マーシャル諸島の貧困が悪化、小島嶼開発途上国は取り残されるのか?

SDGsは小島嶼開発途上国を取り残すのか?

持続可能な開発計画(SDGs)が採択され、国際社会の関心が環境の持続性と貧困削減に向いている。持続性と貧困削減。このキーワードで思い浮かぶ地域はどこだろうか。

アフリカ、アジア。多くの方がそうであるように、開発途上国の実務に携わっている私たちにとってもアフリカやアジアに主眼が置かれることは自然である。

しかし、本当に危機的な状況にあるのは、太平洋の小さな島国かもしれない。

マーシャル諸島の貧困が悪化?

アジア開発銀行(ADB)の報告によると、マーシャル諸島の貧困率は37%。2011年の国勢調査をベースに算出されている数値だ。

「数値をアップデートすべきだ。貧困層の生活環境は全く改善していない。」

そう語るのは、マーシャル諸島の首都マジュロ支局のジョンソン特派員(ラジオニュージーランド)。彼が現地で感じた「感覚」によれば、過去5年間で目立った開発は行われておらず、雇用の創出状況にも変化が見られないそうだ。

経済成長著しいASEANやアフリカ諸国は、「最後のフロンティア」と呼ばれ、ビジネスや投資が集まりやすい環境ができている。一方、資源が乏しく、市場規模も小さい太平洋の島国には羨望の眼差しは集まっていない。

SDGsの最大の目標は、「誰も取り残さない」こと。取り残された小島嶼開発途上国から目を背けていては、目標は達成されない。

 

オランダ政府がケニアへの開発援助を停止、2020年から通商パートナーへ

オランダ政府がケニアへの開発援助を2020年で停止する。昨今の目覚しい経済成長を踏まえて、「通商関係(Trade Partner)」とすることが表明された。

ケニヤッタ大統領は兼ねてより、「援助依存からの脱却」を唱えており、オランダの撤退もこうした流れに呼応したと見ることができるかもしれない。

オランダはケニアの独立以来援助を続けてきたパートナーであり、2011年の援助額は150億円だった。

 

JICAがナイジェリアの電力事業完工、太陽光発電システムを無償供与

地元紙によれば、太陽光発電(ソーラーパワー)システムの引渡しが国際協力機構(JICA)とナイジェリア政府の間で完了した。

日本政府のこれまでのプレスリリースと照合すれば、2012年5月15日に署名された、環境・気候変動対策無償資金協力「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」の成果引渡しだと思われる。

同事業は、太陽光発電システムの整備に必要な資金(9.8億円)を供与し,ナイジェリア政府が推進する再生可能エネルギーの導入を支援するもの。

同事業による効果は、発電量1,496MWH、年31.5百万ナイラの節減が見込まれる。

 

スリランカ貧困層へも電気を、電化率100%へアジア開発銀行が支援

アジア開発銀行(ADB)がスリランカの電力セクターを後押しする。ADBは115億円を貸付け、スリランカの電化率100%へ向けた最後の一押しを支援することとなる。

過去25年間で、スリランカの電化率は29%から98%まで改善した。しかし、紛争地帯や小さな孤島に暮らす住民は、未だに安定した電力の供給を受けることができていない。そのため、非効率な自家発電機に頼るのが日常となっている。

こうした現状を踏まえ、ADBは最後の2%の未電化地域へ安定した電力供給を目指す。受益者数は493,000人を見込む。

実施期間は5年で、2021年9月の完工を目指す。

2016年国連総会で生まれた世界のリーダー10人の名言

国連総会で生まれた世界のリーダー10人の名言

先週から開催されている国連総会。ニューヨークでは毎年恒例の風物詩となっています。国連総会は、世界が抱える問題や地域情勢を国際社会に訴える場として、世界のリーダーが一般討論演説を行うことは良く知られています。世界のリーダーが各国を代表し何を訴えるのか。与えられた短い時間に各国の最重要課題だけが凝縮されています。今回は、「世界のリーダーたちの名言集」と題し、一般討論演説で語られた世界の課題を纏めてみたいと思います。

 

テロや紛争が激化する世界情勢

 

不安定な世界情勢が求めているものは何か。貧困や人道危機へ一丸となって取り組むことである。

エレン・ジョンソン・サリフ(リベリア共和国大統領)

 

複雑化する世界情勢を踏まえれば、国連の役割がかつてないほど重要となっている。

アガピト・ンバ・モクイ(赤道ギニア共和国外務大臣)

 

世界経済の停滞

 

世界経済の停滞と崩壊が進む今、国際社会の団結が不可欠である。

エルラン・イドリソブ(カザフスタン共和国外務大臣)

 

日本は国連強化のため努力を惜しみません。日本国民への信頼にかけて、お約束したいと思います。

安倍晋三(日本首相)

 

今こそ行動に移す時だ。SDGsやパリ合意はスローガンではない。世界が待ち望んだコンセンサスなのだ。ある国の取り組みが、他の国の達成状況を左右する。私たち一人一人が役割を課せられている。

ポール・カガメ(ルワンダ共和国大統領)

 

世界は交差点に差し掛かっている。世界情勢をたった一言で表すと何か。不安定(Instability)である。

ギョルギェ・イヴァノフ(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国大統領)

 

国際社会が直面する課題全般

 

汚職は一切容認しない。

ジミー・モラレス(グアテマラ共和国大統領)

 

アメリカの制裁は続いている。進展はあったが、国交正常化への道は長い。

ブルーノ・ロドリゲス(キューバ共和国外務大臣)

 

私の国と人々の未来は、危機に瀕している(気候変動対策を訴えて)。

ターネス・マーマウ(キリバス共和国大統領)

 

私が昨年ここで話してから、百万人以上の移民がギリシャへ入国した(難民受入国への支援を訴えて)。

アレクシス・チプラス(ギリシャ共和国)

アフリカに子供の貧困が蔓延する日、2030年に世界は貧困を撲滅できるのか?

