携わっている仕事について書きます。

タグ アーカイブ: 業務日誌

ザンジバルで全ての高齢者に老齢年金を給付、東部アフリカで初

70歳以上の全ての高齢者へ老齢年金を給付する社会保障プログラムが始まった(Universal Pension)。タンザニア沖に浮かぶザンジバルで実施されるこの試みは、東部アフリカでは始めてのケース。

受給要件は年齢のみで、保険料の支払いは不要。全ての高齢者が月額9タンザニアシリング(1,000円相当)を受給する。

現在、ザンジバルには60歳以上の高齢者が約60,000人の居住しており、2005年と比較して11,000人の増加傾向にある。

一方、多くの人々はインフォーマル経済で生計を立ててきており、社会保障基金(Zanzibar Social Security Fund)の受給資格を有していないことが課題となっていた。

今回の給付によって、高齢者の保健サービスへのアクセス、貧困削減が期待されており、今後、プログラムのインパクト評価を通じて効果が検証されることとなる。


HelpAge. 2016. Zanzibar’s new universal pension the first of its kind in east Africa
BBC. 2016. Zanzibar’s pioneering pension scheme.

青年海外協力隊の公式ブログはAKB48のビジネスモデルなのか?

開発途上国で活躍する日本人は珍しい

青年海外協力隊(通称:JOCV)の開発途上国ブログをフォローしている読者の方は多いと思います。最近では、多くのテレビ番組が、「こんなところに日本人」、「世界で活躍する日本人女性」など、いろいろな切り口でJICAや青年海外協力隊の関係者を紹介しています。

開発途上国で生活し、仕事をする。それ自体がコンテンツとなる時代の到来を感じさせます。

特に、青年海外協力隊は、39歳以下の若者が数年開発途上国で仕事をする機会を提供するプログラムで、多くの民間企業が企業研修に活用し始めているほど、期待を集めています。

青年海外協力隊の個人ブログをフォローしていますか?

このように注目されている青年海外協力隊ですから、個人ブログをフォローしている人が多いのではないでしょうか。こんなまとめ記事まで書かれていたりしますし、相当多くの方が読んでいるのではないかと思います。

ちなみに、私のお気に入りはこちら。ネパールに派遣されている青年協力隊員のブログで、更新頻度が高いだけでなく、内容が多岐に亘り、時々ぶっとんでいます。

 

実は、青年海外協力隊の公式ブログがある

 

さて、本題です。実はあります。公式ブログ。

青年海外協力隊を派遣している国際協力機構(JICA)が、実は、公式ブログ「JICAボランティアの世界日記」を密かに運営しています。

そもそも、JICAが青年海外協力隊を派遣しているとはご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、れっきとした公式ブログです。

活動している国、分野、派遣タイプからお気に入りの隊員のブログを検索することができます。

隊員によって更新頻度はマチマチですが、圧倒的な隊員数により、毎日数件の記事がアップされているようです。

現場から直接本人がレポートする、最強のメディアコンテンツだと感じます。

 

AKB48と同じビジネスモデルなのか?

まず、消極的な理由。運営側からすれば、個人ブログが乱立するとほぼ無法地帯となり、コントロールできなくなるリスクがあります。個人ブログは多くの場合匿名で書かれているので、関係者による組織や個人に対する感情的な批判の場になるリスクです。これを記名でかつ、公式ブログで発信の場を提供することでリスク軽減となるのでしょう。

一方、積極的な側面もあります。AKBやおニャン子クラブ的な発想です。つまり、公式ブログでは、青年海外協力隊員本人を検索できるシステムになっています。好きな隊員を検索して、毎日ブログをフォローすることが可能となっています。

これはまさに、AKBと同じモデルではないか。身近に協力隊員を感じ、ファンとしてブログをフォローする。なんと斬新な発信方法なのでしょう。皆さんも是非、「推しメン」隊員を探してください。

しかも、RSSで隊員個人のページを購読できるようになっています。これはもう、AKBですね。日本人が開発途上国にいるというだけでコンテンツになる時代ですから、ビジネスモデルとしては素晴らしいと思います。

ちなみに、AKB48のファンクラブ名は「二本柱の会」ですが、青年海外協力隊のファンクラブができれば訓練所のある二本松にちなんで「二本松の会」がぴったりきそうです。

青年海外協力隊の公式ブログの「惜しい」点

開発途上国で活躍する日本人が自分の声でドンドン発信したら面白い。そう思って、The Povertistを始めました。今回ご紹介した公式ブログは、ある意味でThe Povertistがやりたかったことを実現している点で共感します。

「ここをこうしたらもっとよくなる」と思った点もありました。

ブログの見せ方です。個人ブログを検索するシステムは良いのですが、逆に言えば、検索しなければ記事へたどり着けないのが惜しいです。「推しメン」を探すには良いシステムですが、開発途上国の出来事に関心のある読者も多いと思います。

青年海外協力隊員の皆さん、The Povertistへ投稿しませんか?

