携わっている仕事について書きます。

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ミャンマーの貧困分析をエクセルでやってみた

ミャンマーの経済・社会・貧困状況をエクセルで簡単に分析してみた

今回は、経済成長著しいミャンマーの貧困分析。開発援助に携わる実務家にとっては、一度はやったことがある作業かもしれない。最近では、JICA職員にも担当国の経済・社会・貧困状況を分析し、エビデンスに基づいた援助戦略の検討と立案が求められている。

軍事政権が情報統制を行っていた影響から、ミャンマーについてはあまり多くのデータやレポートが公開されていない。今回は限られた公開データの中で可能な範囲で分析を行うことを目標とする。

なお、貧困分析で用いられる基本的な知識については、「貧困の定義と計測方法」で簡単にまとめているので参照いただきたい。

貧困分析に用いるデータ

今回使うのは世界銀行のホームページからダウンロードすることができるデータベースとUNDPが実施した調査報告書。1つ目は、開発途上国の実務に携わる人にはおなじみのWDIだ。マクロ経済指標を中心にデータがまとめられていて使いやすい。これらのデータをエクセルにまとめ、視覚的にもわかりやすくしたうえで分析してみたい。2つ目は、通常であればPovcalNetを使いたい。ここでは、世帯調査で得られたデータ(平均)をダウンロードできる。タイトルから明らかなように、貧困(貧困率・貧困ギャップ、二乗貧困ギャップなど)、消費、不平等に関するデータが含まれている。世界銀行が毎年公表する貧困指標の元データだ。しかし、残念なことに、ミャンマーに関しては、世界銀行が世帯調査を実施しておらず、PovcalNetだけでなく、WDIからも貧困指標を得ることができない。そこで唯一利用可能なデータが、UNDPが実施した世帯調査「Integrated Household Living Conditions Survey in Myanmar (2009-10)」だ。そして、この調査結果を用い、貧困プロファイルが公開されている。PovcalNetが使えないため、今回は貧困プロファイルで得られる情報を元に分析してみたい。

マクロ経済は好調

マクロ経済指標は、WDIから取得することが多い。しかし、WDIには2005年から2010年のデータが無い。そのため、グラフにすると「抜け」が生じるが、その後の推移を見れば大きな傾向はつかめると思う。

1990年台には、高いインフレ率と低成長にあったミャンマーだが、ここ数年間の経済成長は目を見張るものがある。グラフを読み解く際に一点だけ留意いただきたいのが、現地通貨建てであること。WDIにはドル建ての経済指標が無く(為替データの取得が困難なためと思われる)、現地通貨(MMK)建てのグラフとなっている。

また、世界銀行の別の報告書では国際通貨基金(IMF)による推計値を参照し、同様の経済成長トレンドを示している。民政移管後の実質GDP成長率は7-8%と高い水準を維持している。

 

 

貧困指標は改善傾向

貧困率、貧困ギャップ、二乗貧困ギャップは改善

統計データの制約から、ミャンマーの貧困指標は2005年と2010年の2時点でしかデータを得ることができない。この期間のみを見れば、大幅な改善傾向にあるといえる。2005年から2010年にかけて、貧困率(P0)は32.1%から25.6%まで改善した。ここで使われている貧困ラインはMMK162,136とMMK376,151で、現地通貨建てで物価調整されている。

貧困ギャップ(P1)、二乗貧困ギャップ(P2)についても、同様に改善傾向にある。貧困率だけでなく、貧困ギャップも改善していることから、貧困層全体の経済水準の底上げが達成されたと捉えてよい。また、貧困二乗ギャップも改善していることから、貧困層間の経済的格差も縮小傾向にある。貧困指標すべてで改善傾向が表れていることから、ミャンマーの貧困世帯の経済状況は改善傾向にあると考えてよいだろう。貧困ラインより更に低く設定されている食糧貧困ラインを基準にしても、改善傾向を見ることができる。

 

農村の貧困と都市の貧困、農村部に貧困層は集中

次に、地域別に貧困指標を見る。総じて、地域別の貧困指標も改善傾向に変わりはない。多くの開発途上国と同様に、ミャンマーでも農村部に貧困層が集中し、都市部の貧困率が低いことがわかる。2010年の貧困率は全国で25.6%。地域別にみると、農村部で29.2%、都市部で15.7%となっている。トレンドは下降傾向にあるが、都市と農村の経済格差が大きいことがポイントだ。

