携わっている仕事について書きます。

タグ アーカイブ: 業務日誌

ベトナム首都ハノイ市の貧困率を削減計画

ベトナムの首都ハノイが2.7万世帯を貧困から脱却させる。これは、2016年の貧困率の1.3%減に値する。

地元紙によれば、ベトナムでは貧困層の支援策が複数講じられており、ハノイの貧困層が恩恵を受けることが予想されているようだ。

ベトナム政府による農村部の生計向上プログラム(約10.8億円規模)では、38.7万人が健康保険の提供を受けている。

また、ハノイ市は6.5万世帯へ電気料金の補助金を、低所得者や少数民族に対してテレビや携帯電話を提供するプログラムも併用している。

ハノイ市には貧困層が6.5万世帯(全世帯の3.64%)、それ以外の低所得者層が3.4万世帯(同1.89%)いる。

ハノイ市はこうした政策を通じて、2020年までに貧困率を1.2%まで削減することを目指している。

外部リンク 

Hanoi tackles poverty

フィリピンの一時的貧困、10人に4人が貧困の罠から抜け出せず

フィリピンの10人に4人が、貧困の罠から脱却できていない。過去数年にわたる輝かしい経済成長の影で、外的なショック(病気や事故など)が起きればたちまち貧困に逆戻りしてしまう人々が、国民の半数に迫ろうとしている。

これはアジアマネジメント研究所(AIM)が発表した研究成果で、フィリピンが東南アジアでミャンマーに次いで高い貧困率に甘んじている影の部分を如実に示した結果だ。

研究成果を踏まえて同研究所は、経済成長が持続的かつ万人が恩恵を受けることができるものである必要があるとしている。

 


参照記事:4 in 10 Filipinos caught in vicious cycle of poverty

ミャンマーでコメ価格下落、カンボジアに続き

カンボジアでコメ価格の下落が深刻な水準にあると報じられたが、ミャンマーでも同様のトレンドがあるようだ。首都ネピドーの市場価格は過去一ヶ月で約30%の下落を記録している。

地元紙によれば、下落の原因は中国への輸出が停滞していることにあるという。中国当局は、ミャンマーからの違法なコメ輸入の取締りを強化しており、闇市場を通じてミャンマーから中国へ輸出されるコメの量が減少しているとの指摘。

 

最も読まれた記事 TOP 10(2016年9月)

1ヶ月で最も読まれた記事TOP10

9月に公開した記事の中で、最もアクセスの多かった記事を紹介します。まだ、読んでいない記事があれば、この機会に是非「一気読み」してください!

 

1位 紛争と人々

米国の俳優ジョージ・クルーニーが設立者の一人であるアドボカシープロジェクトであるSentryが紛争が続く南スーダンの紛争当事者であるサルバ・キール大統領と反政府勢力を率いていたリーク・マチャール前副大統領を始めとする政府高官が紛争によって私腹を肥やしているとの報告を発表した。

 

2位 善意が貧困を助長する?映画「ポバティー・インク」を、あなたはどう観て何を語るか

渋谷アップリンクをはじめとしたいくつかの映画館で、映画「ポバティー・インク ー あなたの寄付の不都合な真実」が公開された。これは貧困問題に対する寄付や善意の中にはビジネス化しているものがあるという事実を取り上げた、約90分のドキュメンタリー映画だ。

 

3位 JICAがナイジェリアの電力事業完工、太陽光発電システムを無償供与

地元紙によれば、太陽光発電(ソーラーパワー)システムの引渡しが国際協力機構(JICA)とナイジェリア政府の間で完了した。

 

4位 オランダ政府がケニアへの開発援助を停止、2020年から通商パートナーへ

オランダ政府がケニアへの開発援助を2020年で停止する。昨今の目覚しい経済成長を踏まえて、「通商関係(Trade Partner)」とすることが表明された。

 

5位 フィリピンにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジと保健所

フィリピンにおいて、保健所はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に寄与する基礎的な保健医療サービスを都市貧困層に対して提供できている、という仮説を設定し、現地調査を実施した。

 

6位 アフリカに子供の貧困が蔓延する日、2030年に世界は貧困を撲滅できるのか?

