携わっている仕事について書きます。

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受給要件は年齢のみ!ザンジバル、東アフリカで初めて全ての高齢者に老齢年金を給付へ!

ヨルダンで貧困削減・社会保障戦略を見直し、政府方針

ヨルダン政府が貧困削減と社会保障政策に関する国家戦略の見直しを実施する[1]。これはイマード・ファーフーリー計画・国際協力大臣[2]が明かしたもので、新戦略は2017年末までに策定される見込み。

新たな国家戦略では、社会保障が貧困削減と生計向上にとって不可欠な国家政策として位置づけられる。

通常の社会経済的な要素や人口動態に加えて、シリア難民の流入による貧困や社会保障システムへの影響が顕在化したことから、今回の見直しに至ったようだ。


[1] The Jordan Times. 2017. Steering committee to update anti-poverty, social protection strategy.
[2] Imad Fakhoury, Minister of Planning and International Cooperation

インドネシアが貧困削減へ条件付現金給付、社会保障拡充

インドネシアが貧困撲滅へ向けて社会扶助(Social Assistance)プログラム[1]の拡充に取り組む。世界銀行から200百万ドルを借り入れ、同国の貧困層向け社会保障給付プログラム(PKH)の拡充へ追加資金を投入する[2]

同スキームは条件付現金給付(Conditional Cash Transfers: CCT)[3]であり、貧困層に受給者を絞り、教育・保健サービスへのアクセスを条件に給付を行うもの。

2016年9月時点でのインドネシアにおける貧困率は10.7%(2,776万人)。貧困線は一人当たりRp361,990(約27ドル)。2015年の実績は350万世帯。2017年に600万世帯へ、2020年までに1,000万世帯(全人口の15%)をカバレッジを拡大する計画。

インドネシア政府は今後5年間で、5,500百万ドル(約6,000億円)を同プログラムへ予算措置する見込みで、PKHはブラジルに次ぐ世界第二位の規模のCCTプログラムとなる見込み[4]


[1] 敦賀一平. 2016. 社会扶助(Social Assistance).
[2] World Bank. 2017. World bank approves financing to expand Indonesia’s social assistance program.
[3] 敦賀一平. 2016. 条件付き現金給付(Conditional Cash Transfers: CCT).
[4] Jakarta Globe. 2017. World bank lends $200m to expand Indonesia’s social assistance programs.

アフリカで続く世界銀行の現金給付!ブルンジの貧困層をターゲットにした社会保障に追加支援!

仕事の仕方の違い-国連改革の本質は、個人の意識改革?

国際労働機関(ILO)で多国籍の環境で政策文書などを書く作業を仕事としていると、世の中にはこれほどまでに違う仕事の仕方があるのかと驚くことが多い。今日はその一例を紹介したい。 さらに読む

ミャンマーが老齢年金を開始、90歳以上へ社会保障拡充

ミャンマー政府が老齢年金の運用を4月から開始した。2014年12月、ミャンマー政府は国家社会保障戦略[1]を策定した。これは社会福祉・救済再復興省が中心となって作成したもので、8つの社会保障プログラム[2]が含まれる。公的年金はそのうちの一つで、2024年までにカバレッジを380万人(事業規模は対GDP比1.16%)[3]へ増加させる計画だ。

今回実施される老齢年金(National Universal Social Pension Scheme)は、90歳以上の全ての老人を対象に毎月10,000ミャンマーチャット(約800円)の給付を行うもの[4]。ミャンマー第二の都市マンダレーでは4月下旬の時点で4,600人が申請し、行政側で受給資格の確認作業が行われている[5]。老齢年金の申請にあたっては、国民登録証の提出と世帯構成の証明が必要。年金の支払いは3か月に1度実施されることから、最初の支払いは6月となる。

今回のスキームの最大の特徴は、所得水準による受給者選定を行わないことと、税財源を原資とする点である。政治への信頼が薄く、かつ、年金の概念を持たない開発途上国の人々にとって、長期的に保険料を納めることは極めて難しい。したがって、今回のケースのように税財源を原資とする老齢年金スキームから導入を開始することは一般的である。

また、現時点では90歳以上を対象とすることで、受給者を絞っている。今後、スキームの運用と国の発展に伴い、受給開始年齢を引き下げていくことが期待される。なお、ミャンマー政府は老齢年金のパイロット事業を繰り返し実施してきたが、今回は初めてのフルスケールでの実施となる。


[1] 敦賀一平. 2017. 国家社会保障戦略計画(NSPSP)の策定.
[2] 敦賀一平. 2017. 8つの社会保障フラッグシッププログラム.
[3] 敦賀一平. 2017. 公的年金(Social Pensions).
[4] HelpAge. 2017. Myanmar’s national forum on universal social pension held in Pyidaungsu Hluttaw.
[5] Myanmar Times. 2017. Social pensions for the elderly in Mandalay.

