宮崎大学主催の高校生向け講演での質疑応答

7月16日に宮崎大学が主催した第六回「アメリカン・インフォメーションデスクセミナー」のオンライン講演会で、宮崎県内の高校生にお話しする機会を頂いた。きっかけは、河野久さんからお声掛け頂いたこと。久さんとはほとんど直接会ったことは無いに久しいが、サセックス大学開発学研究所(IDS)の一期上の先輩。2008年6月頃に私が入寮するタイミングで退寮する久さんから生活物資を色々と譲ってもらったご縁。それからオンラインで時折交流が続いていたのは、イギリスの大学院で勉強したお陰と言っても良い。そういうわけで機会を頂くことができた。ILOの社会保障の仕事を紹介した後に活発な質疑応答ができて住した会となったが、追加質問が宮崎西高校の山下先生経由で届いたことには驚いた。大学生や実務家向けの講演を何度もやらせてもらっているが、詳細な質問を後日受け取ることはめったにない。回答させていただいた内容は恐らく全国の高校生にとっても有用だと思うので、質問者の名前は伏せて、私の回答だけ記しておく。

インドネシアの雇用保険制度づくりを支援した件で、ファーストリテイリング社(ユニクロ)と協力して「会社と社員からお金を集めて、退職するときにそのお金をあげる(雇用保険制度)」という仕組みを作っていたが、そのような新たなことを進めるときにどのような話し合いをして具体的にどのように実行したのか?

ILOの事業予算というのは、190以上ある加盟国からの拠出金で賄われています。この拠出金には2種類あり、一つは毎年経済規模に応じて各国に課せられる拠出金(このお金はILOが比較的自由に使えます)、もう一つは「ILOに追加予算をあげて特定の事業をやりたい」と考えた国や民間企業が拠出する任意拠出金です。ファーストリテイリング社(ユニクロの親会社)との共同事業は後者のパターンです。最近では、世界的な大企業は企業の社会的責任(CSR)の一環で、自社と関係のある国への支援を模索していることが多いです(民間企業のSDGSへの貢献もこの一環です)。そうした活動をされていることを知っていたので、こちらから連携の可能性を打診しました。その結果として、インドネシアに雇用保険がないことで失業者が困っている現状を解決するという問題意識を共有することができ、ファーストリテイリング社から任意拠出金をILOへ振り込んでいただき、私たち事業チームがスタッフを採用したり、活動計画を作ったり・・・といった形で事業を進めてきています。

https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/news/1909040900.html

雇用保険のある国と、雇用保険の国のそれぞれの共通点はありますか?

紹介した9つの社会保障制度のうち、雇用保険制度の導入は一般的に後回しになる傾向があります。それはほかの制度の受益者が多かったり、緊急性が高かったりといった理由からです。雇用保険制度のない国では、失業時の所得保障が使用者(雇用主)の責任であるのに対し、雇用保険制度のある国では、退職金の支払いに関する使用者責任が義務ではなく任意となっていることが多いです。日本も後者ですね。

将来国際関係の仕事につきたのですが、そのためにも高校生の時から心がけると良いことは何ですか。詳しく教えていただけると幸いです)

英語と数学に力を入れてみてください。リスニングとスピーキングを伸ばすには、会話を通じて身に着けることが大事です。これは教室の外で機会を探してみる必要があります。地元に会話をする場があれば、そういった機会に飛び込んでみるとよいと思います。英語を使って仕事をするには、読み書きが大切です。これは文法等を学校の授業で身に着けることから始めるとよいと思います。英語を使う機会を多く作る心掛けが大切ですね。数学は学校の勉強がそのまま基礎になるのではないかと思います。私の分野では、統計学、計量経済学、年金数理という分野が数学を要しますが、私は基礎がなかったので苦労しました。