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途上国の国際緊急援助物資供与はこう変わる?一問一答

先日の記事で、災害時の緊急援助物資供与についてAmazonとJICAが連携すると面白いのでは、と書いたところ各方面からポジティブ・ネガティブ両方の反響がありました。ネガティブなコメントについては、言葉足らずの部分があって誤解されているものもありましたので、この機会に少し補足したいと思います。

ここでは、まず前回の記事で伝え切れなかった部分を補足し、誤解を解消したいと思います。その上で、緊急援助の今後のビジョンについて考えてみたいと思います。

 

Amazonに委託することで日本が自社倉庫で物資管理することのメリットがなくなるのでは?

まず、「日本が自社倉庫を世界中に保有している」というのは誤解です。日本の緊急援助を担っているのはJICAですが、私が知る限り、JICAは緊急援助物資の備蓄倉庫は保有していません。こちらの入札公示を見ると、緊急援助物資の備蓄と緊急輸送業務を外部委託しています。

また、外務省が公表している「緊急事態における人道支援の評価(第三者評価)」でフィリピンのケースが紹介されていますが、備蓄倉庫から現地への輸送を運送会社が行ったと記載されています。

つまり、委託業者が備蓄倉庫の管理をし、緊急援助物資の現地までの輸送も行っているのが現状といえます。

 

Amazonがこの競争に参加することで何が変わるか?

日本国内の輸送業者だと、日本通運やヤマト運輸が思いつくでしょう。国外に目を向けると、FEDEX、DHL、UPSといった全世界で国際輸送業務を行っている大手企業があります。これらの輸送業者は自社倉庫・貨物便を多数保有しており、緊急援助物資供与の世界でも競争力があるのではないかと思います。ただ、実際にどの程度受注しているのかは公表されていないのでわかりません。

これが世界の物流業界の構図だとすれば、Amazonが加わることで何が変わるのでしょうか。Amazonの強みは、物資のサプライヤーでもあることです。上記の輸送業者は、物資を備蓄し、現地まで輸送することはできますが、物資を調達することはできません。

JICAの上記の入札公示を見てもわかるとおり、備蓄・輸送に関してのみの委託となっています。つまり、物資調達は別途サプライヤーと契約しなければならないのが現状かと思います。

Amazonがこの競争に参加することで新たな可能性が生まれるのは、物資調達から現地輸送までを一社で完結できるという点でしょう。事務的に業務実施契約が一本で済むだけでなく、検品業務、通関業務、業者間の引継ぎなどのプロセスが簡素化されるので、迅速性の求められるオペレーションに多くのメリットがあると思われます。

 

人道的な緊急援助へ市場競争原理を入れるのは良くないのではないか?

このようなコメントも頂きました。頂いたコメントの意図を汲み取ると、「市場競争が進むと大企業のみが生き残り、人道支援というニッチな分野が魅力的でなくなったときにその大企業も撤退してしまうリスクがある」という指摘でした。たしかに一理ありますが、それでも「すべて国営で実施すべし」と言うのは、税財源が厳しい実情を踏まえれば非現実的だと思います。

緊急援助物資の供与額は、一回当たり数百万円から数千万円程度です。備蓄倉庫管理・輸送業務専用の公務員を雇用し、政府専用機を世界各地に配置し、緊急援助を行うことは割に合わないと思います。限られた予算の中で運用するには、ある程度は専門の業者へ外部委託することが望ましいでしょう。

こうした効率性も踏まえて、上記のとおり備蓄・輸送業務は外部委託し、業者は一般競争入札を経て選定されているのだと思います。

 

Amazon参入へ課題は無いのか?

