携わっている仕事について書きます。

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スリランカで戦略的都市開発プロジェクト、世界銀行

世界銀行がスリランカの戦略的都市開発プロジェクトを支援する。融資総額は202百万ドルで、案件計画額は257.08百万ドル。差額はスリランカ政府の自己資金で賄う。

世界銀行のほか、フランス開発庁(AFD)とアジア開発銀行(ADB)も同プロジェクトへ協力する見込み。

プロジェクト対象地はKandy、Galle、Jaffnaの三都市で、都市サービスの総合的な拡充を目指す。具体的には、交通マネジメント、水の供給、接続性向上、排水システム、観光計画、公共スペースへのアクセス向上などが含まれる。

世界銀行が一連の計画から実施までをマネジメントし、同プロジェクトをリードしていく。

外部リンク
World Bank funds Sri Lanka Strategic Cities Development project
World Bank support of US$ 202 mn to improve livability and infrastructure in three major cities of Sri Lanka

アルゼンチンが貧困率を発表、880万人が貧困線以下の暮らし

アルゼンチン政府が貧困率を3年ぶりに公表した。足元の貧困率は32.2%。国民の3人に1人、880万人が貧困層ということになる。

現地紙は2013年時点で貧困率は4.7%だったとし、急上昇した印象を与えている。ただ、基準とした貧困線が同じものかどうかは、言及されておらず確認が必要。

なお、基準となった貧困線は、必要最低限の食糧と生活必需品の価格を加味したものと報じられている。

国連の日本人職員を増やすには、JICAからの出向を増やせばよい?

前回の記事「国連に日本人職員が必要な2つの理由 」で、日本人職員が国連に少ない問題について書きました。

では、どうやって人数を増やせばよいのでしょうか。 さらに読む

ベトナムの最低賃金と税制改革、巨大なインフォーマル経済の影

外資誘致に配慮し、最低賃金は小幅な上昇

ベトナム政府は2017年の最低賃金を7.3%引き上げることを発表した。これによって最低賃金は月375万ドン(約1.65万円)となる。労働者側の11%と企業側の5%の賃上げ要望に対し、妥協点がその中間に落ち着いた形だ。

日経新聞によれば、「安い労働力を期待する外資の進出を妨げない程度の上昇率にする」といった判断があったようだ。ベトナムと同様に縫製産業の誘致を進めるカンボジアやバングラデシュに比べ、ベトナム(ハノイ)の一般工員の月給は1.7倍。競争力を失わない程度の賃金上昇に抑えるインセンティブが働くのも当然だろう。

 

中小企業に対する減税でガス抜き?

最低賃金の上昇とほぼ同時に報道されたのが、中小企業(SMEs)に対する減税措置だ。年商200億ドン(USD896,000)に満たない中小企業には、従来より3%低い17%の税率が適用されることとなる(2017年から2020年までの暫定措置)。

この減税措置に関しては、有識者から疑問の声が上がっている。「3%の減税は中途半端で効果が期待できない。10%にすべき。減税は企業規模のみ考慮すべきではない。スタートアップ、科学技術分野など、成長産業への投資を促す政策であるべき。」

また、同記事中の有識者も指摘するように、外資を誘致することは地元中小企業の育成を阻害する要因にもなりうる懸念もある。

中小企業からの批判を避ける目的で、最低賃金の上昇と減税措置がほぼ同時に報道されたわけではないだろうが、低賃金によるメリットと地場産業の育成のバランスをいかに維持するか。ベトナム政府が難しい舵取りに苦労している姿が見え隠れする。

 

巨大なインフォーマル経済への対処

国際労働機関(ILO)の報告によれば、ベトナムの労働者の約8割が非正規雇用者である。もちろん、上記のような最低賃金や課税措置はインフォーマル経済で暮らす雇用者や中小企業には適用されない。政府が捕捉しきれずに非正規に留まっている個人・法人もいれば、課税や煩雑な事務手続きから逃れるために非正規を選択している場合もある。いずれにせよ、この巨大なインフォーマル経済をいかに正規化するかが、国の発展段階で不可欠なプロセスとなる。

経済成長が持続し、最低賃金が継続的に上昇している現状は歓迎されるべきことだろう。そして、経済成長が雇用を創出し、多くの若い労働者へ活躍の場を与えている現状もすばらしい。ただ、中長期的にこのような好循環を継続していくためには、インフォーマル経済で生計を立てる非正規雇用者をいかに「正規化」することができるかが重要な要素となる。

