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男は夢に生きる。そして、大切なものを見失う。すべて失った後に残った現実に、過去を思い出して涙する。記憶は感傷に浸る映画のひと場面のように美しく、夜が明けるとまた同じ日常が繰り返される。一歩も進んでいない自分を顧みて、時々不安になったり、昔の記憶に癒されたりする。ちょっと思い出しただけ。そう言い続けて男の人生は回っていく。言葉にしないとわからない。察して欲しい。そんなやり取りやすれ違いで、時間はあっという間に過ぎていく。
7月26日は佐伯照生の誕生日だ。2021年の7月26日から始まるこの物語は、1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男と女の“終わりから始まり”の6年間を描いている。怪我でダンサーの道を諦めた照生(てるお)と、タクシードライバーの葉(よう)。2人が過ごした1日は、特別の日だった時もあれば、そうでない時もあった。なんでもない、だけど二度と戻れない愛しい日々を“ちょっと思い出しただけ。
熊澤尚人
岡田准一, 麻生久美子, 谷村美月