「推しメン」の引き抜きではありません。公式ブログと当サイトの読者層はだいぶ異なると思いますので、読者層の重複はありません。公式ブログへ投稿している隊員の中には、開発課題を分析し、検証している人もいれば、日常の出来事を日記として書いている人もいます。

The Povertistでは前者の隊員の皆さんからの投稿をお待ちしています。現場の出来事は「おもしろいコンテンツ」だけではなく、開発援助を生業とする実務家にとって、実際の政策分析・立案、案件形成に大いに役立つ「リアリティの宝庫」です。

企画、投稿などお気軽にご連絡ください。ご関心あれば、躊躇なく以下のリンクをクリック。お待ちしています。

世界銀行がナイジェリアの社会保障プログラムに550億円

アフリカのニュースメディア「Star Africa」によれば、世界銀行はナイジェリアの貧困層向け社会保障プログラム(Social Protection and social safety net for the poor and vulnerable)へ5億ドル(約550億円)の支援を用意しているようだ。

ナイジェリアはこれまで、25億ドル(約2,750億円)をかけて社会保障制度・セーフティネット構築に予算を割いてきた。これは2016年の国家予算の9%にあたる。

プログラムは最貧層100万人に対し、毎月25ドルの現金給付を行うもの。

なお、世界銀行の支援金額の70%が貧困層に対する給付金となる見込み。

 

情報元:World Bank to support Nigeria’s social protection programme with $500m

サセックス大学開発学研究所(IDS)、開発業界のこれまでと今後の展望

英国サセックス大学開発学研究所(IDS)は、今年で設立50年を迎える。英国開発庁(DFID)のブレーンとして、世界の開発業界・援助潮流のブレーンとして牽引してきた。

このたび、50年を記念して論文集を発表した。開発学のこれまで、現在、そしてこれからをテーマとした読み応えのある構成となっている。

開発援助潮流の系譜だけでなく、これから何が起こり、何が課題となっていくかの展望が興味深い。

たとえば、これまではジェンダー主流化がトピックだったが、セクシュアリティ(同性愛を含むトピック)もトピックとして議論されている。

気候変動、都市化、社会保障、ガバナンスなど、幅広いトピックを扱っているため、ご自身の専門分野について目を通してみてはいかがだろうか。

 

参照:Development Studies – Past, Present and Future

その夏休み、旅行で終わっていいの?開発途上国で活躍する若者へ、サマースクール活用術

その夏休み、休暇と勉強で楽しみませんか?

アフリカやアジアで活躍している実務家の皆さんは、休暇でヨーロッパ旅行を考えている方も多いかと思います。その夏休み、少し勉強に割いてみてはどうでしょう?

 

 

休暇+サマースクールはヨーロッパでは一般的?

夏休みくらいは何も考えずにのんびりしたい。人生これまでそう考えて生きてきました。しかし、社会人が大学のコースに通うことが一般的なヨーロッパの若者にとっては、サマースクールに通うこともまた一般的なようです。家族連れで旅行に行くついでに「1週間だけ勉強するか」と軽いノリで、長期休暇の一部を勉学に充てる人もいます。

サマースクールが一般的な要因は、いくつかあると思います。日常的に日本企業のような強いプレッシャーの中で仕事をしていないために気持ちに余裕があること。休暇取得がしやすい職場環境であること。就学のための休暇が年次有給休暇とは別に取得が可能なこと。

 

サマースクールの開講時期と授業料

ヨーロッパの多くの大学が秋から春にレギュラーコースを開講し、7月~8月はサマースクールを別途開講しています。授業料も良心的で、宿泊費込みで1,000ユーロくらいから色々選べます。気力と体力と時間があれば、ハードルは低そうです。

 

サマースクールのコース内容とレベル

大学と学部の数だけコースがありますから、コースレベルは上級から入門まで幅広くあります。また、単位をとることができるコースもあるので、今後留学を考えている方や現在大学在籍中の方にとっては良いかもしれません。

最終日に試験があるコース。成果発表に対してフィードバックを得られるコース。様々なコースが用意されているのは嬉しいです。

 

おすすめサマースクール10選!

「死ぬまでに絶対訪れたい秘境10選」と、煽るブログ記事が最近流行っています。正直なところ全てのコースにいったことがあるわけではないので、ここで「おすすめ!」と言ってしまうと、一昔前にはやった「ステマ」と同じです。真面目すぎて「めんどくせー」と思ったあなた。すみません。

何もご紹介しないのも「アレ」なので、同僚から教えてもらった「おすすめ!ウェブサイト」を紹介します。その名も『INOMICS』。サマーコースだけでなく、オンラインコースや開発学、経済学の修士課程コースもまとめられていて、検索することができます。

10選はしませんが、その中からいくつか受講したいなと思うものをご紹介します。

 

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)

 

経済学に関しては説明不要。イギリス屈指の名門校だけあって、70コース以上がリストされており、その数では他を圧倒しています。開発経済学のコースがあります。ロンドンへ遊びに行くついでなら、LSEはアクセスも最高でしょう。

 

パリ経済学校(PSE)

 

パリ派の方もいるでしょう。「21世紀の資本」で一躍時の人となったトマ・ピケティが設立メンバーなだけ、マクロ経済と不平等に焦点を絞ったコースが用意されています。

 

