携わっている仕事について書きます。

タグ アーカイブ: 業務日誌

アフリカ・アジア・中東の食糧・栄養分野でWFPへ97億円拠出、日本政府

日本政府は世界食糧計画(WFP)の人道支援活動へ85.2百万ドル(約97億円)を拠出し、アフリカ・アジア・中東の33ヶ国で食糧・栄養分野の支援を実施する。

緊急性が必要とされる人道支援と、中長期の開発援助の連携が重要とされる昨今、WFPはJICAなどの開発援助機関との継ぎ目のない支援の実施を約束している。

拠出金の内訳は以下の通り。

  • イエメン(1,300万ドル)
  • イラク(710万ドル)
  • ヨルダン(600万ドル)
  • ニジェール(510万ドル)
  • 南スーダン(410万ドル)
  • トルコ(400万ドル)
  • アフガニスタン(320万ドル)
  • モーリタニア(290万ドル)
  • ソマリア(290万ドル)
  • ウガンダ(290万ドル)
  • マラウイ(260万ドル)
  • 中央アフリカ共和国(220万ドル)
  • コンゴ民主共和国(220万ドル)
  • ギニア(220万ドル)
  • エチオピア(220万ドル)
  • ケニア(220万ドル)
  • レバノン(200万ドル)
  • ブルンジ(150万ドル)
  • カメルーン(150万ドル)
  • チャド(150万ドル)
  • シエラレオネ(150万ドル)
  • ジンバブエ(150万ドル)
  • ルワンダ(150万ドル)
  • レソト(120万ドル)
  • ジブチ(110万ドル)
  • ブルキナファソ(100万ドル)
  • スーダン(100万ドル)
  • シリア(100万ドル)
  • ナイジェリア(100万ドル)
  • スワジランド(100万ドル)
  • コンゴ共和国(90万ドル)
  • リビア(70万ドル)
  • エジプト(50万ドル)

参照:Japan’s US$85 Million Donation Helps Feed Millions Of Hungry People In 33 Countries

IMFがアフリカ諸国へ債務削減を要請、補助金削減と増税

国際通貨基金(IMF)がアフリカ諸国に対して財政赤字削減を要求している。これは特にアフリカの資源国に向けられた要請であり、資源価格の下落とともにマクロ経済状況が悪化していることが背景にある。歳入が減る状況を補助金の削減と増税で迎え撃つべしという、IMFらしい要求である。

アフリカでは過去10年の経済成長率は5%あったが、直近の経済見通しは0.5-1.4%。資源価格の高騰によってアフリカの高い経済成長率を牽引してきた国々が足を引っ張っている。アフリカ経済のトップランナーであったナイジェリアは20年ぶりに景気後退期(Recession)に入った。

IMFはどう見ているのか。アフリカ専門メディア「AfricaNews」がIMFアフリカ局長の談話を引用しているので紹介したい。

「ナイジェリアに関しては財政赤字削減は積みあがっておらず、効果的な政策パッケージを示すことができれば、財政支援を受けることは可能だ。一方、銅価格の下落が直撃を受けているザンビアに関しては、石油補助金を削減することで歳出を抑え、その代わりに社会保障プログラムを拡充することを勧める。」

アフリカ諸国には今、IMFが緊縮財政を要求するときの教科書通りの要求がなされている。


参照:IMF urges African states to cut deficits as growth grinds lower (AfricaNews)

AIIBと世界銀行がアゼルバイジャンのガスパイプラインへ巨額融資を決定

アジアインフラ投資銀行はアゼルバイジャンとヨーロッパを結ぶガスパイプライン(Trans-Anatolian gas pipeline: TANAP)の敷設へ、世界銀行と協調融資を実施する。

同案件は、AIIBが600百万ドル、世界銀行が800百万ドルを融資する大型案件で、パイプラインは全長1,850kmに及ぶ。

これによって、アゼルバイジャンで生産された天然ガスは、トルコ、ギリシャ、アルバニア、イタリアを通ってヨーロッパへ供給されることとなる。

AIIBに関しては日本やアメリカが賛同していない一方、ヨーロッパ諸国や開発途上国は歓迎ムードである。

特に、中央アジア諸国では中国やAIIBによるインフラ整備支援を期待する風潮も強い。


参照:AIIB and World Bank lend big to TANAP project (Global Trade Review)

AIIBと世界銀行がタルベラダム拡充へ協調融資、パキスタン

パキスタンのタルベラダム(Tarbela)の機能拡充へ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行が協調融資で合意した。AIIBが300百万ドル、世界銀行が390万ドルを融資する大型プロジェクト。

同案件では、タルベラ水力発電所へ3つの発電ユニットを追加することで発電量を増大させることが目的。

一部の日本のメディアは、AIIBが発足初年度に9件しか融資していないことを揶揄しているが、順調に協調融資を重ねているように見える。

JICA予算は1.4兆円、約80%が円借款へ

国際協力機構(JICA)の2017年度予算規模は、1.4兆円となるようだ。内訳は有償資金協力1.3兆円(80%)、技術協力0.15兆円(10%)、無償資金協力0.16兆円(10%)。

開発途上国への貸し付けである有償資金協力(円借款)が前年度比+20.9%となり、JICA予算の全体でも80%を占めた。

日本の財政が厳しいことから、ODAに占める無償供与分(技術協力・無償資金協力)が減り、円借款への移行が鮮明となった。

これは日本だけでなく全ての先進国ドナーに共通していることで、伝統的なドナー諸国が無償で資金供与できる余裕がなくなってきている。

こうした先進国の動きは、資金面で余裕のある中国などの新興ドナーや民間ファンド(ゲイツ財団等)の影響力の増大にもつながっている。


参照:平成29年度のJICA事業規模について

タンザニアの社会保障は障害者のニーズに合っていない?

