレベルが高いのが、ジャカルタのカフェ文化の特徴だ。

カフェ文化の全盛期にあって、お気に入りのカフェを見つけるのは楽しみでもあり、難しい点でもある。乱立するカフェの中から本当に良いカフェを見つけるには、コツと経験が必要となる。ここではいくつかのポイントを伝えたい。

まず、グーグルマップの評価が5段階中4以上で、評価数が少なくとも200件以上のところを優先的に訪ねるようにする。その上で、コーヒーにこだわりのあるカフェはいくつかの共通した特徴を兼ね備えている。店名にRoastery(焙煎所)と入っているカフェは、自前で焙煎していることが多く、高い確率で店主がコーヒーにこだわりを持っている。また、メニューにV60(日本のペーパードリップ)があるカフェは、コーヒーの淹れ方にこだわりがあると考えて良い。これらの要件を満たすカフェはほとんど例外なく良い味のコーヒーを出してくれる。

ジャカルタのカフェ文化に浸透する日本式

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お猪口と徳利でドリップコーヒーを飲む。

インドネシアの庶民的なコーヒーの淹れ方はトゥブルクという方法(沈殿式)で、お湯を注いで沈殿したあとの上澄みを飲む。ジャカルタや大都市のモダンなカフェが増えていて、小さなカフェでも立派なエスプレッソマシーンを備えているところも多い。そのため、イタリア式のエスプレッソベースのコーヒーがより一般的になっている。

一方、淹れ方にこだわりのあるカフェでは、フレンチプレスによるフランス式、日本式のペーパードリップ、ネルドリップ、サイフォンなどを置いているカフェもジャカルタではよく見る。メニューには日本式と記載があったり、ハリオの製品名「V60」と記載されていることが多い。日本式を選択すると、お猪口と徳利で提供されるパターンも多く、日本の文化がジャカルタのカフェ文化に与える影響を垣間見ることができる。

雨宿りのコーヒー

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ジャカルタでは急な夕立が朝昼晩問わずやってくる。

散歩中も雲行きを見ながら建物を探す。急ぎのときは大きな木の下に逃げ込み、木々の間から滴る雨水に濡れながら、「ずぶ濡れになるよりマシだ」とつぶやく。

木陰には決まって屋台が身を寄せて営業していて、雨宿りの客はプラスチック製の硬い椅子に腰掛ける。子連れのおばちゃんが営むバラック小屋には小分けにされたティーパックとインスタントコーヒーがぶら下がっていて、昭和の駄菓子屋のようで懐かしい。インドネシア語のわからない外国人に笑顔で話し続け、「わからない」と言っても話すことを止めない。

5,000ルピアを払ってインスタントコーヒーにお湯を注いでもらう。いつ止むかもわからない雨に濡れながら、硬い椅子ですする雨宿りのインスタントコーヒーは、洒落た喫茶店の味も忘れさせる。

雨宿りの同僚だったおじいさんは、どこからともなく届けられた大きな傘をさし、雨の街に消えて行った。

春のサンモリッツ

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うっすら雪化粧のカラマツの山肌が、波のない朝の鏡に姿を映す。 少しずつ大きくなる円形の水面の淀みの先に、ぽっかり姿を見せ …