不平等は僅かに改善

不平等を表すジニ係数やローレンツ曲線を使った分析ができないために確定的な判断は難しい。ただ、下位20%の消費支出のシェアが微増していることから、若干ではあるが、貧困層の経済水準が相対的にも改善されていると捉えることができる。

 

経済成長パターン分析、成長発生曲線(Growth Incidence Curve)

成長発生曲線(Growth Incidence Curve: GIC)を描いてみると、消費支出の伸びがどの所得階層で発生しているのかを分析することができる。GICは、縦軸に消費・所得の年平均成長率、横軸は所得順に世帯を並べたもの。つまり、どの所得階層が最も成長したかがわかる。経済成長パターンが、富裕層に有利なのか、低所得者層に有利なのかが一目瞭然となるわけだ。

総論としては、貧困層で高い消費の伸びが見られる一方、富裕層ではマイナス成長となっている。経済成長パターンがボトムアップとなっており、貧困削減と不平等の是正に寄与したと考えることができそうだ。

 

 

経済構造と雇用

経済構造と雇用の関係について検証していく。産業別GDP貢献度に関するデータはWDIで取得が可能だが、1996年から2004年までのデータしかない。これに世界銀行の別の報告書から2010年のデータを加えると、以下のようなグラフが出来上がる。これを見ると、農業セクターがシェアを落とし(60%→37%)、鉱工業(10%→26%)およびサービス産業(29%→37%)が経済の牽引役として成長してきていることが伺える。

労働者の産業別分布を見ても、明らかな経済構造転換が見られる。1990年には労働者の70%が農業従事者だったが、2010年には52%となっている。一方、サービス産業に従事する労働者の割合は21%から37%まで伸びており、ミャンマー経済は、第一次産業から第三次産業への転換期にあると考えられる。

 

まとめ

ミャンマーは特に民生移行後、急速な経済成長を遂げている。また、昨今の外国企業の進出を踏まえれば、2016年現在の経済規模は更に大きくなっていると考えられ、個人所得の増加もそれに伴い改善傾向にあると想定される。

このように、ミャンマーは大きな転換期にある。したがって、今回の分析結果は、データの制約によってかなり時代遅れのものとなっているかもしれない。最新のデータ収集が進んでいるようなので、新たな貧困分析が近々行われることが期待される。

経済成長に取り残された人々がどこにいるのか。精緻な分析に基づいた政策づくりが望まれる。

※ファイルのダウンロードは「ミャンマーの貧困と不平等(PDFEXCELWORD)」から。

途上国の災害緊急援助をAmazonで注文・配送したらどうなるか?

Amazonが自社専用の貨物機を導入

Amazonがついに自社専用の貨物機を導入して運用を開始」というニュースを目にしました。同社はすでに「自社専用の輸送機20機のリース契約を結んだ」様子。ロジスティックスを一元管理することで、コスト削減と配送スピードを改善することが狙いと報じられています。

ただ、Amazonがロジスティックスを一元管理することになると、「効率化」だけでなく、いろいろな新しい可能性が頭をよぎります。特に、開発途上国の緊急援助に関しては「大きな革命」が起きるのではないかと思っています。

 

緊急援助物資をAmazonで注文して直送できればおもしろい

インターネットの普及によって、オンラインで買い物を済ませることが多くなりました。その中でもAmazonは世界最大手で、誰もが一度は生活用品を注文したことがあるのではないでしょうか。

ところで、開発途上国に対する援助のアプローチには大きく2つあります。人道支援と開発援助です。この内、人道支援は災害や紛争の影響で避難生活を余儀なくされる人々へ一時的かつ迅速に行われるものです。そのため、「物流(ロジスティックス)が命」の分野です。

今回の話とどこに接点があるのか?

