携わっている仕事について書きます。

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中国が貧困削減のために200万人を住民移転、2020年までに貧困撲滅へ

今年、中国は200万人の最貧層を農村部から発展著しい都市部へ住民移転することを計画しているようだ。さらに、2020年までには1,000万人の住民移転を行い、貧困撲滅を目指すとしている。

中国は1978年の市場開放以降、8億人を貧困から脱却させることに成功した。

しかし、「開発途上国」のカテゴリからは未だ抜け出せておらず、世界銀行は改革が不十分であると指摘していた。

現在、中国の貧困率は5%だが、人口にすると7,000万人。特に、これらの多くは農村部に居住しており、年間4万円(2,300元)で暮らしている。

今年3月、李克強(り・こくきょう)国務院総理は、貧困削減プログラムへ43%の予算増を約束した。

2020年までに残り7,000万人を貧困ラインから上へ押し上げる構えだ。

 

参照:China to relocate 2 million people this year in struggle to banish poverty

ソマリアで旱魃、国連が緊急支援を要請、プントランドとソマリランド

ソマリアを旱魃が襲っている。プントランドやソマリランドの複数の地域では、60~80%の家畜が失われているようだ。

畜産を生活の糧としている多くの世帯にとって、収入・食糧の両方の観点から危機的状況となっている。

国連の発表によれば、これらの地域で38.5万人が危機的な食糧不足に直面し、130万人が同様の状況に陥るリスクを抱えている。

これらを合わせると、ソマリア国民の実に37%(170万人)がすでに影響を受けている計算となる。

 

参照:Somalia: UN calls for urgent action to support drought-hit communities

トルコで貧困削減と不平等の是正が進む

トルコの開発大臣の談話によれば、貧困削減と不平等の是正が急速に進んでいるようだ。

顕著なのは、富裕層の所得に伸びは見られない一方、かつて貧しかった人々の所得が改善傾向にあることだろう。

トルコでは過去13年間で、4.3ドル以下で生活する人々の数が2,000万人から125万人まで減少し、1,800万人の所得水準に改善が見られたようだ。

2年前と比較すると、家計の所得は平均12%改善し、最貧層25%に限れば、18%の所得上昇となっている。

 

参照:Income of rich dips, spending by poor rises

ナイジェリアが石油価格を大幅切り上げ、物価上昇から貧困層を守れるか

ナイジェリア政府は、石油供給量が不足していることを受け、補助金の大幅なカットを決定した。実質的に石油価格を3分の2切り上げる政策だ。

石油価格は11日に86.5ナイラ(約50円)だったが、12日には145ナイラ(約80円)まで急騰。

直近では、石油供給量が減っていたことを受け、ブラックマーケットの小売価格は250ナイラ(約140円)まで上昇していた。

この発表の数日前、ナイジェリア政府は、次年度の貧困層向けの社会保障予算の拡充を発表しており、石油補助金のカットとあわせて貧困層の負担を減らしたい構えだ。

一方、貧困層はその日の厳しい生活を営んでいることが多く、石油価格の値上がりは、足元の生計維持に大きな影響を及ぼしそうだ。

今回の政策に関し、社会保障制度が貧困層に対するセーフティネットとナイジェリア政府がみなしているのであれば、どのくらい迅速に、現行の社会保障制度の給付金額を物価上昇に連動する形で増額できるかがポイントとなる。

給付金に頼る生活をしている貧困層にとっては、今日から1日1日が大きな負担となるだろう。

 

参照:Nigeria fuel price rises as gov’t scraps subsidies

ガーナの社会保障プログラムが電子送金を導入

ガーナ政府は、現金給付プログラム(Livelihood Empowerment Against Poverty: LEAP)の受給者146,074世帯が銀行間送金システム(GhIPSS)への登録を完了したと発表。

LEAPは全国の貧困世帯を対象に、定期的に現金給付を行うプログラム。生活水準の向上と教育・保健サービスへのアクセスを保障することで中長期的な貧困脱却を目的とする社会保障制度だ。

GhIPSSは2007年に中央銀行が設立した銀行間送金システムで、電子送金・振込(E-Payment)を一元管理するもの。

生体認証など最新技術を駆使したシステムで、社会保障の不正受給を防止したり、支払いにかかる事務コストや受給者の給付にかかるコストを削減することが期待される。

 

