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南アフリカの貧困率の減少は2018年まで見込めず

南アフリカ共和国の一人当たりGDPは2014年以降減少を続けており、直近の旱魃が貧困率をさらに悪化させたようだ。

世界銀行が公表した推計によれば、経済成長は人口増加を2018年まで超えることができそうに無い。コモディティ価格が低水準にあることが為替やインフレを悪化させている。

こうした厳しいマクロ経済状況が続けば、貧困率は現在の水準である15%前後に留まる見込み。

 

参照:Macro poverty outlook for South Africa

開発途上国の貧困の定義と計測方法のまとめ

開発援助の実務をイメージで理解する - 第一回「貧困の定義と計測方法」

不定期連載コラム「開発援助の実務をイメージで理解する」。第一回は、「貧困の定義と計測方法」。日々のニュースで「貧困率」「子供の貧困」「女性の貧困」など、貧困について耳にすることが増えてきた。しかし、実際にどのように貧困が定義され、貧困率が計算されているかご存知だろうか?

このコラムでは、開発途上国の実務の現場で使われる専門用語や分析手法をわかりやすく、イメージで理解していただくことを目指している。

貧困の定義

貧困層とは何か。哲学的な議論は多々あるだろうが、ここでは実際に広く使われている定義をご紹介する。貧困の定義は、まず大きく2つに分かれる。開発途上国で一般的に使われる絶対的貧困と、先進国で使われる相対的貧困。それに加え、最近脚光を浴びている多元的貧困。この3つが実務の現場で使われている一般的な貧困の定義だ。

絶対的貧困とは?

絶対的貧困(Absolute Poverty)は、開発途上国における貧困の定義。ある一定の所得・消費水準(これを貧困線と呼ぶ)に満たない人々を貧困と定義する。絶対的貧困は開発途上国の貧困を計測する際に用いられる定義だ。詳しくは、後述の「貧困指標」を参照いただきたい。

相対的貧困とは?

相対的貧困(Relative Poverty)は先進国における貧困の定義。「所得(等価可処分所得)の中央値の半分に満たない人々」を貧困と定義する。たとえば、国民全体の所得の真ん中が200万円だとすれば、100万円未満の人々を貧困とみなす。絶対的貧困と異なり、貧困の定義が中央値に左右されることから、「相対的」貧困と呼ばれている。

多元的貧困とは?

多元的貧困(Multidimensional Poverty)は、所得だけでなく、他の要因も加味した貧困の定義。絶対的貧困や相対的貧困が所得の多少によって貧困層を定義しているのに対し、教育や保健へのアクセスなどお金に換算できない指標も考慮して貧困を定義する。最も有名な例だと、国連開発計画(UNDP)の人間開発報告書において、多次元貧困指数(Multidimensional Poverty Index: MPI)が採用されている。

貧困指標

開発途上国で使われる貧困の定義は、絶対的貧困と多元的貧困の2つだ。では、具体的にどのように使われるのだろうか。大まかに言えば、貧困指標は主に貧困率、貧困ギャップ、二乗貧困ギャップに分類される。また、最近では、多元的貧困指標も脚光を浴びている。ここでは、これらの貧困指標の算出方法について順番に解説していく。

データ

貧困指標を計算するには、データが不可欠だ。一般的に、家計調査・世帯調査を通じて、所得・消費、家族構成、就学状況、保健サービスの利用状況などの世帯情報をまとめて調査することが多い。

家計調査で世帯情報を集める

分析を開始するにはデータが必要だ。こうしたデータ収集のことを、一般的に家計調査・世帯調査(Household Survey)と呼ぶ。一番正確なデータを集めるには、国民全員に調査票を配布してデータを集める国勢調査(Census)がベスト。

しかし、数千万人~数億人を対象に調査することなど、予算的にも開発途上国において実施することは不可能だ。そのため、数千~数万件の世帯を調査することで代替することが一般的となっている。統計学の複雑な話はここでは省くが、統計の専門家が上手く調査方法をデザインすることで、小規模のデータ収集で、全国の貧困率を推計することができるというわけだ。

