携わっている仕事について書きます。

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チャドで食糧危機、200万人が飢餓に直面、サブサハラアフリカの天候不順が原因

サブサハラアフリカの中央に位置するチャド。同国サヘル地域に居住する200万人が飢餓の危機に直面している。これはチャドの人口の約半数にあたる規模だ。

これは世界食糧計画(WFP)が発表したもので、必要最低限の食糧需要を満たすためには、国際的な援助が不可欠な状況のようだ。

こうした食糧安全保障の危機的状況は、2015-16年に起こった不規則な降雨に大きな原因がある。その結果、食糧生産高は昨年比11%減となった。また、治安維持を目的としてナイジェリア国境を封鎖したことで食糧貿易が減少したことも原因として考えられるようだ。

世界銀行がホストコミュニティ支援に175百万ドル、アフリカの角難民

「世界の関心が中東地域の難民問題に集まっているが、アフリカで長期化している難民問題にもっと目を向けなければならない」世界銀行キム総裁は語気を強めた。

アフリカの角と呼ばれる東部アフリカ諸国で、世界銀行がホストコミュニティ支援を開始する。1990年代初頭から続くソマリアからの国外避難民問題が隣国の国内問題化しつつある。実際、ケニア政府は世界最大のダダブ難民キャンプを閉鎖すると発表し、国際社会のケニアに対する支援が不足していることを訴えてきた。

世界銀行はこうした状況に対応するために、周辺のホスト国に対して大規模な資金援助を実施する。エチオピアへ100百万ドル(約110億円)、ウガンダへ50百万ドル(約55億ドル)、ジブチへ20百万ドル(約22億円)を、最貧国向け優遇条件での貸付枠組み(IDA)を通じて融資する。また、アフリカの角地域の干ばつ対策などに強みを持つ地域国際機関(Intergovernmental Authority on Development: IGAD)に対しては5百万ドル(約6億円)を無償提供する。案件名は、「The Development Response to Displacement Impacts Project (DRDIP)」。

アフリカの角地域では、950万人が移動を余儀なくされている。この内、650万人は国内避難民(IDPs)、300万人が国外避難民と見られ、地域が一丸となった対応が求められている。

こうした国際機関によるホスト国に対する支援は、難民受入国の負担を軽減するだけでなく、地域経済・社会に対しても好影響を与えることが期待される。

 

 

協力隊ブログを探すにはここで決まり!

協力隊ブログを探すにはJICA.INFOで決まり!

国際協力を志す人の多くが、青年海外協力隊(JOCV)への参加を検討したことがあるのではないでしょうか。前回の記事で、協力隊公式ブログの存在をお伝えした。記事のタイトルが、「青年海外協力隊の公式ブログはAKB48のビジネスモデルなのか?」と、センセーショナルだったためか、多くの反響を頂いてありがたい限りだ。

さて今回は、公式ブログとは別に、協力隊ブログを検索する方法があったのでお伝えしたいと思う。実は、JICA.INFOというサイトが存在する。URLはJICAの公式ページのように見えるが、オフィシャルメディア一覧表にないことから考えれば、JICA.INFOは公式ページではなさそうだ。

ただ、ここであえて紹介したいのは、そのカバレッジ。なんと、1,000名近くの協力隊の個人ブログが集約されており、年次、分野別に検索が可能だ。また、新着記事もリスト化されており、気になる地域、分野、年次の協力隊の活動を知るには最も使いやすい検索システムかもしれない。

ウェブサイトが若干重いのが玉に瑕だが、それを差し引いても利用価値の高いサイトだ。是非、トライしてみてほしい。

インドHIV感染拡大、輸血で2,200人以上が感染

輸血が原因で2,234名の感染が確認されたことを、インドの現地メディアが報道した。これはインド政府が実施した調査結果で、過去17ヶ月間だけでこれだけの被害が報告されたとのこと。

今回の事故は広く分布しており、ウッタルプラデシュ州(361件)、西部グジャラート州(292件)、西部マハラシュトラ州(276件)、ニューデリー(264件)だった。

1980年代に日本国内で発生した薬害エイズ事件では1,800名の感染が報告されて社会問題となったが、今回のインドのケースはそれをはるかに凌ぐ規模。

こうした深刻な状況にもかかわらず、病院や血液バンクなどに対して具体的な指導や規制が行われていないことに、現地のアクティビストなどが声を上げている。

 

 

編集長が独断と偏見で選ぶ厳選記事5本(2016年5月)

編集長が独断と偏見で選ぶ厳選記事5本

5月に公開した記事の中から、独断と偏見で5本選びました。アクセスランキングだと、月初に公開したものがどうしても有利となってしまい、月末の良質な記事が埋もれてしまいます。それをここで掘り起こしたいと思います。それでは行ってみましょう。まだ、読んでいない記事があれば、この機会に是非「一気読み」してください!