直感的にですが、そもそもAmazonが緊急援助への参入を考えているとは思えません。ただ、「参入すれば緊急援助の物流にとって良い影響があるだろう」という思いで、先日の記事を書きました。

検討すべき課題は2つあると思います。

まず、日本の緊急援助に関して言えば、最大の課題は言語の問題だと思います。これはAmazonだけでなくFEDEXなどもそうですが、国際輸送業務(ましてや緊急援助)で日本の官公庁と仕事をした経験があまり無いと思います。業務フローの見直しや、英語での業務遂行が可能な環境・体制をまずは日本側で用意する必要がありそうです。

次に、日本の緊急援助物資はあらかじめ決められた物資リスト(スペック)に基づいて調達する必要があります。そして、物資には日本のODAマークを張る必要があります。こうした業務は、Amazonにとって煩雑かつ本業以外の追加業務となるため、Amazonにとってあまり利益の見込めない煩雑な案件なのではないかという気がしています。

アメリカやイギリスがどのような業者と契約し、このあたりの煩雑な業務をどう整理しているのかが気になります。

 

もう一歩進んだアイデアとして、個人対個人の緊急支援

東日本大震災の際、Amazon Japanの「欲しい物リスト」へ被災者が必要物資を掲載し、全国からオンラインで支援が集まった事例がありました。国際緊急援助の舞台でも同様の仕組みが展開されれば、大きな一歩になると思います。

ただ、ここで言う「大きな一歩」というのは、国際緊急援助業務をAmazonが「代替」するということではありません。むしろ、東日本大震災の「欲しい物リスト」のように、個人対個人の支援の可能性が開かれることに意味があるのだと思います。

盛り上がる妄想に水を差すとすれば、この試みにはいくつもの課題も認められます。

まず、Amazonが自社便で現地まで空輸したとしても現地の交通状況が麻痺していれば、現地輸送ができないため物資は空港で止まってしまいます。政府間の緊急援助の場合、現地政府との調整で国内輸送をどうするかが決められます。個人による支援を誰が取りまとめ、現地輸送を確保するのか。整理する必要がありそうです。

また、もう一つの課題は、「メジャーな国や目立つ災害」にしか世界の関心は向かないということです。日本が緊急援助を展開している案件でさえ、多くの国民が知らないものが多数あると思います。個人対個人の支援が、現行の公的機関による緊急支援を代替できない理由の一つです。

 

さて、いかがでしたでしょうか。新しい流れができるとき、課題は山のようにあります。Amazonが緊急援助へ参入することは現実的ではないと思いながらも、こうしたシミュレーションを通じて新しいアイデアが生まれるのかもしれません。

開発援助に占める民間部門の役割が拡大する中、緊急援助のあり方も新しい流れができる日も遠くない気がしています。

一進一退 - 事業報告(2016年7-9月期)

一進一退

2016年7-9月期の事業報告です。一進一退。前期に新しい試みを始めた成果が数字になって表れてきています。ページ閲覧数(PV)は5.9万件で前期比-25%となっております。一方、記事一本あたりのアクセス数は、604件から889件へ回復し、前期比+47%となっております。これは、前期から新たに追加した『開発途上国に関するニュース』というコンテンツの影響です。

これは、開発途上国の地元紙に掲載された注目度の高い記事を日本語に要約して発信するコンテンツで、速報性の高い記事となります。それ故、大量生産、大量消費の記事です。SNSを通じてタイトルだけ見てサイトを訪問しない読者の方も多いコンテンツです。ニュースコンテンツを集中的に追加投入したことによって、前期は129本の記事を公開し、PVは7.8万件まで急増しました。一方、記事数が増えればPVが増える一方、記事一本当たりのアクセス数は減少するという影響が出ています。

今期は、ニュースコンテンツと従来型のオピニオンコンテンツのバランスを保つことに注力しています。事業報告の詳細については、媒体資料 (2016年7-9月期)をご参照ください。

 

提携パートナーの拡大

多方面からお声がけいただけるようになり、提携パートナーが増えています。現在、記事を配信しているのは以下のサイトやアプリです。配信先からの流入は然程見込むことができないため、PVへの影響は軽微です。一方、The Povertistに掲載された記事が他のサービス・メディア媒体に掲載される可能性が広がりつつあることから、開発途上国で活躍する専門家の方がThe Povertistで執筆した記事がより多くの人々の目に触れることになる大きなメリットがあります。配信先・パートナーからのアプローチは、引き続き前向きに検討していきたいと考えています。

 

今後の方針

ニュース記事とオピニオン記事をバランスよく配信していく方針です。ニュースコンテンツについては、貧困、社会保障、開発援助機関の動向といったキーワードのみのカバレッジとなっています。将来的には、ニュース記事をピックアップし、解説を付して発信する専門家・ライターの方が増えれば面白いと思っています(NewsPicksに近いイメージかもしれません)。