家計調査のデータの入手方法

自分で実施することも可能だが、実務家の場合、既存のデータで事足りることも多い。例えば、世界銀行が広く実施している世帯調査(The Living Standards Measurement Study: LSMS)は代表的な調査事例だ。また、最近はオープンデータ化が世界的に進んでおり、世界銀行や各国統計局のウェブサイトからも簡単に入手できるようになっている。

データ分析に使うソフトウェア

データ分析を行うには、STATAが一般的に使われるソフトウェアだ。日本の大学では、SPSSがよく使われるようだが、開発業界ではSTATAが一般的となっている。もちろん、貧困指標を計算するだけであればExcelでも十分だが、既存のデータのほとんどはSTATAかSPSSで作成されているため、Excelでは開くことができないだろう。

貧困線(貧困ライン)とは?

貧困線(Poverty Line)は、貧困を定義するためのボーダーラインのこと。「1日1.25ドル以下で生活する人を貧困層としよう」といった風に線引きを行うことで、貧困層とそうでない人を分ける目安だ。基本的には、1日当たりの必要最低限の生活水準をお金に換算して定義される(必要最低限のカロリー・栄養のある食事+生活必需品の金額)。

ところが、注意しなければならないのは、貧困線は普遍的ではないということ。「貧困線は必ずXXXドルにしよう」といった国際的な合意がない。それではどのように貧困線は決められているのだろうか。大きく分けて2パターンある。

国際貧困線(国際貧困ライン:International Poverty Line)

国際貧困ラインは、世界銀行や国連機関が基準として採用しているもの。国際的に影響ある機関が採用しているため、実質的にこれらの基準値が一般的になっているのが実情だ。世界銀行はこれまで、1日1.25ドル未満で生活を営む人々を貧困層と定義してきたが、2015年末に1.90ドルへ改訂することを発表した。国際貧困ラインを使うのは、国家間の貧困率を比較するときだ。全ての国を一つの基準で比較することで、貧困指標の国家間比較が可能となる。今後、国際貧困ラインを使って貧困率を比較したいときには、1.90ドルを基準に考えれば良いだろう。

国家貧困線(国家貧困ライン:National Poverty Line)

国家貧困ラインは、開発途上国自らが定めているもの。貧困層と最貧層を分けるため、貧困ラインを2段階定めている国が多い。当該国の通貨単位で定められることが一般的。

貧困プロファイルや経済レポートで、単に”Poverty Line”と記載されている場合、どちらの貧困ラインのことを言っているのか注意する必要がある。また、首都、都市部、農村部など、地域別に別々の貧困ラインを設けていることもあるため、注意が必要だ。

また、貧困指標の国際比較を行う際、国家貧困ラインで定義された貧困率を比べて議論している人を時折目にするが、これは間違い。国家貧困ラインは国ごとによって異なるため、国際比較をしたいのであれば国際貧困ラインを用いるべきだろう。

貧困率の計算方法

貧困率(Poverty Headcount Ratio)は、全人口に占める貧困層の割合のこと。英語の文献などでは、貧困率のことを「P0」と表現することもあるが同じ意味だ。

計算方法は、貧困ラインに満たない人々の数を総人口で割ればよい。計算式は、「貧困率=貧者の数/総人口」となる。計算式にご関心がある場合は、こちらに掲載したので参照してほしい。

貧困ギャップ率の計算方法

貧困ギャップ率(Poverty Gap Ratio)とは、貧困層の所得・消費水準がどの程度貧困線から乖離しているか(下回っているか)を示す貧困指標。そのため、貧困ギャップは「貧困の深度(Depth of Poverty)」と表現されることもあり、貧困の深刻さを計測する目安となる。

貧困率は、貧困層の人口に占める割合を計測する指標であり、貧困層が「どの程度貧しいのか」を表すことはできない。一方、貧困ギャップは、貧困線と貧困層の所得・消費水準の差がどれほどあるかに注目し、貧困の程度を表す指標だ。

これを応用すれば、貧困削減を完遂するために、最低でどの程度の所得上昇が必要なのかを見積 もることができる。特に、貧困層向けの社会保障制度給付金額の決定に際し、参考指標として使われることが多い。