 

送金しない送金サービスTransferWise

TransferWiseという新しい送金サービスの紹介記事です。IT技術を使った新しい送金システムが面白いです。

 

世界銀行がカンボジアへ5年ぶりに融資再開、4案件130百万ドルを承認

世界銀行がカンボジアで新規案件を5年ぶりに開始します。経済成長著しいカンボジアに、さらに心強い助っ人が現れました。

 

中国、南スーダンへ200万ドル相当の非食料物資援助

オンラインメディアが未発達な南スーダンから生の声です。南スーダンでの中国の動きがよくわかる記事です。

 

ケニア政府がダダーブ難民キャンプ閉鎖、ホスト国支援の必要性を考える

世界最大の難民キャンプ閉鎖に伴い、国際社会はホスト国支援の在り方を考え直す必要があるかもしれません。

 

開発途上国の経済成長の影、伝統と発展のジレンマ

開発途上国が経済発展していくことは嬉しい反面寂しさも伴います。この気持ちを開発事業へどのように生かしていくべきでしょうか。

最も読まれた記事 TOP 10(2016年5月)

1ヶ月で最も読まれた記事TOP10

5月に公開した記事の中で、最もアクセスの多かった記事を紹介します。まだ、読んでいない記事があれば、この機会に是非「一気読み」してください!

 

1位 カンボジアで数十年に一度の旱魃発生

カンボジアで数十年に一度の干ばつが発生し、地方部を中心に被害が報告されました。エルニーニョの影響が世界中で報告される中、カンボジア経済にも打撃を与えているようです。

 

2位 世界銀行が「開発途上国」カテゴリをデータベースから削除

世界銀行が公開したデータベースから、「開発途上国」と「先進国」の区分けがなくなりました。SDGsが全世界を対象とした目標であることから、世界を二分する意味が薄れてきたことが問題意識のようです。

 

3位 青年海外協力隊の公式ブログはAKB48のビジネスモデルなのか?

国際協力機構(JICA)が派遣している青年海外協力隊の公式ブログについてコミカルにまとめた記事です。タイトルがセンセーショナルなためか、人気を集めた記事です。

 

4位 サセックス大学開発学研究所(IDS)、開発業界のこれまでと今後の展望

これまで開発業界を牽引してきた世界的研究機関が、今後の展望を発表しました。開発業界で働く方々の関心が高いようです。

 

5位 自由の橋へのアクセス道路開通-南スーダン

JICAの支援によって南スーダンに道路が開通しました。オンラインメディアが未発達な南スーダンから、現地駐在員が直々のレポートです。

 

6位 途上国ブログマガジンがいま一つパッとしない理由

月末に公開された記事ですが、ランクイン。挑発的なタイトルに反感を持って訪れた読者の皆様が多いのか、あるいは共感を呼んだのかは定かではありません。

 

7位 開発途上国の貧困の定義と計測方法のまとめ

開発途上国の貧困の定義と計測方法について、イメージで理解することを目標にまとめた記事です。こうした「お役立ち」系の記事も増やしていければと思います。他のセクターのまとめ記事を書いてくれる方、大募集です。

 

8位 持続可能な開発目標(SDGs)推進本部長に安倍首相、日本政府

この記事も月末公開ですが、ランクイン。首相が本部長に就任することが珍しいため、注目を集めたようです。

 

9位 UNDP東ティモール事務所 岡田絵美さん

UNDP東ティモール事務所でJPOとして勤務中の岡田さんのインタビュー動画です。現役国連職員のインタビューということで注目を集めたようです。

 

10位 国際協力の資質、開発途上国の援助に必要な専門性とは?

意見が割れそうなトピックだけに、注目を集めたようです。これといった答えはありませんが、一つの方向性を示そうとした記事です。

JICAがベトナムの経済インフラ・環境整備へ1,661億円支援

ベトナムの順調な経済成長と貧困削減、中長期的な課題は?

高度経済成長を続けるベトナム。1990年代以降、順調に経済成長を続け、低中所得国入りも達成した。社会指標の改善も著しく、1998年から2014年の間に、貧困率は37.4%から8.4%まで改善した。

今後、持続可能な経済成長を実現するためには、経済インフラ整備や投資環境整備と、貧困率の高い農村部への梃入れが必要とされているようだ。

 

ベトナム経済の底上げと脆弱性の克服へJICAが支援

5月28日、国際協力機構(JICA)がベトナム政府と3事業、1,661億2,400万円を限度額とする円借款貸付契約を調印した。支援事業は、鉄道、電力、下水道整備の3事業。経済成長の加速と脆弱な都市環境の整備の両面で支援を行う。

ホーチミン市都市鉄道建設事業(約902億円)

都市鉄道の整備によって、交通渋滞と大気汚染の緩和を見込む。ベトナム随一の経済都市ホーチミン(旧:サイゴン)の経済インフラを整備することで地方経済の発展を促す狙いもある。日本の技術活用(日本企業の受注)を条件とすることで、譲許性の高い貸付条件となっている(本邦技術活用条件:STEP)。

タイビン火力発電所及び送電線建設事業(約550億円)

経済成長著しいベトナムにおいて、電力供給能力の強化は喫緊の課題となっている。同事業では、ベトナム産石炭で運用する発電所を整備する。資源輸入に依存しない電力供給を実現することで、ベトナムの経済成長を一層後押しする狙いがある。

