携わっている仕事について書きます。

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ザンビア、地方都市で社会保障プロジェクトを開始

リヴィングストンで現金給付事業がスタート

ザンビア南部のジンバブエとの国境の町リヴィングストン。この田舎町に暮らす750世帯が今年、現金給付を受け取る(Social Cash Transfer Programme)。

今後、2ヶ月に1度、世帯あたりZMW280(約3,000円)を受給することとなる。今年の終わりまでに同地区の社会福祉局(Department of Social Welfare in Livingstone)は、2,200世帯を対象とする見込み。

プログラム関係者によれば、現金給付の受給世帯のほとんどは、給付金を収益性のある事業へ投資しているようだ。

なお、プログラムの対象世帯の選定要件や、条件の有無などについては、報道されていない。

 

参照:750 families get cash transfer

ルワンダがアフリカのIDカードのデジタル化について会合開催

ルワンダ政府がデジタル化に関する国際会議を開催した。アフリカ全土から36カ国、域外から29カ国の外交団が首都キガリに集まった。

会合の正式名称は『Second Annual Government Meeting of the ID4Africa Movement』。

アフリカでは、社会保障制度の整備とあわせて国民認証カード(IDカード)の普及が進んでいる。多くの場合、紙媒体での登録と認証ではなく、電子データによる登録が一般的となりつつある。

アフリカ随一のデジタル産業国ルワンダが、今回の会合を開催することは自然なことと感じる。それ以上に、同国だけでなくアフリカ全土でIDカードのデジタル化が急速に進みつつあることに注目したい。

先進国では人権保護を理由に、生体認証や個人情報を国が管理することに否定的な意見が多い。アフリカにおけるデジタル化の流れは、こまで先進国が経験したことの無い開発プロセスを予期させる。

 

参照:Rwanda hosts conference on digitalising African identity cards

途上国ブログを産休・育休中の開発援助のプロに書いてほしい

「産休・育休中にキャリアに取り残されることが怖い」

JICAに勤めていたころ、同僚の何人かにママさん・パパさんになる人がいた。そして、産休・育休に入って数ヶ月したころ、こんな話を本人から聞くことができた。逆に、「忙しすぎて仕事のことなんて考えられない」という人も多く、親や配偶者のサポートがどの程度得られるかによるのだと思う。

しかし、同期が開発途上国で活躍する姿を数ヶ月から一年、遠いところで眺めているのは「焦る」と感じる人も多いようだ。

独身、子供なしの私としては、働くママさん・パパさんたちの事情や苦労なんて10分の1もわかっていないかもしれないけれど、何ができるか考えてみた。

一日15分、グーグルニュースで最新ニュース記事を追う

最新のニュースを追うことは割と容易に始められることかもしれない。私も最近始めたのだが、今のところ1ヶ月以上は続いている。Google Newsで、お気に入りの国やキーワードを検索する。検索結果が表示されたら、「検索ツール」から時間指定を行う。私はここで、「24時間以内」に公開された記事を表示させるオプションを選んでいる。

以下の例では、PovertyとAfricaというキーワードで24時間いないに公開された全世界のニュース記事を表示させている。インドネシアの教育が好きな人であれば、Indonesia Educationといった感じだ。そして、検索結果が表示されたページをお気に入りに登録しておく。

私は昼食後の15分間、私は登録ページを開いて、コーヒーを飲みながら、検索結果を眺めるのを日課としている。

ニュース記事を読んだら、数行でメモとして残す

私の場合、ただ読むだけだと、なかなかモチベーションが上がらないと感じた。そこで、読んだ記事はポイントだけ数行でMicrosoft Wordにメモすることとした。記事に対する所感も加えるとなおよい。

「メモを手元に置いておくだけではもったいない。The Povertistで公開しよう。」そう思って始めたのが、新企画「開発途上国に関するニュース」。

私は、アジアとアフリカの貧困問題と社会保障に関するニュースをフォローしているが、他の方はカンボジアや南スーダンに特化して開発全般をフォローしている。

自分の関心分野のニュースを読み、数行であっても発信することを念頭に置いておくと、驚くほど日課として続けるモチベーションとなる。そして、自分の専門としている国や分野の事情を常にアップデートできるので、キャリアに穴が開くという感覚に襲われずに済むのではないだろうか。

また、需要の観点から補足すると、日本語で読むことができる途上国のニュース記事は極めて少ない。日本語で要約してコメントをつけて発信することで、その分野の日本の第一人者ともなることができる。

ママさん・パパさんからのご連絡お待ちしています。

ジェンダーと社会保障、開発途上国の非正規労働者へ社会保険を届けるためには?