計算方法を簡単に説明すると、「貧困ギャップ率=貧困線以下にいる人々の貧困ラインまでの不足額の平均」となる。計算式にご関心がある場合は、こちらに掲載したので参照してほしい。

二乗貧困ギャップ率の計算方法

二乗貧困ギャップ率(Squared Poverty Gap Ratio)は、貧困層間における格差に着目した指標である。貧困層と一括りに言っても、貧困ラインに近い人々もいれば、遠いところにいる人もいる。当然、貧困ラインから遠いところにいる人々が多い方が、貧困問題は重度ということになる。このように、貧困問題がどの程度ひどいのかを表す指標として二乗貧困ギャップが考案された。「貧困の重度(Severity of Poverty)」と表現されることもある。

文字通り、貧困ギャップから派生した指標。つまり、貧困層の所得・消費水準 の不足分(貧困ギャップ)を二乗することで、より貧しい人の状況を指標により大きく影響させようとしたのが、二乗貧困ギャップ率だ。

「貧困線直下に貧困層が密集している地域」と「貧困線よりもずっと下の方に貧困層が集中している地域」とを区別するためにこの二乗貧困ギャップ率が用いられるのである。計算式にご関心がある場合は、こちらに掲載したので参照してほしい。

多次元貧困指標の計測方法

最も有名な事例では、人間開発報告書で採用された多次元貧困指数(Multidimensional Poverty Index: MPI)が記憶に新しい。貧困を所得・消費水準だけでなく、教育・保健サービスへのアクセスも数値化して組み込む指標だ。どのような指標を組み込むかは、統一見解はないが、MPIの構成指標はUNDPのホームページで確認することができる。

多次元貧困指標を開発した研究チームは、オックスフォード大学貧困・人間開発イニシアティブ(OPHI)のアルカイア教授。実務家向けの参考文献や講義ビデオを無料で公開しているので、関心のある方はこちらを参照してほしい。

※記述に間違いがある場合、ご要望がある場合は、コメント欄かメールでお知らせください。PDFはこちら。WORDはこちら

参考文献

実務家向け入門編

  • World Bank. 2010. Handbook on Poverty and Inequality (PDF) (BOOK)
  • Reading List of University of Sussex (PDF)

学問的に学びたい方向け学術書

  • Ray. 1998. Development Economics (BOOK)
  • Todaro. 2015. Economic Development. (BOOK)
  • 戸堂. 2015. 開発経済学入門 (BOOK)
  • ジェトロ. 2015. 開発経済学 (BOOK)
  • 渡辺. 2010. 開発経済学入門 (BOOK)

子供給付が南アフリカの貧困削減を牽引

南アフリカでは、子供の人口が2,300万人に対し、その約60%が貧困世帯で生活している。こうした課題に対処するために、子供給付(Child Support Grant: CSG)は過去10年間でカバレッジを拡大してきた同国最大の社会保障プログラムの一つ。

カバレッジは、1998年に子供の貧困の10%に留まっていたが、2015年には85%まで拡大した。南アフリカの貧困世帯に暮らす子供たち1,170万人がCSGの恩恵に預かっている計算だ。

CSGは、18歳以下の貧しい家庭に暮らす子供たちに毎月330ランド(約3,000円)を給付する制度。社会政策(授業料免除、学校給食、保健サービスへの補助金)とともに貧困削減に寄与していると考えられている。

失業率がと貧困率が高い南アフリカでは、子供給付のほとんどが食費に使われる。結果的に、子供の健康や栄養状態の改善に寄与しているというわけだ。

国際労働機関(ILO)が発表した報告書によれば、子供給付の効果は数字に表れているという。受給世帯の子供は、他の子供に比べて身長が平均3.5センチメートル高いという推計が出ているようだ。

 

参照:South Africa’s Child Support Grant: A booster for poverty reduction

ルワンダが長期の産休を認める法案を可決

ルワンダの妊産婦は、12週間の産休を有給で取得することが認められることとなった。これは今年2月に議会が可決した法案で、12週間の産休期間中に給料を100%受け取ることを保障するもの。

これまでも12週間の産休は認められていたが、産後の早期復職を促すために最初の6週間に限って給料の100%を認めるものだった。残りの6週間は、給料の20%しか受け取ることができなかった。