あらゆる生活必需品を世界各地で在庫管理しているAmazonが物流を自社で管理すること。緊急援助でAmazonと援助機関が連携できれば、潜在的な可能性は計り知れないものがあると思います。

 

日本の緊急援助はこうなっている

日本の緊急援助はJICAが担っています。JICAの緊急援助物資は、決められた物資リストに基づいて、世界各国の備蓄倉庫に常備されています。世界食糧計画(WFP)の倉庫を間借りしている場合もありますが、シンガポール、マイアミ、ドバイ、アクラ、マジュロ(マーシャル)、マルキョク(パラオ)に保管庫があります。

災害が発生すると、現地政府の要請が日本政府に届き、JICAが物資放出の調整を開始します。たとえば、中南米地域で災害が発生した場合、基本的にはマイアミの倉庫から物資を届けることになります。その際、JICAは自社の貨物機を保有していないため、民間機をアレンジすることとなります。チャーター便をアレンジすると思われている方も多いようですが、基本的には通常運航している民間の通常便に物資を載せることになります。

ここにある課題は何か?物資供給元、倉庫管理会社、民間航空会社など複数の会社が介在し、緊急援助は成り立っていることです。迅速性最優先させる必要がある分野では、関係者が増えれば増えるほど事務コストと時間がかかります。

 

Amazonが緊急援助に関与するとどうなるか?

世界各地にアマゾンは自社の倉庫を持っています。そして、常時生活必需品を有し、航空便も自社保有することになりました。JICAのような緊急援助実施機関が、一連業務を一貫してAmazonを通じて実施するとどうなるか。緊急援助業界では、かなり強力なパートナーとなりうると思います。

前述のとおり、JICAの物資リストは事前に決まっていますから、それに基づいてAmazonが調達すればよいことになります。そして、物資放出の際には、自社便で最速で届けてもらう。拠点に関しても、世界中に倉庫を抱えているので、より近い倉庫からの物資搬入が可能になる気がします。

具体的に検討をすれば、さらにいろいろな可能性が出てくる分野だと思いながら、ニュースを見ていました。

アジアの社会保障の課題は、貧困を脱した中間層がカバーされていないこと

貧困を脱した中間層が陥る罠

アジアの社会保障の課題は何か?私なら「中間層の罠」と答えるだろう。貧困を脱出するための制度整備が進む一方、頑張って貧困ラインを超えた人々に対するサポートが極めて少ない現状がある。貧困から脱出する後押しはしておいて、その先に待っているのは中間層になったが故の罠というわけだ。これは私が勝手に考えた造語なので、もう少し説明したい。

マクロ経済用語で「中所得国の罠(Middle-Income Trap)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。中所得国の罠は、「新興国が安い労働力を背景に経済発展を遂げた後、賃金上昇とともに経済が停滞する現象」を示す用語だ。つまり、中所得国となった段階で、貧しかった頃の魅力が失われてしまい、中途半端な存在になってしまう。そのため、投資家の関心を失い、市場での競争力を失い、経済全体が停滞してしまうわけだ。

似た現象がミクロレベルでも起きつつある。多くのドナー諸国や開発途上国政府にとって、貧困削減を達成することが至上命題となっている今、貧困層は中間層に比べて支援の対象となりやすい状況がある。実際、社会保障分野に関して言えば、貧困世帯を対象に現金を給付する社会扶助(Social Assistance / Cash Transfers)の導入が過去十年で急速に進んだ。低所得国の限られた予算の中で効率的に貧困削減を達成することを第一目標に置いた政策だ。

たしかに、貧困層にターゲットを絞って貧困を脱するために必要な最低限の現金を手渡せば、より少ない予算で効率的に貧困率を下げることができる。しかし、その弊害が顕在化しつつある。貧困層にターゲットを絞ることは、それ以外の人々を対象から外すことを意味する。貧困から脱したばかりの人々は、貧困層とほぼ同程度に貧しく、貧困に陥るリスクが高いままであることが多い。それにもかかわらず、社会保障でカバーされていない中間層が極めて多い現状がある。貧困から脱して中間層になったが故に陥る社会保障のカバレッジの罠。これを「中間層の罠」と表現してみた(※)。

 

アジアの人々の半数以上が社会保障でカバーされていない

Photograph: Ippei Tsuruga
Photograph: Ippei Tsuruga

アジア開発銀行(ADB)の調査によれば、アジアの人々の半数以上が社会保障へのアクセスが無いという。老後の生活に対する不安、病気になっても病院へいけない不安、失業時の保障がない不安など、大多数の人々がリスクを抱え、不安とともに暮らしている。