社会保険を非正規労働者へ

開発途上国の非正規労働者(Informal Workers)へ社会保険(Social Insurance)を届けるにはどうすべきだろうか。

開発途上国における貧困削減政策の中心に、社会保障がある。一般的に、社会保障制度のうち、受益者から保険料を徴収するスキームのことを社会保険と言う。

この社会保険制度を非正規労働者へ拡充するにはどうすべきだろう。開発途上国では非正規労働者の割合が7-8割を占めることが一般的。一方、多くの場合、社会保障制度は企業勤めのサラリーマン、いわゆる正規労働者のカバレッジがほとんどで、非正規労働者はカバーされないことが多い。

こうした議論が今、ホットな話題となっている。

 

ジェンダーと社会保険、女性の非正規労働者に注目

英国のシンクタンクODIが今回発表した論文は、スコープをさらにジェンダーに焦点を絞ったもの。女性の非正規労働者は男性に比べ、多くのリスクに直面し、それでいて、社会保険でカバーされないことが多い。

論文の中では、労働市場における法整備、ケアエコノミー、革新的な制度設計、女性がアクセスしやすい制度設計などを扱っている。

ジェンダーと社会保障の専門家の方にとっては、興味深い文献となりそうだ。

 

参考文献 

Holmes and Scott. 2016. Extending social insurance to informal workers: a gender analysis. ODI Working and Discussion Papers

中国農業発展銀行が貧困削減に50兆円の融資計画

中国農業発展銀行(Agricultural Development Bank of China)が、2020年までに3兆元(約50兆円)の貸付を計画していると報じられた。中国政府が進める貧困削減イニシアティブの一環と見られている。

資金の使途は、農村部のインフラ建設、穀物生産、貧しい人々の住民移転、観光、環境、教育など、多岐に渡るとされる。

昨年10月に、中国は7,000万人の貧困層全員を貧困ラインから上へ押し上げることを目標に掲げることを発表した。

今回の大規模なファイナンス計画は、その一環と捉えてよいだろう。

 

参考資料

開発途上国の経済成長の影、伝統と発展のジレンマ

カンダール市場移転計画?カンボジアの首都プノンペンで騒動

カンボジアの首都プノンペンで、経済発展の歪みが生まれている。市内を流れるトンレサップ川にほど近いカンダール市場。ここはプノンペンの地元民の台所だ。王宮にも近く、クメール絵画の画廊、フランス植民地時代の建築物、プノンペン陥落を伝えた外国人記者クラブ跡など、伝統・歴史・文化が数多く残る場所でもある。斯く言う私にとっても、2009~10年にプノンペンに滞在していたときに毎週通っていた思い出の場所でもある。

そんな伝統ある場所が、経済発展の影に隠れようとしている。カンダール市場の周辺では、ここ数年、マンションの建設が着々と進んでおり、カンダール市場のの所在地にも高層ビルの建設計画が噂されているようだ。

行政側は、再開発計画の検討段階にあることは認めたものの、カンダール市場の撤去や移転については具体化していないと否定した。

開発途上国の経済成長と景観や文化の保存

開発援助に携わる者が常に抱えるジレンマがある。開発と景観の両立だ。仕事上は多くの場合、経済合理性を追求することを求められることが多い。一方、開発途上国を訪れて「いいな」と思い、写真を撮るのはローカルの暮らしだったり、伝統だったりする。

例えば、カンボジアの国担当は、仕事上は都市のマスタープラン(開発計画)を作成し、経済発展や貧困削減に寄与する最も合理的な開発計画をカンボジア政府に示す必要がある。それに基づいて、JICAなどの開発援助機関が、道路・交通インフラの整備を支援することとなる。

その過程では住民移転も当然行われるため、アクティビストによる批判に晒されることも多い。当然、開発援助機関は環境社会配慮(セーフガードポリシー)に基づいて、開発途上国政府とともに費用弁済を行い、住民との立ち退き交渉をまとめていくこととなる。

バンコクから物価の安さを奪ったら、東京と同じでは?