タンザニアの社会保障制度は障害者(People with Disabilities: PwD)のニーズを満たしていないかもしれない。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の研究チームが発表した研究成果によれば、タンザニアの障害者は社会保障の高いニーズを示しているにもかかわらず、社会保障プログラムへの参加率は低い。

その要因としては、障害者に特化したターゲティング(受益者選定)がなされていないこと、ベネフィットパッケージ(現金・物資支給等)が障害者のニーズに合っていないことなどが、あげられている。

LSHTMの同研究チームは、開発途上国における社会保障と障害をテーマに研究を行っている影響力のあるチーム。

社会保障システムの構築と障害と開発が持続可能な開発計画(SDGs)の重要トピックの一つとなっている中、フレキシブルな社会保障システムの構築・運用が求められている。


参照:Kuper et al. 2016. Social protection for people with disabilities in Tanzania: a mixed methods study.

安定成長 - 事業報告(2016年10-12月期)

安定成長

2016年10-12月期の事業報告です。第二四半期から始めたコンテンツ『開発途上国に関するニュース』の影響もあり、前期はページ閲覧数(PV)が落ち込んだ一方、記事一本当たりのアクセスは上昇しました。今期は、記事一本当たりのアクセス数は安定し、PVは7.2万件まで回復しました。速報性の高いニュースコンテンツを投入すれば、安定したPVを得られる傾向にあります。

今期は引き続き、ニュースコンテンツとオピニオンコンテンツのバランスを保つことに注力しています。事業報告の詳細については、媒体資料 (2016年10-12月期)をご参照ください。

 

なぜカンボジアのコメ価格は暴落したのか?

相場暴落の原因

国際的なコメ価格の下落に対し、カンボジアでは何が起き、政府はどのような政策を実施したのだろうか。

カンボジアでも隣国と同様、コメ価格の暴落によって生産農家は大打撃を受けている。カンボジア特有の課題としては、精米業者(Miller)の資金力が乏しく、農家からコメを買い取ることができない事情がある。コメの生産性は高まっているが、中間業者である精米業者がコメを買い取ることができない。これでは価格下落に歯止めがかかるはずもない。

また、隣国からの輸入米の増加も国内相場の値崩れの要因と考えられる。特に、コメの輸出大国であるベトナムからの安価なコメの流入が大きな要因と考えられている。ミャンマーやタイとの市場競争も激化しており、これらの国から輸入される低価格米の供給量が国内市場で増加している。それによって、カンボジアの国際競争力が相対的に弱化する負の連鎖が起きているようだ。

カンボジアのコメの輸出に対する影響はどうだろうか。ここ数年のトレンドを見ると、カンボジア米の輸出高は2015年に急増した。2016年は例年とほぼ同程度に落ち込んだが、後半に盛り返している。

カンボジアは付加価値の高い「香り米」をブランド化し、コメの輸出を強化しようとしている。そのため、どの価格帯で相場が値崩れしているかを慎重に分析する必要があるが、現状ではこれ以上の統計データがないため詳細な分析が難しい。

いずれにせよ、隣国のコメ市場でも価格下落が続くようであれば、今後も見通しは厳しいと言えそうだ。

カンボジア政府の対抗策

こうした状況を受け、政府はどのような対抗策を実施したのだろうか。

2016年3月、カンボジアコメ協会(Cambodia Rice Federation: CRF)はカンボジア政府に対して、2つの陳情を提出していた。1つ目は、精米業者の資本(Capital)へのアクセスを確保すること。つまり、資金調達を容易にする政策をとること。2つ目は、違法なコメの輸入を取り締まること。精米業者が農家からコメを買い取りやすくすると同時に、外国からの供給量を減らすことが狙いだ。

これに対してカンボジア政府は、3月30日、国境でのコメの密輸取り締まり強化について合意した。一方、商務省高官は、「アセアン経済共同体(AEC)との関係で輸入割当量を定めることはできないが、輸入米に対する増税は可能」と発言している。

また、カンボジア政府は4月6日、農業製品に関する付加価値税(VAT)の免除を実施。農民が種を購入する際の負担を軽減するほか、精米業者がコメを買い取る際の負担を軽減し、稲作農業の国際的な競争力を高めることが狙いだ。第三四半期には、精米業者に対する低利ローンも実施したが、借りる業者が少なく、打開策とはなっていないのが現状だ。

現時点で言えることは、カンボジア政府だけでなく、各国政府が対応策を講じているにもかかわらず状況は改善していないということ。具体的なデータに基づく議論ができない現状ではこれ以上深掘りすることが難しいが、今後、精緻な調査と分析結果が公表されてくると思われる。

マクロ経済への影響だけでなく、コメの生産農家、とりわけ貧困農民に対する影響が懸念されるところだ。