ジュネーブ大学

政策評価のコースが用意されています。担当案件の貧困削減効果は?自由貿易の政策効果は?最低賃金を導入した際のインパクトは?そうした質問に答えるための手法を学べそうです。

 

イタリア旅行と組み合わせる

イタリアの大学も北から南まで様々なコースがありそうです。

 

スペイン旅行と組み合わせる

バルセロナなど、観光地として人気の地区にも大学はあり、コースがあります。ビジネスに強い大学が並んでいる印象です。

人道支援における現金給付と長期的なセーフティーネット

5月12日、人道支援とセーフティネットに関するオンラインセミナーが開催される。

緊急人道支援の一環で、現金給付(Cash Transfers)が実施されることが一般的となりつつあるが、中長期的なソーシャル・セーフティー・ネットとして現金給付をツールとした制度整備する動きも活発化している。

日本国内ではまだ積極的に取り組まれていない分野だが、ホットな分野の一つ。

無料で参加できるので、是非登録して第一線の議論に参加してみてはどうだろうか。

 

実施機関

 

実施日時

2016年5月12日

  • 9:00 – 10:30 (UTC-4, Washington DC)
  • 10:00 – 11:30 (UTC-3, Brasilia/Brazil)
  • 14:00 – 15:30 (UTC+1, London/United Kingdom)
  • 15:00 – 16:30 (UTC+2, Paris/France)
  • 20:00 – 21:30 (UTC+7, Bangkok/Thailand)

 

参加登録

下記外部リンクより。

 

参照:A Framework and Practical Guidance on Linking Humanitarian Cash Transfers with Long-Term Social Safety Nets

カンボジアで数十年に一度の旱魃発生

カンボジア政府のスポークスマンが大旱魃に見舞われるリスクを発表した。例年より雨季の到来が数ヶ月遅れる見込みであることが原因だ。

「過去にも局地的な干ばつに見舞われたことがあるが、今回は全国規模の大旱魃。コレラの蔓延など、感染症拡大の恐れもある。」

UNICEFによれば、カンボジア北東部のラタナキリ州では、小学校203校中136校で水が不足しているとともに、生徒や教師の欠席・欠勤率が高まっている。

シェムリアップ州、バッタンバン州、ストゥントレン州では、動物の大量死も確認されており、予断を許さない状況。

不衛生な水へのアクセスによって人体へ直接的な被害が懸念されるほか、中期的には稲作、畜産、水産業で生計を立てている貧困世帯への影響が懸念される。

また、全国規模の自然災害と見込まれることから、マイノリティへの支援がどの程度優先的に実施されるかが焦点かもしれない。特に、北東部の山岳地域に居住する少数民族は、高い貧困率と大都市へのアクセスが悪いことから、支援の優先順位をどこまで上げることができるかが課題となりそうだ。

 

参照:Animals die as Cambodia is gripped by worst drought in decades

ミャンマーがユニバーサル・ヘルス・カバレッジへ取り組み

ミャンマーは2030年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成を目標としているが、医療スタッフの不足が課題となっている。

シリアの貧困率が80%へ悪化、5年で3倍に

国連西アジア経済社会委員会(ESCWA)が発表した報告書によれば、直近のシリアの貧困率は83.4%と見込まれ、2010年の28%から急速に悪化した。

人道支援を必要としている人はシリア国内に1,350万人おり、この内400万人が首都ダマスカスとアレッポにいる。

平均寿命は2010年に70歳だったが、2014年には55.4歳まで悪化。

また、1,210万人がきれいな水へのアクセスが無いとされる。

 

参考:More than 80% of Syrians live below the poverty line

貧困とジェンダー、ネパール母子家庭の貧困率は男性世帯よりも低い

2011年に実施された家計調査(NLSS-III)によれば、ネパールの貧困率は25.16%。男女別にみてみると、女性が長の世帯(Female-headed households)の方が、男性が長の世帯よりも貧困率は低い。

記事下部に記載した参照記事は、残念ながら理由について言及しておらず、論理的な構成になっていないため読みにくい。しかし、著者が紹介している地元の人の声や実情は興味深い。

「男性は女性の25%しか働いていない。女性が農地を耕し、野菜を育て、収穫する。女性は抱えられるだけ野菜を抱え、市場へ売りに行くが、男性はより多くの野菜を自転車や牛車で売りに行く。」

ここで言わんとしていることは明確にはわからないが、文脈からすると、「女性の方が真面目に体を動かして働き、男性は楽して金を稼ぐ」ということを批判的に書いているようだ。

開発経済学の教科書で勉強するセオリーでは、「女性が長の世帯は男性労働力が不足するため、生産性が低い。したがって、貧困率は高くなる。」と勉強した記憶がある。

しかし、ネパールしかり、東南アジア諸国では、女性が長の世帯の貧困率が相対的に低い現象がみられる。

今回のネパールのケースから考えられることとしては、「女性は一人でも高い生産性を持つが、男性の生産性は女性よりも低い」ということだろうか。

これについて長年詳細に検証してみたいと思っているが、まだ手を付けられていない。