ナイジェリアでスマートフォンとアプリを使った汚職防止策が効果

ナイジェリアの運送業者はチェックポイントでたびたび止められることに悩んでいる。こうしたチェックポイントの多くは、違法に設置され、ドライバーから違法に現金を徴収する。ドイツの援助機関GIZの2012年の調査によれば、運送業者の約60%が、一度の輸送で3~5回の違法なチェックポイントを通過している。違法に徴収される料金は一日の稼ぎを超えることもあるが、断ると暴力の脅威にさらされるという。

こうした状況に対応すべく開発されたのが、スマートフォンアプリ『Trade Route Incident Mapping System(TRIMS)』。アプリを通じて、運送業者は匿名でこうした違法行為を報告することができる。送信された情報は、TRIMSのシステムで一元管理され、誰もが地図上で確認することができるようになる。

2014年に始まったこのプロジェクト。既に2,000件以上の事案が報告されている。アプリを通じて情報が拡散されるため、汚職防止へ向けた注意喚起が期待できるという。

情報通信技術(ICT)を活用した汚職防止策にますます注目が集まりそうだ。

ベトナム首都ハノイ市の貧困率を削減計画

ベトナムの首都ハノイが2.7万世帯を貧困から脱却させる。これは、2016年の貧困率の1.3%減に値する。

地元紙によれば、ベトナムでは貧困層の支援策が複数講じられており、ハノイの貧困層が恩恵を受けることが予想されているようだ。

ベトナム政府による農村部の生計向上プログラム(約10.8億円規模)では、38.7万人が健康保険の提供を受けている。

また、ハノイ市は6.5万世帯へ電気料金の補助金を、低所得者や少数民族に対してテレビや携帯電話を提供するプログラムも併用している。

ハノイ市には貧困層が6.5万世帯(全世帯の3.64%)、それ以外の低所得者層が3.4万世帯(同1.89%)いる。

ハノイ市はこうした政策を通じて、2020年までに貧困率を1.2%まで削減することを目指している。

外部リンク 

Hanoi tackles poverty

フィリピンの一時的貧困、10人に4人が貧困の罠から抜け出せず

フィリピンの10人に4人が、貧困の罠から脱却できていない。過去数年にわたる輝かしい経済成長の影で、外的なショック(病気や事故など)が起きればたちまち貧困に逆戻りしてしまう人々が、国民の半数に迫ろうとしている。

これはアジアマネジメント研究所(AIM)が発表した研究成果で、フィリピンが東南アジアでミャンマーに次いで高い貧困率に甘んじている影の部分を如実に示した結果だ。

研究成果を踏まえて同研究所は、経済成長が持続的かつ万人が恩恵を受けることができるものである必要があるとしている。

 


参照記事:4 in 10 Filipinos caught in vicious cycle of poverty

ミャンマーでコメ価格下落、カンボジアに続き

カンボジアでコメ価格の下落が深刻な水準にあると報じられたが、ミャンマーでも同様のトレンドがあるようだ。首都ネピドーの市場価格は過去一ヶ月で約30%の下落を記録している。

地元紙によれば、下落の原因は中国への輸出が停滞していることにあるという。中国当局は、ミャンマーからの違法なコメ輸入の取締りを強化しており、闇市場を通じてミャンマーから中国へ輸出されるコメの量が減少しているとの指摘。

 

最も読まれた記事 TOP 10(2016年9月)

1ヶ月で最も読まれた記事TOP10

9月に公開した記事の中で、最もアクセスの多かった記事を紹介します。まだ、読んでいない記事があれば、この機会に是非「一気読み」してください!

 

1位 紛争と人々

米国の俳優ジョージ・クルーニーが設立者の一人であるアドボカシープロジェクトであるSentryが紛争が続く南スーダンの紛争当事者であるサルバ・キール大統領と反政府勢力を率いていたリーク・マチャール前副大統領を始めとする政府高官が紛争によって私腹を肥やしているとの報告を発表した。

 

2位 善意が貧困を助長する?映画「ポバティー・インク」を、あなたはどう観て何を語るか

渋谷アップリンクをはじめとしたいくつかの映画館で、映画「ポバティー・インク ー あなたの寄付の不都合な真実」が公開された。これは貧困問題に対する寄付や善意の中にはビジネス化しているものがあるという事実を取り上げた、約90分のドキュメンタリー映画だ。