14年後の2030年、国際社会は絶対的貧困の撲滅を目指しているが、アフリカの子供が世界の4割の貧困を占める世界が訪れるのかもしれない。

 

7位 タイが高齢化する貧困層へ社会保障を拡充、ナショナルeペイメントも運用

タイ政府が低所得の高齢者向けに社会保障給付金と補助金を追加給付を実施する。給付対象となるのは、年収5万バーツ(約15万円)以下の60歳以上の高齢者。給付方法はタイ政府が導入を進める電子決済システム「ナショナルeペイメント(The National e-Payment)」を通じて行われる。

 

8位 スリランカ貧困層へも電気を、電化率100%へアジア開発銀行が支援

アジア開発銀行(ADB)がスリランカの電力セクターを後押しする。ADBは115億円を貸付け、スリランカの電化率100%へ向けた最後の一押しを支援することとなる。

 

9位 マダガスカルのトアマシナ港拡張計画へ円借款452億円供与へ

TICAD VIでナイロビを訪問していた安倍首相とマダガスカルのラジャオナリマンピアニナ大統領が首脳会談を実施。

 

10位 2016年国連総会で生まれた世界のリーダー10人の名言

先週から開催されている国連総会。ニューヨークでは毎年恒例の風物詩となっています。国連総会は、世界が抱える問題や地域情勢を国際社会に訴える場として、世界のリーダーが一般討論演説を行うことは良く知られています。

途上国の国際緊急援助物資供与はこう変わる?一問一答

先日の記事で、災害時の緊急援助物資供与についてAmazonとJICAが連携すると面白いのでは、と書いたところ各方面からポジティブ・ネガティブ両方の反響がありました。ネガティブなコメントについては、言葉足らずの部分があって誤解されているものもありましたので、この機会に少し補足したいと思います。

ここでは、まず前回の記事で伝え切れなかった部分を補足し、誤解を解消したいと思います。その上で、緊急援助の今後のビジョンについて考えてみたいと思います。

 

Amazonに委託することで日本が自社倉庫で物資管理することのメリットがなくなるのでは?

まず、「日本が自社倉庫を世界中に保有している」というのは誤解です。日本の緊急援助を担っているのはJICAですが、私が知る限り、JICAは緊急援助物資の備蓄倉庫は保有していません。こちらの入札公示を見ると、緊急援助物資の備蓄と緊急輸送業務を外部委託しています。

また、外務省が公表している「緊急事態における人道支援の評価(第三者評価)」でフィリピンのケースが紹介されていますが、備蓄倉庫から現地への輸送を運送会社が行ったと記載されています。

つまり、委託業者が備蓄倉庫の管理をし、緊急援助物資の現地までの輸送も行っているのが現状といえます。

 

Amazonがこの競争に参加することで何が変わるか?

日本国内の輸送業者だと、日本通運やヤマト運輸が思いつくでしょう。国外に目を向けると、FEDEX、DHL、UPSといった全世界で国際輸送業務を行っている大手企業があります。これらの輸送業者は自社倉庫・貨物便を多数保有しており、緊急援助物資供与の世界でも競争力があるのではないかと思います。ただ、実際にどの程度受注しているのかは公表されていないのでわかりません。

これが世界の物流業界の構図だとすれば、Amazonが加わることで何が変わるのでしょうか。Amazonの強みは、物資のサプライヤーでもあることです。上記の輸送業者は、物資を備蓄し、現地まで輸送することはできますが、物資を調達することはできません。

JICAの上記の入札公示を見てもわかるとおり、備蓄・輸送に関してのみの委託となっています。つまり、物資調達は別途サプライヤーと契約しなければならないのが現状かと思います。

Amazonがこの競争に参加することで新たな可能性が生まれるのは、物資調達から現地輸送までを一社で完結できるという点でしょう。事務的に業務実施契約が一本で済むだけでなく、検品業務、通関業務、業者間の引継ぎなどのプロセスが簡素化されるので、迅速性の求められるオペレーションに多くのメリットがあると思われます。

 

人道的な緊急援助へ市場競争原理を入れるのは良くないのではないか?

このようなコメントも頂きました。頂いたコメントの意図を汲み取ると、「市場競争が進むと大企業のみが生き残り、人道支援というニッチな分野が魅力的でなくなったときにその大企業も撤退してしまうリスクがある」という指摘でした。たしかに一理ありますが、それでも「すべて国営で実施すべし」と言うのは、税財源が厳しい実情を踏まえれば非現実的だと思います。

緊急援助物資の供与額は、一回当たり数百万円から数千万円程度です。備蓄倉庫管理・輸送業務専用の公務員を雇用し、政府専用機を世界各地に配置し、緊急援助を行うことは割に合わないと思います。限られた予算の中で運用するには、ある程度は専門の業者へ外部委託することが望ましいでしょう。

こうした効率性も踏まえて、上記のとおり備蓄・輸送業務は外部委託し、業者は一般競争入札を経て選定されているのだと思います。

 

Amazon参入へ課題は無いのか?