アジア諸国の多くは、社会保障のマスタープランである国家社会保障戦略(National Social Protection Strategy: NSPS)を策定している(バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、キルギス、モンゴル、ネパール、パキスタン、ウズベキスタン、ベトナム)。一般的に、「様々な社会保障制度を組み合わせて、すべてのリスクから国民を守ること」がNSPSで定められているが、貧困削減に特化したプログラムに予算が割かれることが多く、貧困に陥るリスクを扱うプログラムは二の次とされてきたのが実態だ。

 

社会保障が最重要政策の一つとなりつつある

8月1日~5日、ADBはアジア大洋州諸国の政府・援助・学術関係者を集め、社会保障に関する会合(Asia Pacific Social Protection Week)を開催する。会合の目的は、中間層を含む包括的な社会保障システムの構築を政府に促すことだ。

また、持続可能な開発目標(SDGs)によって、社会保障が最重要政策の一つとみなされるようにもなった。SDGsを見ると、目標1貧困撲滅に不可欠な要素として、社会保障システム構築(SDGs 1.3)が明記されている。

このように、貧困層に対する保障が手厚くなる一方、中間層が見過ごされてきた実態がここ最近の社会保障の議論では重要な論点となりつつある。国際的な議論とアジア地域の文脈の両方において、社会保障の役割が貧困削減と不平等の是正を促す政策として再認識されている。

 


※ミッシング・ミドル(The Missing Middle)

開発経済学の世界では、ハーバード大学が説明している「ミッシング・ミドル(The Missing Middle)」がこれに近い。開発途上国では、零細企業(Microenterprises)と大企業が多い一方、その間にあるべき中小企業(Small and Medium Enterprises: SMEs)が圧倒的に少ない。金融アクセスや利益率などが原因として指摘される。大企業と零細企業の両方と競争することが難しいのが問題の根源だろう。

なぜコピペは駄目なのか?自動要約マシーンの出現でコピペがOKになる日

イギリスの大学教育ではコピペは退学モノ

たまには、編集長のワガママで、編集長コラムを書いても怒られないだろう。なぜコピペはだめなのか。最近疑問に思う「そもそも」論を考えてみたい。

仕事を通じて日常的に論文や報告書を書いていると、文献の引用方法について神経をとがらせなければならない。日本の大学教育でも厳しく指導されることだが、イギリスの高等教育においてはさらに厳しい。コピペは「犯罪」並みの扱いを受ける。実際に、クラスメートが「コピペ容疑」で「一発退学」を受けたという話は、よく聞いた話である。何百万円も支払った授業料は全てパー。人生の一番輝ける時間も棒に振ることになる。

しかし、よく考えてみると、本当にコピペは悪なのだろうか。そもそもなぜ、コピペは駄目なのか。引用元を示していれば、コピペでもいいじゃない。と最近思うことが多い。イギリスの大学教育では、カギ括弧で囲むだけでは不十分で、必ず全文を要約して言い換えなければならない。「引用符付ければコピペはOK」という考えは一切認められず、要約することが求められる。

学術と実務の違いがあってもよいのでは?

実務に携わっているものの感覚からすれば、要約に時間を費やすことほど意味のない作業はないだろう。限られた時間の中で報告書、企画書、政策提言を書き上げることが大切なのであって、過去に世の中に出回っていない文章を作文(要約)し、言い回しを変えることにどれ程の意味があるのだろうか。最近はとても疑問に感じることだ。

もちろん著作権法の関係など、いろいろなシガラミはあるのだろう。ただ、結局のところ、「学術的な作法としてそれが伝統」というだけの理由で要約が求められている気がする。

しかし、本当に全ての場面でコピペを禁止すべきなのだろうか。コピペであれ何であれ、アウトプットを短時間で出す方がよい場面だってあるのも事実。コピペを全て「悪」とすることに、最近は疑問を持っている。

現状ではコピペがほぼ犯罪並みの扱いを受けるので、私自身も甘んじて要約をしている。しかし、限られた予算と時間の中で、社会にインパクトのある政策や事業を生み出していくためのプロセスとして、「コピペ回避のための要約作業」に何日もかけるのはいかがなものか。

きっと「自動要約マシーン」が発明されてコピペで作業できるようになる

幸か不幸か、何も新しいものを生まずに時間がかかる作業は、次々と機械が代替する時代となっている。

実際に、「コピペを判別するための機械」はすでに存在し、多くの大学や研究機関で導入が進んでいる。大学の出版物を出版する前に一度機械に通してコピペがないかどうかを判別するわけだ。