 

3位 JICAがナイジェリアの電力事業完工、太陽光発電システムを無償供与

地元紙によれば、太陽光発電(ソーラーパワー)システムの引渡しが国際協力機構(JICA)とナイジェリア政府の間で完了した。

 

4位 オランダ政府がケニアへの開発援助を停止、2020年から通商パートナーへ

オランダ政府がケニアへの開発援助を2020年で停止する。昨今の目覚しい経済成長を踏まえて、「通商関係(Trade Partner)」とすることが表明された。

 

5位 フィリピンにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジと保健所

フィリピンにおいて、保健所はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に寄与する基礎的な保健医療サービスを都市貧困層に対して提供できている、という仮説を設定し、現地調査を実施した。

 

6位 アフリカに子供の貧困が蔓延する日、2030年に世界は貧困を撲滅できるのか?

14年後の2030年、国際社会は絶対的貧困の撲滅を目指しているが、アフリカの子供が世界の4割の貧困を占める世界が訪れるのかもしれない。

 

7位 タイが高齢化する貧困層へ社会保障を拡充、ナショナルeペイメントも運用

タイ政府が低所得の高齢者向けに社会保障給付金と補助金を追加給付を実施する。給付対象となるのは、年収5万バーツ(約15万円)以下の60歳以上の高齢者。給付方法はタイ政府が導入を進める電子決済システム「ナショナルeペイメント(The National e-Payment)」を通じて行われる。

 

8位 スリランカ貧困層へも電気を、電化率100%へアジア開発銀行が支援

アジア開発銀行(ADB)がスリランカの電力セクターを後押しする。ADBは115億円を貸付け、スリランカの電化率100%へ向けた最後の一押しを支援することとなる。

 

9位 マダガスカルのトアマシナ港拡張計画へ円借款452億円供与へ

TICAD VIでナイロビを訪問していた安倍首相とマダガスカルのラジャオナリマンピアニナ大統領が首脳会談を実施。

 

10位 2016年国連総会で生まれた世界のリーダー10人の名言

先週から開催されている国連総会。ニューヨークでは毎年恒例の風物詩となっています。国連総会は、世界が抱える問題や地域情勢を国際社会に訴える場として、世界のリーダーが一般討論演説を行うことは良く知られています。

途上国の国際緊急援助物資供与はこう変わる?一問一答

先日の記事で、災害時の緊急援助物資供与についてAmazonとJICAが連携すると面白いのでは、と書いたところ各方面からポジティブ・ネガティブ両方の反響がありました。ネガティブなコメントについては、言葉足らずの部分があって誤解されているものもありましたので、この機会に少し補足したいと思います。

ここでは、まず前回の記事で伝え切れなかった部分を補足し、誤解を解消したいと思います。その上で、緊急援助の今後のビジョンについて考えてみたいと思います。

 

Amazonに委託することで日本が自社倉庫で物資管理することのメリットがなくなるのでは?

まず、「日本が自社倉庫を世界中に保有している」というのは誤解です。日本の緊急援助を担っているのはJICAですが、私が知る限り、JICAは緊急援助物資の備蓄倉庫は保有していません。こちらの入札公示を見ると、緊急援助物資の備蓄と緊急輸送業務を外部委託しています。

また、外務省が公表している「緊急事態における人道支援の評価(第三者評価)」でフィリピンのケースが紹介されていますが、備蓄倉庫から現地への輸送を運送会社が行ったと記載されています。

つまり、委託業者が備蓄倉庫の管理をし、緊急援助物資の現地までの輸送も行っているのが現状といえます。

 

Amazonがこの競争に参加することで何が変わるか?