直感的にですが、そもそもAmazonが緊急援助への参入を考えているとは思えません。ただ、「参入すれば緊急援助の物流にとって良い影響があるだろう」という思いで、先日の記事を書きました。

検討すべき課題は2つあると思います。

まず、日本の緊急援助に関して言えば、最大の課題は言語の問題だと思います。これはAmazonだけでなくFEDEXなどもそうですが、国際輸送業務(ましてや緊急援助)で日本の官公庁と仕事をした経験があまり無いと思います。業務フローの見直しや、英語での業務遂行が可能な環境・体制をまずは日本側で用意する必要がありそうです。

次に、日本の緊急援助物資はあらかじめ決められた物資リスト(スペック)に基づいて調達する必要があります。そして、物資には日本のODAマークを張る必要があります。こうした業務は、Amazonにとって煩雑かつ本業以外の追加業務となるため、Amazonにとってあまり利益の見込めない煩雑な案件なのではないかという気がしています。

アメリカやイギリスがどのような業者と契約し、このあたりの煩雑な業務をどう整理しているのかが気になります。

 

もう一歩進んだアイデアとして、個人対個人の緊急支援

東日本大震災の際、Amazon Japanの「欲しい物リスト」へ被災者が必要物資を掲載し、全国からオンラインで支援が集まった事例がありました。国際緊急援助の舞台でも同様の仕組みが展開されれば、大きな一歩になると思います。

ただ、ここで言う「大きな一歩」というのは、国際緊急援助業務をAmazonが「代替」するということではありません。むしろ、東日本大震災の「欲しい物リスト」のように、個人対個人の支援の可能性が開かれることに意味があるのだと思います。

盛り上がる妄想に水を差すとすれば、この試みにはいくつもの課題も認められます。

まず、Amazonが自社便で現地まで空輸したとしても現地の交通状況が麻痺していれば、現地輸送ができないため物資は空港で止まってしまいます。政府間の緊急援助の場合、現地政府との調整で国内輸送をどうするかが決められます。個人による支援を誰が取りまとめ、現地輸送を確保するのか。整理する必要がありそうです。

また、もう一つの課題は、「メジャーな国や目立つ災害」にしか世界の関心は向かないということです。日本が緊急援助を展開している案件でさえ、多くの国民が知らないものが多数あると思います。個人対個人の支援が、現行の公的機関による緊急支援を代替できない理由の一つです。

 

さて、いかがでしたでしょうか。新しい流れができるとき、課題は山のようにあります。Amazonが緊急援助へ参入することは現実的ではないと思いながらも、こうしたシミュレーションを通じて新しいアイデアが生まれるのかもしれません。

開発援助に占める民間部門の役割が拡大する中、緊急援助のあり方も新しい流れができる日も遠くない気がしています。

一進一退 - 事業報告(2016年7-9月期)

一進一退

2016年7-9月期の事業報告です。一進一退。前期に新しい試みを始めた成果が数字になって表れてきています。ページ閲覧数(PV)は5.9万件で前期比-25%となっております。一方、記事一本あたりのアクセス数は、604件から889件へ回復し、前期比+47%となっております。これは、前期から新たに追加した『開発途上国に関するニュース』というコンテンツの影響です。

これは、開発途上国の地元紙に掲載された注目度の高い記事を日本語に要約して発信するコンテンツで、速報性の高い記事となります。それ故、大量生産、大量消費の記事です。SNSを通じてタイトルだけ見てサイトを訪問しない読者の方も多いコンテンツです。ニュースコンテンツを集中的に追加投入したことによって、前期は129本の記事を公開し、PVは7.8万件まで急増しました。一方、記事数が増えればPVが増える一方、記事一本当たりのアクセス数は減少するという影響が出ています。

今期は、ニュースコンテンツと従来型のオピニオンコンテンツのバランスを保つことに注力しています。事業報告の詳細については、媒体資料 (2016年7-9月期)をご参照ください。

 

提携パートナーの拡大

多方面からお声がけいただけるようになり、提携パートナーが増えています。現在、記事を配信しているのは以下のサイトやアプリです。配信先からの流入は然程見込むことができないため、PVへの影響は軽微です。一方、The Povertistに掲載された記事が他のサービス・メディア媒体に掲載される可能性が広がりつつあることから、開発途上国で活躍する専門家の方がThe Povertistで執筆した記事がより多くの人々の目に触れることになる大きなメリットがあります。配信先・パートナーからのアプローチは、引き続き前向きに検討していきたいと考えています。

 

今後の方針

ニュース記事とオピニオン記事をバランスよく配信していく方針です。ニュースコンテンツについては、貧困、社会保障、開発援助機関の動向といったキーワードのみのカバレッジとなっています。将来的には、ニュース記事をピックアップし、解説を付して発信する専門家・ライターの方が増えれば面白いと思っています(NewsPicksに近いイメージかもしれません)。

