携わっている仕事について書きます。

タグ アーカイブ: 業務日誌

旱魃がカンボジアの漁業セクターに打撃、政府は楽観的

カンボジア政府は漁業生産量の成長を1.3%見込んでいるが、漁業関係者は目標達成について懐疑的な見方を示している。旱魃の影響が原因だ。

カンボジアの水産業をモニタリングする漁業行動連合チーム(Fisheries Action Coalition Team=FACT)によれば、旱魃の影響で水位低下が著しく漁業に影響を与えているとのこと。カンボジア全土の漁業エリアのうち70%で季節はずれの水位低下に見舞われているようだ。

カンボジア政府はこうした状況に理解を示しつつも、1%以上の成長は確保できると見ている。

ただ、政府発表と外部ソースが示す数値の間に大きな乖離が見られる点も指摘されている。先週、政府が発表した昨年の漁業生産量は3%の減少だったが、WFPのデータは17%の減少を示していた。

歴史的な旱魃がカンボジアの漁業セクターに打撃を与えているが、影響の正確な把握が求められそうだ。

参照:Drought weighs on fishery production target

世界銀行が「開発途上国」カテゴリをデータベースから削除

「開発途上国」が消える日

世界銀行が発表した2016年の世界開発指標(World Development Indicator)から大きく変わった点が話題を呼んでいる。開発途上国(Developing Countries)と先進国(Developed Countries)のカテゴリが消えたのが一番の驚きだ。この背景には、以下の2つの理由があるようだ。

  • 時代とともに開発途上国というカテゴリが意味をなさなくなってきたこと。
  • 持続可能な開発目標(SDGs)が開発途上国だけでなく、全ての国を対象としている以上、「開発途上国」というカテゴリをあえて維持する意味がなくなったこと。

そもそも、開発途上国の定義が曖昧だったことが今回の変更の大きな理由にあると思われる。事実、「高所得国」から「低所得国」といったカテゴリが今後使われることとなり、経済規模の大小に関する分け方は維持される。また、このほかにも、SDGsの採択と同時に昨年公開された1.90ドル貧困ラインについても、データベースに新たに加えられている。

WDIをこれまで使ってきた多くの研究者や実務家泣かせのこの変更。SDGs時代に即した変更に私たちも適応していかなければならない。


参考:The 2016 edition of World Development Indicators is out: three features you won’t want to miss

フィリピン貧困率、国レベルで改善、貧困地域はより貧しく

フィリピン政府が世帯調査、貧困率を発表

フィリピン統計機構(Philippine Statistics Authority: PSA)は2012年から2015年の世帯調査の結果を発表した(PSAはフィリピン政府の統計専門機関)。

貧困率の全国平均は、27.9%から26.3%へ改善したものの、貧しい地域はより貧しくなったというショッキングな結果が報告されている。もっとも貧しい北サマル州(Northern Samar)では、53.1%から61.6%まで貧困率が悪化した。

一方、対照的に貧困率が改善した地域もある。ビリラン州(Biliran)では、28.1%から18.3%。東サマル州(Eastern Samar)では、67.1%から50%。南レイテ州(Southern Leyte)では、42.8%から36.6%。

 

貧困悪化は自然災害が原因

政府関係者によれば、「貧困率が上昇した地域は、2013年の巨大台風「ヨランダ」など、自然災害の影響を大きく受けた」ことが原因のようだ。

これらの地域の住民は農耕や漁業に依拠した生活を営んでおり、自然災害リスクに対して脆弱な状況にある。

気候変動が貧しい世帯に大きな影響を与えている中、こうしたリスクに対処する方策の検討と、一刻も早い実施が望まれている。

 

参照:Region 8 poverty incidence worsens from 2012 to 2015

カンボジアのビジネス情報を配信するオンラインマガジンと提携

カンボジアへ進出する日本企業のためのオンラインマガジン

The Povertist編集長の敦賀です。カンボジアのビジネス情報を発信するオンラインマガジン『Cambodia Business Partners』と今後連携していきますのでお知らせします。

Cambodia Business Partnersは、カンボジアの日々のビジネスニュースを日本語で伝える新鋭メディアです。一日あたり3本程度の記事をコンスタントに公開しており、日本語で利用可能なカンボジアのメディアとしてはトップクラスの発信力と思います。また、日本語のフリーペーパーを年2回8,000部発行しているようです。

カンボジアへ進出している外国企業のトップやスタッフへのインタビュー

ニュースの量と質もさることながら、インタビュー記事の充実ぶりも目を見張るものがあります。日本企業に限らず、外国企業全般にインタビューを試みている点で、他の日本語メディアとは一線を画していると思います。

起業家だけでなく、そこで働くカンボジア人スタッフへのインタビューや、カンボジアの商習慣で気を付けるべきポイントをまとめた記事なども、実務的でとても参考になるものです。

また、ニュース記事以外にも、進出を考えている日本企業向けにセクターごとに情報がまとまっているのもビジネス情報誌ならではのポイントです。

カンボジアのビジネス情報を扱う、総合的なウェブサイトとして今後ますます拡大していくと予想させるオンラインメディアといえるでしょう。

The Povertist と Cambodia Business Partners

さて、The Povertistとどう連携していくかです。これについては、緩やかな提携という表現がぴったりくると思います。

The Povertistは途上国の貧困と開発を扱うオンラインマガジンを目指しており、全世界をカバーしています。

その中から、カンボジアのビジネスに携わる方にとって有益な記事については、随時転載いただくこととなりました。

このような細く長いパートナーシップを今後も模索していきたいと思います。

ジンバブエ旱魃で食糧輸入、南部アフリカを気候変動が襲う

気候変動でジンバブエが食糧不足

ジンバブエが1月から4月までの短期間で、35万トンのメイズを輸入していたことが世界食糧機関(WFP)の発表でわかった。旱魃による国内の穀物不足の影響を緩和することが目的だ。