開発途上国のニュース記事は、日本であまり報じられないコンテンツです。必然的に、多くの記事がグーグルなどの検索システムの上位に定着しています。ニュース記事を通じた検索からの流入と、より内容の濃いオピニオン記事をバランスよく配信していければと考えています。

 

ワルシャワの無名戦士の墓地

ワルシャワ中心部に設けられたユゼフ・ピウスツキ元帥広場。

フランスの高速道路

フランスの高速道路には街灯がない。

フランスの高速道路

フランスの高速道路には街灯がない。

ジュネーブ近郊のフランスの街へ車で出かけることがある。ミネラルウォーターで有名な街エビアン。そして、フランス第二の都市で食の街リヨン。この2都市へ出かけたわけだが、ハラハラすることに気が付いた。ジュネーブを出るとすぐに高速道路を走ることとなる。しかし、街灯が全くない。夜になると真っ暗闇を自動車のライトを頼りに走行することとなる。

余談だが、開発途上国で仕事をする場合は郊外へ出ると街灯がないため、夜間走行は禁止されることが多い。それと同じ環境が、フランスにあることは驚き以外の何物でもない。さらに恐ろしいことに、高速道路の制限速度は130キロ。真っ暗闇で視界の悪い中、130キロで流れる車列。その中にいるとなかなかスリルがあるものだ。

それにしても、なぜ、フランスの高速道路には街灯がないのだろう。

ワルシャワの平和の象徴

ワルシャワ歴史地区、旧市街ではない世界遺産。

ワルシャワ観光で外すことができないのが、旧市街。ワルシャワ歴史地区とも呼ばれるこの一角は、ユネスコ世界遺産の中でも特別な存在なのだとか。その理由は、この地区が本物の旧市街ではないことにある。

第二次世界大戦末期、ワルシャワを含むポーランド全土の街をナチスドイツが徹底的に破壊していった。ワルシャワ歴史地区一帯も例外ではなく、原形をとどめないほど破壊しつくされたそうだ。

しかし戦後、ワルシャワ市民の復興への情熱により、「ヒビの一本一本まで忠実に再現された」と形容されるほど精緻に、旧市街地区が整備された。その結果、現在この地区を訪れた観光客は皆、古い街並みの中で安らぎを覚えることができる。

まさに、平和の象徴なのかもしれない。

ワルシャワの平和の象徴

ワルシャワ歴史地区、旧市街ではない世界遺産。

ポーランドの道端の芸術

ワルシャワのストリートアートは芸術。

モルディブで港湾整備・拡張、アジア開発銀行が無償資金協力

アジア開発銀行(ADB)が、モルディブのクルドゥフシ(Kulhudhuffushi)で港湾整備・拡張を支援する。事業規模は約9.6億円(9.6百万ドル)で2019年12月の完工を目指す。

港湾整備案件としては小規模だが、8,000人の島民とその周辺の島に暮らす30,000人の住民にとっては大きな転機となる。

ADBのプレスリリースによれば、港湾のキャパシティは150隻/日から250隻/日へ改善するほか、事業実施による雇用創出効果も見込まれている。

接続性(Connectivity)の改善を通じて、経済成長だけでなく、雇用拡大や教育・保健サービスへのアクセス向上も期待されるところだ。

ミャンマーで大規模灌漑事業、アジア開発銀行が農業セクター支援

アジア開発銀行(ADB)がミャンマーで大規模な灌漑設備の改修事業を計画している。地元紙の取材に対してADBミャンマー事務所長は、「事業は2017年第一四半期を目処に開始される」と話した。

対象地域は、マグウェ(Magwe)、マンダレー(Mandalay)、サガイン(Sagaing)の3地域。農地9万ヘクタールの灌漑事業で、2.8万世帯が直接的な恩恵を受けることとなる。

事業予算は、ADBが75百万ドル(約75億円)、フランス開発庁(AFB)が25百万ユーロ(約28億円)を協調融資する。また、これに加えてヨーロッパ連合(EU)が20百万ユーロ(約22億円)を無償資金協力で拠出する見込み。


参照元:ADB-backed mass irrigation project on track to begin work during Q1 next year