アフリカの子供の貧困が世界の4割の貧困を占める

14年後の2030年、国際社会は絶対的貧困の撲滅を目指しているが、アフリカの子供が世界の4割の貧困を占める世界が訪れるのかもしれない。

英国のシンクタンク海外開発研究所(ODI)の報告書によれば、「2030人までにサブサハラアフリカの子供たちの22%が1.9ドル以下の暮らしを強いられる」可能性がある。

これは、世界の貧困層の43%(約1.5億人)がアフリカに暮らす子供たちということを示している。実に、2012年の数値の2倍に当たる水準だ。

同報告書については、別の記事で詳しくレビューしてみたい。


 

民間セクターの社会保障における役割とは?

社会保障制度と言えば、公的セクターの役割と答えるのが一般的だろう。しかし、民間セクターの社会保障における役割にも注目が集まりつつある。

 

「近年、組織構造が非常に複雑になりつつある。それ故に、公的部門と民間部門を切り分けることが非常に難しくなっているのが実態だ。」

こう語るのは、シンガポール国立大学公共政策大学院のムクル・アシャー(Mukul Asher)教授。社会保障分野において、民間部門が公的部門の役割をどのような形で補完することが可能なのか。

アジア開発銀行が主催した「社会保障週間(Social Protection Week)」で実施されたインタビューをご覧頂きたい。

 

コートジボワールの首都アビジャン港穀物バース建設へ円借款109億円供与へ

8月26日、TICAD VIでナイロビを訪問していた安倍首相とコートジボワールのウワタラ大統領が首脳会談を実施。

安倍首相から、アビジャン港穀物バース建設へ円借款108.69億円を供与する方針が表明された。

また、両首脳は、コートジボワールへの日本企業誘致へ向けて、二国間投資協定の交渉開始を宣言した。

 


参照元:日・コートジボワール首脳会談(外務省)

マラウイのトイレを綺麗にする方法、コミュニティ主導型総合衛生管理(CLTS)という改善策

先日、マラウイのトイレについて思いを巡らせていた。正確に言うと、「トイレ」ではなく公衆衛生を改善する方法だ。6月4日の掲載記事「マラウイ農村の公衆衛生の問題点は?-サニタリーモニタリングを実施して分かったこと」は、現役の青年海外協力隊員による調査結果で、とても興味深い。

県の行政官が一軒一軒訪問して、トイレの衛生状況を指導して回ることは日本では考えられないことだろう。著者も言うように、こうした地道な指導が公衆衛生を改善していくのだろう。

コミュニティ主導型総合衛生管理(CLTS)

開発途上国、衛生改善、トイレのキーワードを聞いて思い出したのが、コミュニティ主導型総合衛生管理(Community-led Total Sanitation: CLTS)という手法だ。文化人類学のアプローチで、ファシリテーションを通じてコミュニティ自らが公衆衛生の重要性を見出すことを促す手法だ。少し調べてみたところ、国際協力機構(JICA)もタンザニアでCLTSを使った協力を行っていたようだ。CLTSの説明についてはJICAのホームページから引用したい。

自分たちの居住地のどこで野外排泄が行われ、それが結局のところハエなどの媒介で自分の口にする食物に戻ってくることを知り、自分たちの行為に「恥ずかしさ」や「嫌悪感」を強く感じさせ、野外排泄を止めさせることを狙った研修。by 国際協力機構(JICA)

私自身も一度、CLTSの旗振り役となっているロバート・チェンバースのワークショップに出たことがある。今でも覚えているのはこの言葉だ。

「公衆衛生の大切さを住民に周知するにはどうすべきでしょうか?それは、牛のウンチの横にご飯茶碗を置き、そこで住民にご飯を食べてもらうことです。」

かなり過激に見える手法だが、8年たった今も強烈に覚えている。人はなかなか口頭で指導されても心に響かないが、CLTSの参加型ワークショップを通じて得られる「羞恥心」や「嫌悪感」といった感情はなかなか忘れないものだ。

上記のマラウイの事例だと、オフィサーが一軒一軒訪問して指導している。CLTSの手法を応用して、効果を試してみるのも面白いかもしれない。南アジアで広く展開されているCLTSはアフリカでも効果的なのだろうか。

私はこの分野の専門ではないが、直感的にマラウイでの活動に生かせる可能性があるかもしれない。


Cover Image Photo credit: UNICEF Ethiopia via VisualHunt.com / CC BY-NC-ND

マダガスカルのトアマシナ港拡張計画へ円借款452億円供与へ

8月27日、TICAD VIでナイロビを訪問していた安倍首相とマダガスカルのラジャオナリマンピアニナ大統領が首脳会談を実施。

安倍首相からがトアマシナ港拡張計画へ円借款452億円供与する方針を表明した。同計画では、質の高いインフラ整備を目的に、日本企業の高い技術を活用することが期待されている。

このほかラジャオナリマンピアニナ大統領からは、日本企業による大規模投資に感謝の意が示され、同国に対する日本企業の更なる投資拡大へ向けて支援が約束された。


参照元:日・マダガスカル首脳会談(外務省)