日本国内の輸送業者だと、日本通運やヤマト運輸が思いつくでしょう。国外に目を向けると、FEDEX、DHL、UPSといった全世界で国際輸送業務を行っている大手企業があります。これらの輸送業者は自社倉庫・貨物便を多数保有しており、緊急援助物資供与の世界でも競争力があるのではないかと思います。ただ、実際にどの程度受注しているのかは公表されていないのでわかりません。

これが世界の物流業界の構図だとすれば、Amazonが加わることで何が変わるのでしょうか。Amazonの強みは、物資のサプライヤーでもあることです。上記の輸送業者は、物資を備蓄し、現地まで輸送することはできますが、物資を調達することはできません。

JICAの上記の入札公示を見てもわかるとおり、備蓄・輸送に関してのみの委託となっています。つまり、物資調達は別途サプライヤーと契約しなければならないのが現状かと思います。

Amazonがこの競争に参加することで新たな可能性が生まれるのは、物資調達から現地輸送までを一社で完結できるという点でしょう。事務的に業務実施契約が一本で済むだけでなく、検品業務、通関業務、業者間の引継ぎなどのプロセスが簡素化されるので、迅速性の求められるオペレーションに多くのメリットがあると思われます。

 

人道的な緊急援助へ市場競争原理を入れるのは良くないのではないか?

このようなコメントも頂きました。頂いたコメントの意図を汲み取ると、「市場競争が進むと大企業のみが生き残り、人道支援というニッチな分野が魅力的でなくなったときにその大企業も撤退してしまうリスクがある」という指摘でした。たしかに一理ありますが、それでも「すべて国営で実施すべし」と言うのは、税財源が厳しい実情を踏まえれば非現実的だと思います。

緊急援助物資の供与額は、一回当たり数百万円から数千万円程度です。備蓄倉庫管理・輸送業務専用の公務員を雇用し、政府専用機を世界各地に配置し、緊急援助を行うことは割に合わないと思います。限られた予算の中で運用するには、ある程度は専門の業者へ外部委託することが望ましいでしょう。

こうした効率性も踏まえて、上記のとおり備蓄・輸送業務は外部委託し、業者は一般競争入札を経て選定されているのだと思います。

 

Amazon参入へ課題は無いのか?

直感的にですが、そもそもAmazonが緊急援助への参入を考えているとは思えません。ただ、「参入すれば緊急援助の物流にとって良い影響があるだろう」という思いで、先日の記事を書きました。

検討すべき課題は2つあると思います。

まず、日本の緊急援助に関して言えば、最大の課題は言語の問題だと思います。これはAmazonだけでなくFEDEXなどもそうですが、国際輸送業務(ましてや緊急援助)で日本の官公庁と仕事をした経験があまり無いと思います。業務フローの見直しや、英語での業務遂行が可能な環境・体制をまずは日本側で用意する必要がありそうです。

次に、日本の緊急援助物資はあらかじめ決められた物資リスト(スペック)に基づいて調達する必要があります。そして、物資には日本のODAマークを張る必要があります。こうした業務は、Amazonにとって煩雑かつ本業以外の追加業務となるため、Amazonにとってあまり利益の見込めない煩雑な案件なのではないかという気がしています。

アメリカやイギリスがどのような業者と契約し、このあたりの煩雑な業務をどう整理しているのかが気になります。

 

もう一歩進んだアイデアとして、個人対個人の緊急支援

東日本大震災の際、Amazon Japanの「欲しい物リスト」へ被災者が必要物資を掲載し、全国からオンラインで支援が集まった事例がありました。国際緊急援助の舞台でも同様の仕組みが展開されれば、大きな一歩になると思います。

ただ、ここで言う「大きな一歩」というのは、国際緊急援助業務をAmazonが「代替」するということではありません。むしろ、東日本大震災の「欲しい物リスト」のように、個人対個人の支援の可能性が開かれることに意味があるのだと思います。

盛り上がる妄想に水を差すとすれば、この試みにはいくつもの課題も認められます。

まず、Amazonが自社便で現地まで空輸したとしても現地の交通状況が麻痺していれば、現地輸送ができないため物資は空港で止まってしまいます。政府間の緊急援助の場合、現地政府との調整で国内輸送をどうするかが決められます。個人による支援を誰が取りまとめ、現地輸送を確保するのか。整理する必要がありそうです。

また、もう一つの課題は、「メジャーな国や目立つ災害」にしか世界の関心は向かないということです。日本が緊急援助を展開している案件でさえ、多くの国民が知らないものが多数あると思います。個人対個人の支援が、現行の公的機関による緊急支援を代替できない理由の一つです。

 

さて、いかがでしたでしょうか。新しい流れができるとき、課題は山のようにあります。Amazonが緊急援助へ参入することは現実的ではないと思いながらも、こうしたシミュレーションを通じて新しいアイデアが生まれるのかもしれません。

開発援助に占める民間部門の役割が拡大する中、緊急援助のあり方も新しい流れができる日も遠くない気がしています。