参照:LEAP Beneficiaries Enrolled On Interbank Payment System

世界銀行がリベリアの社会保障支援へ11億円融資

5月3日、世界銀行がリベリアのソーシャル・セーフティネットプロジェクト(LSSNP)へ10百万ドル(約11億円)の融資を決定した。

カンボジア経済と貧困、製造業は好調だが貧困層は大丈夫か?アジア経済を牽引

安く良質な労働力がカンボジアをアジアの工場へ

カンボジアがアジアの虎へ。アジア開発銀行(ADB)はカンボジアを「虎」と表現した。ADBが発表したアジア経済見通し(Asian Development Outlook)によれば、カンボジアは好調な経済成長を2017年まで続ける見込みだ。

カンボジアは、アジアの工場として一気に主役に躍り出た。中国やその他のアジア地域が賃金上昇に悩まされる中、安く良質な労働力を市場へ供給し続けるカンボジアは、多くの投資家や企業を魅了し続けている。

かつて東洋のパリと呼ばれるほどの繁栄を遂げたカンボジアも、内戦の影が暗い影を落とし数十年。長きに亘る不遇の時代があった。しかし、ここへきて経済成長と貧困削減が劇的に進み、ついには、アジア随一の経済成長を遂げる国となった。

 

工業・製造業がカンボジア経済を牽引

好調なカンボジア経済の牽引役はどのセクターだろうか。ここ数年の動向を振り返ると、カンボジア経済は農業分野の急成長に支えられてきた。しかし、ここへきてついに工業が経済を牽引し始めたのが、今回注目すべきポイントだ。

昨年の工業の成長率は11.7%を記録し、GDPに対する貢献度がもっとも大きなセクターとなった。内訳を見ると、製造業が14.1%、縫製業が10.2%の成長を遂げ、貿易額の70%を占めるに至った。

 

サービス業も好調、農業は低迷、貧困層への影響は?

好調な産業と、低迷する産業が明確に分かれてきた。工業だけでなく、サービス業も7.1%の成長を見込む。内訳は、金融・運輸・通信が8%、観光業が6.1%。

その一方、農業はエルニーニョ現象や干ばつの影響を受け、きわめて厳しい状況に置かれている。好調な第二次・三次産業に比べ、成長率は1.6%に留まった。

少しずつ、都市化や産業構造転換が進んでいるものの、貧困層のほとんどが農業に依拠して生活している構造はあまり変わっていない。

貧困層が多い農業セクターの不調は、これまで順調だった貧困削減にとって大きなチャレンジとなるかもしれない。また、気候変動など、農村部の人々がコントロールしきれないリスクが顕在化しており、予期せぬショックに見舞われる世帯も多いと予想される。

 

カンボジアが直面する開発課題-経済の多極化と貧困削減

経済に関してのみ言及すれば、開発課題は2つある。

一つ目は、経済成長の原動力が農業から製造業やサービス業へ移ってきているが、産業の多極化はもっともっと模索されるべきところ。ミャンマー経済に投資家の目が移っており、近い将来、カンボジアの労働市場が投資家の関心を引かなくなることが大きなリスクとなるだろう。

二つ目は、農業が低迷していること。過去数年間、カンボジアは芽を見張るスピードで貧困削減を達成してきた。その原動力となったのは紛れもない、農業セクターの成長だった。米価格の上昇に伴う農村部の経済成長が貧困層の経済力を底上げし、貧困率の低下につながった。しかし、一過性の農村部の経済成長は長続きせず、ここへ来て気候変動リスクとともに経済の停滞が明白となった。貧困指標のアップデートには数年かかるが、直近の干ばつの影響など、農村部の貧困層の生活が厳しさを増していることが想定される。

 

参考資料

就学適齢期の子供たち4分の1が人道危機下で暮らしている

UNICEFが公開した報告書によれば、全世界で462百万人の就学適齢期の子供たちが人道危機下で暮らしている。

一方、人道支援のたった2%しか、教育分野へ向けられていないのが現状だ。

UNICEFはこうした状況を危惧し、今月23-24日にイスタンブールで開催される第一回世界人道サミット(World Humanitarian Summit)で、新しい基金(Education Cannot Wait)を設立する。

同基金は40億ドルの拠出金を募る見込み。5年以内に13.6百万人、2030年までに75百万人の子供たちへ人道危機下で教育の機会を提供することを目指す。

 