開発途上国のニュース記事は、日本であまり報じられないコンテンツです。必然的に、多くの記事がグーグルなどの検索システムの上位に定着しています。ニュース記事を通じた検索からの流入と、より内容の濃いオピニオン記事をバランスよく配信していければと考えています。

 

モルディブで港湾整備・拡張、アジア開発銀行が無償資金協力

アジア開発銀行(ADB)が、モルディブのクルドゥフシ(Kulhudhuffushi)で港湾整備・拡張を支援する。事業規模は約9.6億円(9.6百万ドル)で2019年12月の完工を目指す。

港湾整備案件としては小規模だが、8,000人の島民とその周辺の島に暮らす30,000人の住民にとっては大きな転機となる。

ADBのプレスリリースによれば、港湾のキャパシティは150隻/日から250隻/日へ改善するほか、事業実施による雇用創出効果も見込まれている。

接続性(Connectivity)の改善を通じて、経済成長だけでなく、雇用拡大や教育・保健サービスへのアクセス向上も期待されるところだ。

ミャンマーで大規模灌漑事業、アジア開発銀行が農業セクター支援

アジア開発銀行(ADB)がミャンマーで大規模な灌漑設備の改修事業を計画している。地元紙の取材に対してADBミャンマー事務所長は、「事業は2017年第一四半期を目処に開始される」と話した。

対象地域は、マグウェ(Magwe)、マンダレー(Mandalay)、サガイン(Sagaing)の3地域。農地9万ヘクタールの灌漑事業で、2.8万世帯が直接的な恩恵を受けることとなる。

事業予算は、ADBが75百万ドル(約75億円)、フランス開発庁(AFB)が25百万ユーロ(約28億円)を協調融資する。また、これに加えてヨーロッパ連合(EU)が20百万ユーロ(約22億円)を無償資金協力で拠出する見込み。


参照元:ADB-backed mass irrigation project on track to begin work during Q1 next year

タンザニア、社会保障をインフォーマル・セクターへ拡大、貧困撲滅へ政府が約束

タンザニア政府が社会保障カバレッジ拡大へ本気モードだ。サイモン・ムワンジャリ首相府シニアエコノミストが、インフォーマル・セクターへ社会保障カバレッジを拡大させることの重要性を語った。

「タンザニア政府は社会一丸となって社会保障の拡充へ向けた努力を続けていく」

国際社会は持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、貧困撲滅だけでなく、日常に潜むダウンサイドリスク(病気・失業・災害など)への対応に重きを置き始めている。

個人や世帯レベルでのリスク対策に関しては、貧困削減に直接寄与することから、多くの開発途上国が社会保障制度整備の重要性を認識しつつある。

開発途上国の社会保障制度は、フォーマル経済に属する企業勤めの正規労働者を対象にしていることが多く、インフォーマル・セクターへのカバレッジ拡大が至上命題となっている。

こうした状況を踏まえ、タンザニア政府高官が明示的に「インフォーマル・セクターの取り込み」を挙げたことの意義は大きい。

今後、タンザニア政府がいかにカバレッジを拡大していくか、目が話せない。

マーシャル諸島の貧困が悪化、小島嶼開発途上国は取り残されるのか?

SDGsは小島嶼開発途上国を取り残すのか?

持続可能な開発計画(SDGs)が採択され、国際社会の関心が環境の持続性と貧困削減に向いている。持続性と貧困削減。このキーワードで思い浮かぶ地域はどこだろうか。

アフリカ、アジア。多くの方がそうであるように、開発途上国の実務に携わっている私たちにとってもアフリカやアジアに主眼が置かれることは自然である。

しかし、本当に危機的な状況にあるのは、太平洋の小さな島国かもしれない。

マーシャル諸島の貧困が悪化?

アジア開発銀行(ADB)の報告によると、マーシャル諸島の貧困率は37%。2011年の国勢調査をベースに算出されている数値だ。

「数値をアップデートすべきだ。貧困層の生活環境は全く改善していない。」

そう語るのは、マーシャル諸島の首都マジュロ支局のジョンソン特派員(ラジオニュージーランド)。彼が現地で感じた「感覚」によれば、過去5年間で目立った開発は行われておらず、雇用の創出状況にも変化が見られないそうだ。

経済成長著しいASEANやアフリカ諸国は、「最後のフロンティア」と呼ばれ、ビジネスや投資が集まりやすい環境ができている。一方、資源が乏しく、市場規模も小さい太平洋の島国には羨望の眼差しは集まっていない。

SDGsの最大の目標は、「誰も取り残さない」こと。取り残された小島嶼開発途上国から目を背けていては、目標は達成されない。