今回の法案可決を受け、社会保障事務局は過去数ヶ月の平均給与から給付額を算出し、給料相当額を月額給付していく。

保険料は被保険者の給与の0.6%となる見込みで、雇用者と労働者が0.3%ずつ負担することとなる。

 

参照:Rwanda: Mothers to Get Full Salary Under New Maternity Leave Law-All Africa

イラク・シリア難民へWFPがデジタルカードで現金給付

WFPがイラク・シリア難民に対してデジタルカードの配布を実施する。これは通称SCOPEと呼ばれるカード。これによって、受給者は食糧配給の受給方法を選択できるようになる。

つまり、カードに組み込まれた受給者情報によって、食糧配給「相当額」を現金かバウチャーで受け取ることができる仕組みと思われる。

従来の物理的な食糧配給に加え、家庭や地域の状況に応じて、受給者に選択肢が与えられることとなるメリットがある。また、WFPにとっても、オペレーションコストの削減(食糧輸送・貯蔵費)に貢献することが期待される。

地域経済の観点からすれば、メリットもデメリットもある。外部からやってきて食糧配給を行うと、食糧生産・輸送に携わる地場産業が衰退するデメリットがあり、食糧の市場価格が下がることも予想される。一方、現金給付の場合、食糧価格の上昇リスクがある。もちろん、現金給付を行う場合は市場で食糧調達が可能であることが前提だ。

「食糧 vs 現金」は、緊急支援および社会保障(ソーシャル・セーフティネット)分野の古典的な問いであるが、デジタルカードという技術革新によって選択肢が広がったことは歓迎するに値する。

なお、WFPは欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)から約35億円(3,200万ドル)の拠出金を得て、同地域での人道支援に当たっている。

 

参照:Digital cards improve food assistance to displaced families and Syrian refugees in Iraq – UN agency

ブータンが社会保障改革、6ヶ月の産休を公務員に認める

ブータン政府が社会保障制度を改革。公務員向けの新しい産休制度が施行された。ブータンの公務員は、母親が6ヶ月、父親が10日間の産休を取得できることとなった。

これまでは、それぞれ3ヶ月と5日間だったが、改善された。養子についても出産と同様に扱われ、産休取得の対象となる。産休中は基本給、住居手当、高地手当等が支払われる。

また、職場復帰後の母親は、子供が2歳になるまでの間、授乳のためにランチタイムを長く取得することが認められる。

こうした一連の制度改革は、国民の幸福度を追及する国家戦略の一環のようだ。

Africa Quest.com-アフリカに挑戦する日本人の為のニュースメディアを知っていますか?

AFRICA QUEST . COMとは?

Africa-Quest.comというサイトをご存知でしょうか?キャッチフレーズはズバリ、「アフリカに挑戦する日本人の為のニュースメディア」。

The Povertistで他のニュースメディアを紹介することはあまりないのですが、今日は名ばかり編集長のワガママということで、お許しください。「編集長コラムを私物化するな」と怒らないでください。また明日からは真面目に開発と貧困について書いていきますので。

さて、本題に戻ります。実は、Africa-Quest.comというメディアを数か月前から個人的にフォローしています。誰にも教えたくなかったのですが、私が秘密にしていても、これからどんどん大きくなっていくであろう開発分野のオンラインメディアだと思いますので、紹介しようと思うに至りました。

まず、サイトの趣旨を見ています。

アフリカに関するエンタメ情報やビジネスニュースを発信するニュースサイトです。実際にアフリカ滞在経験のあるライター陣が毎日、アフリカの”今”をおとどけています!「日本人の力でアフリカにソーシャルインパクトを起こす」をビジョンに、アフリカに挑戦する際に役立つ情報を(旅行、ビジネス、スポーツ、エンタメ)をお伝えします!