矛盾の話を思い出してほしい。守りがあれば、攻めの技術も生まれてくるのが世の常である。技術革新が進むにつれ、要約を作成する作業やスキル自体が必要なくなっていくと思っている。原文をコピペすれば、世の中に出回っていない言い回しの要約文が一瞬で表示される。そんなツールの登場を、私は夢見ている。

たとえば、Google翻訳の発達が目覚しい。

コピペで文章を入力すれば、割とまともな訳文を返してくれる。日本語変換はイマイチだが、英仏西語に関してはグーグル翻訳でほぼ意味を理解できるレベルまで来ている。これを応用して、自動的に要約してくれるプログラムを誰か発明してくれないだろうか。要約のパターンは、語彙をランダムに変えるように設定してくれれば、何千通りも自動要約で文章が生まれそうだ。

コピペで要約できれば、国際機関で働く日本人が増えるかも?

こうした技術が生まれれば、国際機関で活躍する日本人が増えると思う。「日本生まれ、日本育ち、周りに外国行ったことがある人はいませんでした」という「純ジャパ」が国際機関で活躍するのは正直しんどい。

特にしんどいのが、読み書きのスピードと語彙の豊富さに圧倒的な差があるということ。国際機関で働く人の多くは、フランス語、スペイン語、ドイツ語などヨーロッパ諸国の言語を母語としている。基本的な文法構造が似ていたり多くの単語や言い回しが似ているため、報告書などをスラスラと書き上げてくるし、読むのも早い。要約に関しても、同じ意味を持つ単語をいくつも知っている。全く不公平だ。

上記の「自動要約マシーン」が発達すれば、文章の言い換えや、表現の変換など、様々な場面で私たちのような「純ジャパ」も彼らに太刀打ちできるようになるはずだ。言語のハードルを下げる意味でも、コピペ、自動要約マシーンの登場を待ちたい。

そんな妄想をしながら、報告書のイントロを書くために要約をする毎日である。

アフリカ開発銀行がアフリカの農業へ2.4兆円の投資を約束

アフリカ開発銀行(AfDB)が、アフリカの農業へ約2.4兆円(240億ドル)の投資を予定しているようだ。

これは、The Feed Africaと名づけられたイニシアティブの一環で、3,150-4,000億ドル規模の投資を今後10年間で行い、年間850億ドルの収益を見込んでいる。

同イニシアティブは、アフリカの食糧安全保障にとって実に理にかなっているようだ。アフリカ全体では、354億ドル相当の食糧を輸入に頼っている一方で、全世界に点在する未開発地域の65%がアフリカに集中している。

AfDBの推計によれば、アフリカの全人口の70%、貧困層の80%が農村部に居住しており、農業分野の投資拡大が及ぼす影響は計り知れないものがありそうだ。

 

タイ経済は回復基調も、少子高齢化が喫緊の課題に

世界銀行がタイの経済分析を公開

世界銀行がタイの経済・社会分析を公開した。ここでは、ざっと要点をまとめてみたい。若干ぶっきらぼうな箇条書きとなっている部分はご容赦いただきたい。

まず、経済。経済成長率は2014年から15年にかけて、0.9%から2.8%へ回復。2016年は2.5%の見込み。観光業と財政出動が経済成長を牽引。

貧困率も改善傾向が続く。ただし、貧困削減スピードは遅くなっており、特に農村部の貧困層は農産物価格の下落に苦しんでいる。

マクロ経済は良好だが、貧困層の集中する農村部では課題があるようだ。

タイは、アジアで最も高齢化の進んだ国へ

ASEAN地域では少子高齢化が急速に進んでおり、タイがその筆頭となっている。

2016年には、全人口の11%(約750万人)が65歳以上となる。1995年は5%だった。高齢化は続くと見られており、2040年までには人口の4分の1にあたる1,700万人が高齢者となる見込み。

高齢者の比率が上昇している最大の原因は、少子化にある。出生率は1965年の6.1人から2015には1.5人まで減少した。この背景には、1970年に始まった国家家族計画プログラムの成功があると見られる。

労働者人口も減少の一途をたどり、2040年までに11%減り、4,900万人から4,050万人となる見込み。

タイ政府にとって、労働市場と経済構造転換が喫緊の課題

労働者人口が減少する中、少ないマンパワーで高い生産性を達成する経済構造を実現する必要がある。

高齢化社会が必要とする年金、保健・医療など、長期間にわたって財政支出が拡大していくことが予想される。

アフリカの気候変動対策には300兆円足りない?