このように、すべてが経済的合理性に基づいて進められていくのが、多くの開発事業だ。しかし、その国の個性が失われることに、開発援助従事者としてはジレンマを感じざるを得ない。独自の景観や文化を失った街は、本当に魅力的なのだろうか。

例えば、タイの首都バンコク。多くの日本人観光客がいたり、開発援助やビジネスを展開する会社や国際機関の職員の拠点となっている。私も数回バンコクを訪れたことがある。そこで感じたことは、東京となんら変わりない景観ということだった。空港、地下鉄、市内の道路、建築物。すべてが日本の大都市、東京に酷似していて、面白みを感じなかった。そのためバンコクにはほとんど滞在せず、タイを「感じる」ために地方都市へ行くことが多かった。

物価が安いことから、マッサージやグルメを目的に訪れる観光客が後を絶たないバンコク。しかし、物価が東京都同じくらい高くなったとしたら、タダのありきたりの街になってしまうのではないだろうか。

開発途上国の経済発展と「ローカルっぽさ」の両立。経済的な尺度だけで開発を進めてよいのか。私たちはもっと真面目に考えなければならないのかもしれない。

ドミニカ共和国の高齢者の社会保障カバレッジはたった11%

ドミニカ共和国の高齢者(60歳以上)のうち、老齢年金を受給する人々は11.2%しかいないようだ。しかもその内の77.4%の高齢者は、最貧層が必要とする月収の半額以下の給付金を受け取っている。

国内には855,663人の高齢者が生活しているとされており、57.8%が男性。男性の13.2%が年金を受給し、女性は9.3%に留まっているようだ。

これらの推計は、国家統計局が公表したもので、調査報告書「Population Aging: Challenge to the Dominican Republic’s Social Security System」にまとめられている。

 

情報元:Lack of social protection for Dominican elderly ‘alarming’

開発途上国援助のイデオロギー対立、社会保障セクター編

開発金融機関と国連機関の対立

開発援助の世界にはイデオロギー対立がある。右の人、左の人という表現はあまり好きではないが、イデオロギーとはわかりやすく言うとそういうことだ。

一般的に、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)といった開発金融機関は、資本主義的と言われている。報告書を読むとお分かりいただけると思うが、「市場メカニズム」、「生産性」、「経済的合理性」といった言葉が並ぶ。つまり、どのような開発アプローチを取ろうとも、最終的に目指すところは経済やマーケットが念頭にある。

一方、国際連合(UN)の関連機関は、人権アプローチ(Rights-based Approach)と言われることが多い。例えば、緒方貞子さんがトップを務めた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は人間の安全保障(Human Security)というコンセプトを打ち出し、難民の人権を重視した事業展開を前面に出している。

もちろん、個々の職員と話してみると、マーケット主義の人がUNDPやUNICEFにいることもある。職員全員がイデオロギーに基づいて仕事をしているわけではなく、あくまで組織の方向性の話だ。

「国際機関がすべて同じ」と思われている方は、イデオロギーの対立に目を向けてみると、つまらない国際会議も面白く感じるのではないだろうか。

 

開発途上国のイデオロギー対立、社会保障セクター編

私の専門としている社会保障セクターにも当然イデオロギー対立はある。むしろ、イデオロギーの塊のような分野かもしれない。

社会保障分野は、「大きな政府」を模索するか、「小さな政府」を模索するかに大きく左右される。政権交代や政治家のイデオロギーによって180度も方向転換されうるセクターだ。