ホーチミン市水環境改善事業(約210億円)

ホーチミン市の下水道・排水システムを整備することで、汚水処理能力の向上と浸水被害の軽減を図る。経済インフラだけでなく、脆弱な都市機能を強化することで市民の生活の安定と環境にやさしい経済成長を実現する。環境・気候変動関連事業に適用される譲許性の高い貸付条件での融資。

 

日本が援助したチリの鮭養殖産業で環境問題?経済・社会的な貢献も忘れてはいけない

ハフィンポスト掲載記事がチリ鮭養殖産業を批判

5月27日付でハフィンポストに掲載された記事が話題を集めている。「日本のスーパーで売られているチリ産の鮭を地元の人が食べない理由」と題した記事は、チリの養殖産業の闇に問題提起を行う内容だ。著者の主張は大まかに言えば、以下のとおり。

  • 鮭のエサが原因で、海が富栄養化されて赤潮の原因となっている。
  • 鮭の寄生虫対策に使われる殺虫剤で、他の海洋生物が死んでいる。
  • 鮭の病気対策に多量の抗生物質が使われている。養殖場の鮭の密集度が高すぎて多くの鮭が死んでいる。
  • 鮭の養殖産業で収入を得る人が増えるかもしれないが、他の海洋生物(魚介類)を採って生活している人は職を失っているおり、何より環境破壊が深刻だ。

上記の記事は、精緻な調査をした上で書かれた報告ではないことに留意する必要がある。知人の話などが議論の根幹を支えている点でどこまで信頼できる話かは疑わしい。また、別の報告では、養殖産業については触れず、気候変動の影響を指摘するものもある。

これらを鑑みれば、海洋生物の大量死と鮭の養殖産業の因果関係を認めるだけのエビデンスは揃っていないと思われる。国や地域レベルの政策的な議論を行うためには精緻な調査結果を待ちたいところだ。

日本の技術協力から世界第2位の一大産業へ成長

チリ鮭の養殖産業がもたらした経済・社会的なインパクトを無視して、こうした政策的な議論を行ってはならないだろう。

もともと、チリの鮭養殖産業は、JICAの技術協力によって生まれた経緯がある。つまり、日本の技術によって新しい産業が生まれたのである。1970年代に技術協力が開始されて以来、「鮭産業の奇跡」と形容されるまでに産業が成長した。今では、ノルウェーに次ぐ世界第二位の巨大産業だ。チリ産の鮭は、世界の供給量の3分の1を占める。

当然、新しい産業が生まれたことによって多くの雇用が創出され、貧困層の所得が向上したという報告もある。

チリの鮭養殖産業の歴史や経済・社会的インパクトの検証については、JICA研究所が実施した研究が詳しい。今月Springer社から出版された『Chile’s Salmon Industry: Policy Challenges in Managing Public Goods』や、2010年に纏められたプロジェクトヒストリー『南米チリをサケ輸出大国に変えた日本人たち~ゼロから産業を創出した国際協力の記録~』も参照されたい。

上記のハフィンポストの記事がどれ程の規模の話なのか、全容が報告されていないので判断が難しいところだが、政策的な議論を行う場合は同産業の貢献度についても冷静かつ正しく評価する必要があるかもしれない。その上で、チリ政府はガイドラインの整備や業務改善に関する政策を立案するかもしれない、日本や他国の技術協力を求めるかもしれない。精緻な調査報告とエビデンスに基づく議論を待ちたい。


 

ベトナムの貧困層向け社会保障案件が始動、世界銀行とUNICEFが支援

世界銀行とUNICEFはベトナムで大規模な社会保障プログラムのパイロットを実施している(Social Assistance System Strengthening Project)。2014年1月に世界銀行が融資を決定した案件で、2019年まで実施される予定だ。案件予算総額は62.5百万ドル(約70億円)。

案件対象地域は、ハザン省、クアンナム省、ラムドン省、チャーヴィン省の4省で、貧困層29.2万人へ現金給付が実施される。

パイロットフェーズでは、実施にかかる全ての流れを作る。対象世帯の選定、ターゲティング、現金給付方法の整備、モニタリング、評価など。

トライアルを経て、いずれはベトナムの貧困削減政策と社会保障制度の主軸となっていくことが期待される。

 

アジア開発銀行、ミャンマー観光業へ300万ドル、貧困削減日本基金より拠出

アジア開発銀行(ADB)がミャンマーの観光業へてこ入れを行う。日本政府がADBに設置している「貧困削減日本基金(Japan Fund for Poverty Reduction: JFPR)」を通じ、300万ドル(約3.3億円)を無償で資金提供する。

案件の支援対象となるのは、伝統工芸や食品などを扱う零細企業。低所得者層が多い小規模ビジネスを支援することで、貧困削減と持続可能な経済成長を目指す。

日本企業の進出が著しいミャンマー。今後、政情の安定が続けば、観光客も一層増えると見られる。

 

参照:ADB, Gov’t inject $3 million into Mon State tourism industry