WFPによれば、ジンバブエは180万トンのニーズを満たすために、さらに130万トンを輸入する必要があるようだ。

南部アフリカではエルニーニョの影響によって経済成長の鈍化と食糧価格の高騰が顕著に見られている。

来年4月までには、同地域に居住する3,200万人が旱魃の影響を受ける見込みで、677百万ドルが不足すると見られる。

 

参照:Zimbabwe imported 350,000 tonnes of maize to end of April

ネパール地震被災地で貧困率が悪化

ネパールの英字新聞ヒマラヤンタイムスが被災地で貧困率の上昇が見られると伝えた。

調査はPoverty Alleviation Fundが実施したもので、被災したラスワ郡(Rasuwa)、 シンドゥーパルチョーク郡(Sindhupalchok)、シンドゥリ郡(Sindhuli)の3地域を対象としたもの。

これらの地域では15-20%の人々が貧困状態にあるようだ。

調査結果は首都カトマンズで発表されたようだが、インターネット上では報告書にたどり着くことができなかったため、詳細は確認できていない。

 

参考資料

JICAがインドの経済成長と貧困削減に1,751億円の支援で合意

インクルーシブ成長へ、大型円借款契約に合意

国際協力機構(JICA)がインドの経済成長と貧困削減に約1,751億円(5案件)の支援で合意した。経済成長著しいインドでは、更なる成長へ向けたインフラ整備と、急速な成長に取り残される人々への支援の両方が必要とされている。

今回の大型支援実施に至った背景には、経済成長と貧困削減にかかる多様なニーズへの対応が求められていることがある。

 

包括的に経済インフラとボトムアップを図る

支援パッケージには、電力供給や鉄道整備といった経済インフラの強化に加え、貧困率の高い地域における下水道整備を通じた衛生状況の改善、灌漑整備を通じた小規模零細農家(女性含む)に対する支援、非感染性疾患(NCDs)対策を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの貢献など、インクルーシブ成長を促す事業も含まれる。

今後、経済成長のプロセスに、いかに貧困層を取り込んでいくことができるかがインドの持続可能な開発にとって大きな課題となるだろう。

それに対して、日本の援助がどの程度貢献することができるか。JICAの腕の見せ所といえるかもしれない。

 

参照:インド向け円借款契約の調印:インドの社会・経済のさらなる発展を総合的に支援

ジョージアの子供の貧困と社会保障に関する報告書をユニセフが発表

ユニセフは昨年末、ジョージア(グルジア)の子供の貧困と社会保障に関する報告書を発表した。この報告書では、同じ家計をパネルデータで5年間追跡調査を行い、所得のブレによる貧困ダイナミックス(貧困からの脱却と貧困へ再び陥ること)に焦点を当てて分析を行っている。

ジョージアでは多くの子供たちが貧困状態にあるか、常に貧困リスクのある状態で生活をしており、社会保障の重要性が増している。

報告書では特に、子供給付(Child Benefit)、出産保険(Maternity Insurance)、失業保険(Unemployment Insurance)、共働き世帯向けの保育サービスの拡充などが推奨されている。

 

参照:Child Well-being and Social Security in Georgia: The Case for Moving to a More Inclusive National Social Security System

ガーナが貧困層向け社会保障・雇用拡充プログラムを開始

ガーナ政府は欧州連合(EU)からEuro 31.6 millionの財政支援を受け、社会保障と雇用に関するプログラムを開始する(Ghana Employment and Social Protection: GESP)。実施期間は2016年から2020年までの4年間。

プログラムは4つのコンポーネントで構成され、社会保障システムの効率化と雇用制度改革に中央・自治体レベルで包括的に取り組む。

社会保障制度に関しては、特に貧困層や脆弱な生活基盤を持つ人々への裨益を狙っており、社会保障を通じた雇用機会の創出を実現したい構えだ。

 

参照:Ghana signs €31.6m employment programme agreement

インドでベーシックインカムが貧困削減に寄与

※追記(2017年2月14日):インドにおけるベーシックインカムの議論の動向を別の記事「インド政府がベーシックインカム導入に関心、財源に課題」でアップデートしました。あわせてご覧ください。

社会保障分野の調査・分析を専門とする英国のコンサルティング会社(Development Pathways)が、インドのベーシックインカムプロジェクトのインパクト評価を行った。

調査報告によれば、短期期間かつ低い給付水準だったにもかかわらず、案件の効果は大きかったという。特に、生活水準、栄養、教育のそれぞれの指標で大きな改善が見られたようだ。

インドには世界の最貧層の約半数が集中しているため、インドで社会保障をいかに運用し、貧困削減を達成するかで、世界の絶対的貧困を2030年までに撲滅することができるかが左右される。

今回の調査報告は、ベーシックインカムが一つの解決法となる可能性を暗示したものだ。


参照:The Basic Income Experiment in India