参照:Nearly a quarter of the world’s school-age children live in crisis-hit countries

ケニア政府がダダーブ難民キャンプ閉鎖、ホスト国支援の必要性を考える

世界最大の難民キャンプ閉鎖、難民60万人以上が行き場を失う

ケニア政府が6日、同国内にある難民キャンプを閉鎖することを発表した。アメリカの大手メディアCNNが、ケニア政府高官の話として伝えたもので信憑性が高い。

これが実現されると、世界最大のダダーブ難民キャンプを含む複数の難民キャンプ(恐らくカクマ難民キャンプ等)が閉鎖される見込み。

ケニアでは近年、イスラム過激派「アル・シャバブ」によるテロや、それに伴う治安維持、難民流入による経済負担が大きくなっており、国内の政治圧力が高まっていた。

閉鎖措置に至った理由としてケニア内務省高官は、「経済、治安維持、環境等で強いられている思い負担」としており、「国際社会が人道対策の負担に責任を負うよう要請」したようだ。

 

評論家ではなく、実務家がすべきこと

この問題について、ケニア政府に対する感情的な批判や賛同が、ニュースのコメント欄にあふれている。しかし、今回の出来事の本質に迫る建設的な議論があまり聞こえてこない。

開発援助に携わる私たちがこれに同調して、評論家となっていては意味が無い。したがって、ここでケニア政府の政策の是非を議論するつもりも、国際社会の対応の賛否を議論するつもりは無いことを、はじめに断っておきたい。

今、現場でソマリア難民の移転・移住に携わる関係者にとっては、それが優先課題であることはいうまでも無い。そして、直接携わっていない開発・人道援助の実務家にとっては、今回の問題がなぜ置き、今後同じ場面に直面した際にどういった教訓を残せるか。そういった議論をすることが大切なのだと感じる。

 

難民支援と人間の安全保障が投げかけるメッセージ

難民に対する支援の必要性を疑う人は少ない。国家が崩壊したときに、国境の概念にとらわれていては自国民以外は助けないという発想になってしまう。「国境」ではなく、「人間」に焦点を当てよう。人間の安全保障の基本的な考え方はそこにある。

この人間中心の人道支援・開発援助は広く人々に受け入れられている。そして、日本政府や国際協力機構(JICA)の開発援助の基本的な考え方となり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民支援を行う重要な後ろ盾ともなっているコンセプトだ。

国際社会を見渡すと、難民を支援すること自体に反対する人は少ない。しかし、当事者となると話は別だ。そこに今回の問題の本質がある。

 

ホスト国に対する支援の必要性を考える

なぜ、ケニア政府は難民キャンプを閉鎖することを決定したのか?その答えは、ケニア政府自らが明らかにしている。

前述のとおり、「ホスト国の負担」に尽きる。ホスト国の負担が大きすぎ、国際社会のホスト国に対する支援が不十分。負担と利益のバランスが欠如していることが原因というわけだ。

 

ケニアの負担と国際社会の負担

ケニア政府は、人口1万5千人のダダーブという小さな町で30万人以上のソマリア難民を受け入れている。国内にはそれをはるかに上回るソマリア人難民が居住し、それに紛れてテロリストも流入しているのが実態だ。

ダダーブ難民キャンプ周辺には、難民とホストコミュニティによって5,000店が営業し、年間25億円(25百万ドル)を売り上げる。一方、地元の町には370店舗しかなく、売り上げは1.3億円(1.3百万ドル)。これは、この地域が含まれる北東州のGDPの25%に相当するそうだ。

ダダーブ難民キャンプには、この他に多額の援助資金が流入している。2007年に44億円だったのが、2010年には100億円となった。

一方、この巨額の援助資金のうち、たったの1.9億円程度しか、ホストコミュニティにとって有用なインフラ投資へ向けられなかったようだ。また、ホストコミュニティへの直接的な開発援助も、2007年の2億円から2010年の5.5億円と微増するに留まった。その結果、難民キャンプによるホストコミュニティに対する経済効果は、14億円程度しかなかったようだ。

また、別の調査では、ケニアがダダーブ難民キャンプを閉鎖することによって失う機会損失は、年間11億円であり、1万件の雇用が失われるとしている。

こうした状況を受け、ウィリアム・ルト副大統領は、「ソマリアとのビジネス機会、経済効果を失ったとしても、国土の安定を優先する」と語っていた

 

