Kounachir
¥299
国後島には道東の原風景がそのままある。日本のポツダム宣言受諾後にロシアが違法に占領した国後島は、ほとんど発展していないように見える。この作品に登場する島民は皆、自身の貧しさを強調し、政府が開発しないことを批判している。象徴的なのは住民の姿勢。「移住した住居にトイレも風呂もなく、政府に依頼したが自分で解決しろと言われ、40年間トイレも風呂の無い生活をしている。」という他力本願なコメント。荒廃した土地が、荒廃したまま残されているのも頷ける。
日本人が寄贈した「希望」と「友好」という名の客船を前に、経営者が語った言葉も印象的。「日本人は本気で領土返還を求めている。船の煙突には元々日本国旗が描かれていたが、我々がロシア国旗に塗り替えた。日本人は気を悪くしただろうが、ここはロシアなのでロシア国旗を掲げなければならない。」という件が日ロ関係を表している。日本の希望的観測に基づくロシア支援は、ロシア人にとって単なる天から降って沸いた贈り物で、見返りを送らねばならないとは微塵も思っていない。
「我々は戦争をし、日本は降伏し、ロシアが勝った。日本人は出ていき、我々はここで生活をする。日本に領土を返還する理由はどこにもない。日本が平和条約を求めるべきで、我々ではない。」という発言もロシアの立場をよく表している。丸山穂高議員が「戦争せずに、どうやって北方領土を返還させるのか」と言い、国会で糾弾された。ウクライナが侵略された今、当時の国会議員たちは何を想うのだろうか。ロシアとはそういう国である。
そこに住んでいる人に罪は無いかもしれないが、日本人として、道東の人間として、本当に胸糞の悪い作品。その点、この作品は良く仕上がっているとも言える。