開発途上国の貧困と開発に関する議論において、持続可能な開発目標(SDGs)が採択された意味は極めて大きい。特に、貧困撲滅を2030年までに達成すことが最優先課題(SDG 1)として掲げられた意味は重い。スローガンである「誰も置き去りにしない(No-one left behind)」をスローガンに終わらせないための具体的な取り組みが求められている。
インフォーマル企業の個人事業主(EMPLOYERS IN INFORMAL ENTERPRISES)は、インフォーマル企業の自営業者。従業員を雇用している雇用主。開発途上国では、中小企業(Small and Medium Enterprises: SMEs)よりも更に小規模のマイクロ企業(Micro Enterprises)がインフォーマル経済の大部分を形成していることも多い。そのような極めて小規模の企業を経営する個人事業主は、自分自身ですら社会保障制度の適応対象とすることができていない状況にある。
インフォーマル企業の個人事業主(従業員なし)
インフォーマル企業の個人事業主(OWN ACCOUNT WORKERS IN INFORMAL ENTERPRISES)は、従業員を雇用していない個人事業主であり、自らが労働者となる自己採算労働者[xii]。経営者であり、同時に労働者でもあることが特徴。
無償の家族労働者・家業手伝い
無償の家族労働者・家業手伝い(CONTRIBUTING FAMILY WORKERS)は、家業に従事し、無償で労働力を提供する労働者。寄与的家族従業者とも呼ばれる[xiii]。開発途上国では、家族が家業手伝いとして業務に従事するケースが多い。労働者はあくまで家族であり、従業員とみなされず、実質的に無償で労働に従事することが常態化している。したがって、社会保障をはじめとする労働者の権利は付与されないことが多い。
インフォーマル生産者共同組合員
インフォーマル生産者共同組合員(MEMBERS OF INFORMAL PRODUCERS’ COOPERATIVES)は社会主義国において用いられる分類で、資本主義国では一般的ではない分類[xiv]。
インフォーマル企業の従業員(EMPLOYEES OF INFORMAL ENTERPRISES)は、法的な手続きを行わず、法人格を持たない企業(インフォーマル企業)に勤務する労働者。勤め先の企業が行政に認識されていないため、労働法や社会保障制度による保護の対象外となることが多い。
季節労働者・日雇労働者
季節労働者・日雇労働者(CASUAL OR DAY LABOURERS)は、雇用主の必要性に応じて稼働期間が変動する雇用形態の下で働く労働者。特定の雇用主の下で長期間労働に従事しない臨時雇用労働者である。雇用主や労働現場が頻繁に変わるため、開発途上国の低い行政能力では、雇用関係や社会保険料の納付履歴を把握しきれないことが課題となることが多い。また、労働現場が都市部から離れていることや、休暇制度が整備されていないことなどが原因で、都市部へ出向いて社会保障関連手続きを行うことが難しいケースも散見される。特に、土木・建設業に多い就労形態。
臨時労働者・パートタイム労働者
臨時労働者・パートタイム労働者(TEMPORARY OR PART-TIME WORKERS)は、一定期間に決められた時間・日数だけ業務に従事する労働者。社会保険制度が整備されている国の場合、業務日数が一定期間を超えると、企業側に社会保険料の共同負担義務が発生することが多い。したがって、企業側はフルタイム労働者ではなく、パートタイム労働者を複数雇用することで支払い義務を逃れることが常態化している。
未登録労働者(UNREGISTERED OR UNDECLARED WORKERS)は、労働に従事している実態があるものの届け出がされていないその他の労働者。行政機関が労働実態を把握できず、労働基準監督の実施や社会保障の適用もされない。
在宅就業者
在宅就業者(INDUSTRIAL OUTWORKERS OR HOMEWORKERS)は、工場や企業の仕事を現場以外(自宅等)で行う労働者[xv]。就労場所が特定できないことから、労働環境を把握しにくく、労働基準監督官の目も届きにくい。また、複数の雇用主の下で就労することも多く、同一雇用主の下で一定期間就労することを条件に社会保険料の共同負担義務を規定している場合は、在宅就業者が社会保障制度の適用外となることも多い。