アフリカ諸国は気候変動対策に約300兆円必要としている。INDCsの試算によると、気候変動の影響を緩和するための政策に約270兆円(2.7兆ドル)、適応策に約49兆円(4,880億ドル)が2030年までに必要とされるようだ。

さらに、世界銀行と国連環境計画(UNEP)の分析によれば、気候変動対策にかかるコストは2050年までに年間2~5兆円(200~500億ドル)達する見込み。平均気温が4度上昇すると、年間10兆円(1,000億ドル)となる計算だ。

 

ベトナム経済、イギリスEU離脱の影響で損失の見込み

イギリスのEU離脱が、ベトナムの繊維産業へ悪影響を与えそうだ。ベトナムの繊維産業の輸出額は、対EUが約20%。そのうちの4%が対イギリスだった(2015年)。

ポンドやユーロの下落によって、ベトナムドン建ての歳入が目減りすることが見込まれている。また、政情不安によって、ヨーロッパ諸国の消費者の購買力が低下することも懸念されている。

現地メディアでは、繊維産業関係者のコメントが伝えられており、今年の第4四半期に通貨安の影響があらわれると予想されている。

世界の工場と呼ばれる東南アジア。繊維産業の損失が拡大すれば雇用も失われかねず、マクロ経済だけでなく中間層・貧困層への影響も避けられない。

また、ベトナムだけでなく、他のアジア諸国への影響も懸念されるだろう。

 

千里の行も足下より始まる - 事業報告(2016年4-6月期)

千里の行も足下より始まる

2016年4-6月期の事業報告です。千里の行も足下より始まる 。人気を追わず、重要な情報やトレンドを届けることに力点を置いていきます。

今期は、引き続き多くの方に記事を投稿いただくことができました。青年海外協力隊が生の情報を任地から発信する理想的なモデルを開始することができました。開発途上国のリアリティと、地域や世界レベルの援助潮流をバランスよく発信していく記事を掲載することができたと思います。記事の本数を見ても、前期52本から129本となりました。今期は開発途上国のメディアに掲載された注目度の高いニュース記事を日本語で要約して配信することも試みました。こうしたことから、質と量ともに高いレベルを維持できたと思います。

 

事業報告

別の記事でご説明の通り、The Povertistでは閲覧数(PV)よりも、必要としている方へ届けることに重点を置いています。PVは一つの指標にすぎませんが、今回もご報告したいと思います。

PVは7.8万件で前期比+48%となっております。前期は、一般向けの解説記事でアクセスが伸びる傾向がありました。今期に関しては、青年海外協力隊の現地レポートなど、より開発課題の核心に迫った記事のアクセスが伸びる傾向にありました。The Povertistの目指す方向性です。

このほか、年齢、ジェンダー、SNSフォロワー数などのデータをまとめています。事業報告の詳細については、媒体資料 (2016年4-6月期)をご参照ください。

 

イギリスEU離脱の開発途上国へのインパクト、英国シンクタンクがイベント開催

世界屈指のシンクタンクである英国海外開発研究所(ODI)が、イギリスEU離脱(BREXIT)に関するパネルディスカッションを開催する(開催情報は記事下部)。

世界の株価は2兆ドルの損失を記録し、BREXITに伴うリスク回避の動きが鮮明となっている。さらに、流動性の低い開発途上国のマーケットでも、ボラティリティの高い動きが続いており、すでに目に見える影響が出ている。

イギリス政府の開発援助政策に影響力をもつシンクタンクが開催するイベントなので、注目したいところだ。日本からもオンラインで視聴が可能なので、是非登録してみてはいかがだろうか。

 

日時

7月7日18:00-19:30(現地時間:GMT+1 )

 

登壇者

David Luke – Coordinator of the African Trade Policy Centre, UN Economic Commission for Africa (UNECA)

Vicky Pryce – Economist and former Joint Head, UK Government Economics Service

Mohammad Razzaque – Adviser and Head of the International Trade and Regional Cooperation Section, Commonwealth Secretariat

Phyllis Papadavid – Team Leader in International Macroeconomics, ODI

 

登録方法

ODIホームページから登録可能