難民支援の専門機関はあるが、ホスト国を支援する専門機関は無い

ケニア政府の言葉を借りれば、ホスト国は「『国際社会』が平等に難民支援の負担をする必要がある」と感じているようだ。

では、国際社会とは何のことだろうか。

ある人は、「国際社会は国際機関やNGOを通じて人道支援に多額の予算を拠出し、難民支援の運営経費をすでに負担している」と主張するかもしれない。また、ある人は、「国際社会は軍事支援を行い、テロとの戦いを支援し、治安の安定に貢献している」というかもしれない。

どちらも一理あるだろう。

しかし、現実問題として、当事者であるケニア政府が、「それでは足りない」と主張していることを真摯に受け止めなければならない。

いろいろな問題提起の仕方が考えられるが、たとえば、ホスト国やホストコミュニティを支援する枠組みや専門機関は存在するのか。

難民支援を行う国際機関は存在する。今回閉鎖対象となっているダダーブ難民キャンプやカクマ難民キャンプを四半世紀運営しているUNHCR。人の移動、移民を専門とする国際移住期間(IOM)。

人間の安全保障のコンセプトにもあるように、不利な状況に置かれている人々を国家の枠にとらわれず支援する枠組み・組織の必要性が認識され、こうした機関が重要な役割を担っている。もちろん、これは優れた枠組みであって、到底批判されるべきではないし、する人もいないだろう。

一方、なぜ、難民を受け入れている国を包括的に支援する専門機関は(私の知る限り)無いのだろうか。現状では、「開発援助」というたくさんあるニーズの中で、開発援助実施機関やドナー国の「裁量」でホストコミュニティを支援しているのが実態だ。

ホストコミュニティの支援にも専門機関が必要なのではないだろうか。「気が向いたときにアドホック」に援助を実施するという努力を国際社会はしてきたのであるが、結局のところ、足りなかったのが今回のケースだ。

四半世紀も月日が経てば、「世界最大の難民キャンプ」というキャッチーなテーマへの支援は続くが、ホストコミュニティという地味で目立たない分野は否が応でも支援が減る。

専門機関があれば、自分の所掌分野の仕事に必死に取り組み、仕事が減りそうであれば、必死で予算や仕事を確保する。組織やそれに準ずる枠組みがあれば、もっと組織的に国際社会がホスト国を支援することができるのではないだろうか。

 

現場の実務家は既に最大限ホストコミュニティに配慮している

最後に、留意いただきたいことは、人道支援に携わる方の現場での努力だ。難民支援に携わる方、友人はたくさんいる。そして、専門家として人道支援に携わる彼らは、現場レベルでできる限り、ホストコミュニティへの配慮もしているのが実態だ。

難民支援に関与している人や機関は、私が知る限り、現地の社会・経済に配慮し、物資調達も地産池消で地元で試みるなど、あらゆる努力をしている。

今回の記事で問題提起したかったことは、そうした努力にもかかわらず、当事者であるケニア政府は国際社会の負担が足りない、と感じていることにある。もはや、既存の開発援助や人道支援の枠組みで、ホストコミュニティをアドホックに「裁量」で支援していくことには限界があるのではないだろうか。

組織的に国際社会がホスト国を支援する枠組みが今後必要となってくると感じる。

 

※この記事は、議論のきっかけをつくるたたき台として執筆しました。現場で活躍する方からのご寄稿お待ちしております

 

参考記事

ジャマイカが社会保障制度へ4,700億円、保健・教育アクセス拡充へ

ジャマイカ政府が43億ドル(約4,700億円)を社会保障事業へ予算配賦する。社会保障プログラムを通じた教育・保健の拡充が狙い(The Programme for Advancement Through Health and Education (PATH) through the Social Protection Project II)。

このプログラムは労働・社会保障省によって実施され、国際復興開発銀行(IBRD)が融資している。

2016-17年に、32万人が2ヶ月に一度のサイクルで現金給付を受ける見込み。給付は、学生に対する交通費の支給、高等教育の奨学金を含む。

そのほかにも生計向上、年金、管理情報システム(MIS)整備などに対する支援がプログラムに組み込まれる予定。

 

情報元:$4.3 Billion for Social Protection Project II