国際労働機関(ILO)やUNICEFは、社会政策・社会保障を担う国連機関だ。これらは上記の通り人権アプローチを取る。一方、金融機関の方は、世界銀行が社会保障セクターをリードしている。イデオロギーの対立を単純に説明すると、Social Safety Net(世銀)とUniversal Social Protection(ILO)の対立だ。

 

貧困層のターゲティング v.s. 人権アプローチ

日本人でこの分野のスペシャリストが世銀に数名、ILOに数名しかいないため、日本語のうまい表現が見当たらない。英語で説明すると、「Targeting」と「Universality」の対立がある。

世界銀行は、最も貧しい人々を細かくターゲティングして現金給付を行うSocial Safety Netというアプローチをとる。最貧層を選定して、貧困脱出に必要なだけの最小額を現金で渡せば、貧困削減が最も効率よくできるというコンセプトに基づく発想だ。専門的に言えば、パーフェクト・ターゲティングを実施すれば、貧困ギャップと同額を財政支出することで貧困率を論理的にゼロにできる。経済的合理性を優先したアプローチといえる。つまり、ターゲットを絞ることによって、財政支出を最小限に抑えることができる。IMFなどのエコノミストが開発途上国へ財政健全化を求めるとき、石油補助金をカットし、貧困層をターゲティングした現金給付(Cash Transfers)プログラムを助言することが多い。

ILOは、貧困層を恣意的に決め、不安定な生活を営む多くの人をターゲティングしないことに批判的だ。ターゲティング一辺倒の社会保障政策ではなく、複数のプログラムでいろいろなグループをカバーすることで、社会保障システム全体で国民全員をカバーする。つまり、Universalityを重視している。これには、人権をベースとした法整備も含まれ、経済的なアプローチだけにとどまらない複合的なアプローチとなる。

 

世界銀行とILOの歩み寄り、イデオロギー対立の終焉?

こうしたイデオロギーの対立は今も根強く残っていると感じる。しかし、歩み寄りもみられる。昨年、世界銀行とILOはトップ同士で共同声明を発表した。

Universal Social Protectionと題した声明は、ターゲティングで一部の人だけをカバーするのではなく、社会保障システム全体で貧困削減や貧困に陥るリスクへの備えを全ての人々へ提供することを掲げている。

世界銀行はILOのシステムアプローチへ歩み寄り、ILOは最貧層に対する社会保障アプローチを開始した(Social Protection Floor: 社会保障の床)。

職員レベルでは、Social Safety Net中心の世界銀行と、人権アプローチのILOという構図はまだまだ色濃いが、イデオロギーの異なる組織同士が良い方向へ向かうことは歓迎されるべきだろう。

細かくはまた別の機会に書きたいと思う。

ヨーロッパ・中央アジアでは飢餓は改善、栄養が課題

国連食糧農業機関(FAO)が栄養不良が優先的に取り組むべき課題と指摘。栄養は、食糧安全保障、農業、農村開発へ優先的に取り組むことによって改善できるとした。

ヨーロッパ・中央アジア地域では1990年以降、飢餓指数(カロリーベース)で40%以上の改善が見られた。一方、栄養に関する指標の改善は見られなかった。

53カ国中48カ国で、成人の肥満率が55%を超えた一方、中央アジア・コーカサス地域の子供たちの栄養失調が顕著だった。

 

参照:At regional session, UN agricultural agency urges sustainable development for better nutrition

世界銀行がフィジー事務所を開設

島国の気候変動対策の拠点に?

世界銀行グループがフィジーの首都スバに事務所をオープンした。フィジーの抱える島国特有の開発課題に対応するための拠点にするという。

50百万ドル(約55億円)を融資して実施中の交通インフラ整備など、世界銀行はフィジーですでにプロジェクトを実施している。

一般的に、太平洋の島国に対する支援は他の開発途上国と異なるアプローチが必要とされている。こうしたことからも、新しい開発課題への対応や革新的なアプローチを常に模索する世界銀行がフィジーに事務所を開いた意味は大きい。

気候変動の影響が増す中、今後ますます大洋州での開発援助がより複雑化を増しそうだ。それに対応すべく、開発パートナーは経験と知識を共有していく必要があるかもしれない。

 

参考:World Bank Group opens Fiji office