アフリカで活躍する人や滞在経験のある方が執筆しているだけあって、内容はタイムリーかつ、現場のリアリティに溢れています。アフリカ好きによるアフリカを好きになってもらうためのメディア、というのが私の印象です。アフリカの仕事をしていた私にとっても、日本語で「アフリカの今」に触れることができるのはうれしいものです。

そして何よりも、その更新頻度が凄まじいものがあります。10人を超えるライターが、一ヶ月に60本の記事をあげており、まさしくメディアという肩書がふさわしいサイトとなっています。

今最も勢いのある開発途上国を扱うメディアです。今後も目が離せません。

 

開発途上国を扱うメディアが増えています

Africa Quest . com、トジョウエンジンアセナビGanasなど、私も読者として楽しませて頂いています。開発途上国を扱うメディアが増えていることはとても良い流れだと感じています。

開発途上国に関心を持つ人が増えること。そして、そうした方々が実際に足を運んで、現地の人と会い、言葉が通じなくとも同じ時間を共有することで新しい価値観に触れることができます。

そういった過程を経て、相互の理解が進み、助け合う関係が気付けるのだと思います。このサイクルを少し後押しするのが、こうしたメディアの役割であり、目指すところなのかと感じています。

The Povertistは、そこからもう一歩進みたい方を後押しします。「開発途上国の国造り」に携わっているライターが、自らの経験と専門分野を生かした記事を書くことで、「途上国への関心」から「途上国の国造りへの関心」へ橋渡しをしたいと思っています。

書くことに関心のある実務家の方からのご連絡をお待ちしています。また、読者の皆様におかれては、引き続きよろしくお願いします。

 

※Africa quest.comの「中の人」にThe Povertistをご紹介いただきました。ありがとうございました。

中央アジアの社会保障と子供の貧困に関する報告書をユニセフが発表

「効果的な社会保障制度に注力することで、経済・社会から取り残された子供たちが受益する」

UNICEFは中央アジア・コーカサス・東欧地域の30カ国を対象に、社会保障が子供の貧困に与えるインパクトについて調査研究を行った。報告書では、貧しい子供たちが抱える経済・社会的課題を分析し、社会政策がどのような役割を果たすことができるか(果たしているか)についてまとめている。

ここで言う社会保障(Social Protection)は、現金給付、保健・教育アクセスのための補助金、カウンセリング、ソーシャル・ワーク、育児休暇を対象としている。

報告書によれば、20年前の状況と比べ、相対的に子供を取り巻く環境に改善は見られるものの、社会保障の保護対象となるべき家庭・子供の多くが未だに取り残されているようだ。

こうした状況を受けユニセフは、子供の貧困の観点から社会保障制度改革に関する政策提言を行っている。

 

参照:Invest in better social protection for the most disadvantaged children

ルワンダの社会保障制度が貧困削減に貢献

国連食糧農業機関(FAO)の調査報告書によれば、ルワンダの社会保障イニシアティブ(Vision 2020 Umurenge Programme: VUP)が貧困と貧困に陥るリスク(脆弱性)の軽減に貢献している。

VUPはルワンダ政府が年間約210億円を投じるのフラッグシッププログラムで、公共事業、現金給付、金融へのアクセス、他の社会サービスを包括的に提供するもの。

受益者の多くは、VUPによって生活水準が改善されたと実感しているようで、国家経済の底上げに貢献することが期待される。

今後の課題は、貧困の罠から脱却した人々が、経済的に自立し、経済構造転換の大きな流れに貢献していくことができるかにありそうだ。

 

参照:Rwanda: Strengthen Social Protection Schemes – All Africa

農村部の賃金増がインドの貧困を削減

2005年から2012年にかけて、インドでは急速に貧困指標の改善が見られた。

世界銀行が行った分析によれば、労働収入の急増が大きな要因のようだ。特に農村部の単純労働者の賃金増加と収入源の多様化による貢献が大きい。送金や社会保障制度も要因の一つと見られるが、調査対象機関における主たる要因ではなかったようだ。

一方、劇的な貧困の改善にもかかわらず、特定のグループでは、生活水準の改善が見られなかった。また、貧困削減は進んだものの、貧困に陥るリスクを抱える人々(脆弱層)の割合には変化は無かった。

今後の課題は、絶対的貧困の削減だけではなく、貧困状態を脱却した人々が再び貧困へ陥るリスクをどう軽減するかにかかっているようだ。

 

参照:Salazar et al. (2016) Why did poverty decline in India? a nonparametric decomposition exercise.