国際労働機関(ILO)本部の業務時間

国際労働機関(ILO)本部の業務時間は、9時30分~16時30分。昼休みは11時30分~14時の間で1時間半休んでよいことになっている。ただし、1週間の労働時間は40時間となっている。つまり、「9時30分~16時30分はオフィスにいてくださいね」となっていて、早朝に出勤しようが、遅く退社しようが、個人の裁量に任されているわけである。もちろん、タイムカードなんてものはなく、上司が部下の勤務時間を把握すらしていない。そういう文化なのである。 さらに読む

ブルンジの貧困層へ社会保障、アフリカで続く世界銀行の現金給付

世界銀行がブルンジの貧困削減戦略を支援

アフリカの小国ブルンジの貧困削減へ世界銀行が40百万ドル(約45億円)を追加投入する[1]。この事業は、最貧困層にターゲットを絞って現金給付を実施する社会扶助(Social Assistance)[2]。世界銀行が推進するソーシャル・セーフティ・ネット(Social Safety Nets: SSN)の枠組みで実施される社会保障スキームの一つ[3]

パイロット地区に居住する4.8万世帯が毎月20,000ブルンジフラン(約1,300円)を受給する[4]。対象世帯の女性が実際の受給者となり、給付期間は30ヶ月。

事業の目的は、絶対的貧困状態にある世帯のうち、子育てを実施している世帯へ定期的に現金給付を実施すること。また、今回のパイロット事業を通じて社会保障給付メカニズムの強化も目指す。

事業のコンポーネントは主に3つある。

  1. メランカバンディ(Merankabandi)現金給付プログラムの設計と実施。現金給付の実施と、人的資本への行動変容を促すことが主目的。
  2. 給付メカニズムの構築。登録データベースおよび受益者情報の管理情報システム(MIS)の試行。モニタリング評価の実施。国家社会保障戦略(NSPS)の実施へ向けた能力強化と分析。
  3. 人権社会問題ジェンダー省(MDPHASG)傘下の実施機関に対する案件管理支援。

限定的な社会保障カバレッジとアプローチの非効率性

受益者選定(ターゲティング)について触れておきたい。世界銀行が実施する他の現金給付プログラムと同様に、この事業でも受益者選定には複数のターゲティング手法を併用される見込み[5]。具体的には地域を選定する手法(Geographical Targeting)、コミュニティが受益者選定する手法(Community-based Targeting)、年齢等のカテゴリーで選定する手法(Categorical Targeting)、プロキシ・ミーンズ・テスト(Proxy-Means Test: PMT)。

これらのターゲティング手法の中で世界銀行が推進しているのがPMTである。しかし、最近ではPMTの非効率性についてはエビデンスが少しずつ揃いつつある。PMTは経済水準が低い貧困層をターゲティングするための手法。理論的には、貧しい人へターゲットを絞ることで限られた予算で貧困削減効果を最大化することができる。しかし、過去に行われたPMTを用いた現金給付プログラムをレビューしたいくつかの論文では、貧しいにもかかわらず受益していない人々の割合が極めて高いことが指摘されている(Exclusion Error)。また、貧困世帯か否かは机上の計算で行われるため、住民にとっては受益者選定プロセスがわかりにくく、「クジ引きと同じ感覚」と揶揄されることもある[6]

このような論調でPMTの非効率性[7]を指摘しているのは、全ての人が受益する社会保障システムの構築を推進する国際労働機関(ILO)だけでなく、世界銀行自らの研究成果でも指摘され始めている[8]。それにもかかわらずPMTが採用されている点は疑問が残る。世界銀行の内部で実務と研究が直結していないことの表れなのかもしれない。

社会保障システムの基礎造り

今回のパイロット事業で注目したいのは、社会保障システムへの登録や情報管理システムの構築が支援されることである。現金給付の短期的な貧困削減インパクトよりも、中長期的な社会保障システム構築へ向けた政府機関の実施能力強化が最大の利益だろう。

アフリカで社会保障システム構築に巨額の支援を実施している世界銀行。これらの投資が中長期的なシステム構築にどのように活用されていくのか。今後の展開に注目したい。


[1] World Bank. 2016. Burundi – Social safety nets project (Merankabandi).
[2] 敦賀一平. 2016. 社会扶助(Social Assistance).
[3] 敦賀一平. 2016. ソーシャル・セーフティ・ネット(Social Safety Net).
[4] East African Monitor. 2017. Burundi: IDA provides USD40 million for poorest households.
[5] 敦賀一平. 2016. 現金給付(Cash Transfers).
[6] Stephen Kidd et al. 2017. Exclusion by design: An assessment of the effectiveness of the proxy means test poverty targeting mechanism.
[7] 行政能力不足で計画通りにターゲティングできないことが多く、それにもかかわらず高い行政コストが発生すること。また、多額の予算を投じるにもかかわらず、PMTは少人数のみをターゲットとすることを目的としており、カバレッジが極めて限定的であることも批判される点。
[8] Caitlin Brown et al. 2016. A poor means test?: Econometric targeting in Africa.

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