携わっている仕事について書きます。

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インド政府がベーシックインカム導入に関心、財源に課題

インド政府が貧困削減対策として、ユニバーサルベーシックインカム(UBI)に関するプロポーザルに関心を示している。このプロポーザルは、インド政府の主席経済顧問が実施した経済調査によって提言されたもの。

同報告書は、年間一人当たり7,620ルピー(約113ドル)のベーシックインカムを給付を実施することで、ほぼ全ての貧困層を貧困ライン(893ルピー)より上の所得水準へ引き上げることができるとしている。コストに関しては、人口の75%をカバーすることを想定した場合、GDPの4.9%程度の支出で運用できるとしている。

インドでは中間層や低所得者層を対象とした社会保障プログラムが複数存在しているが、事業の実施過程に課題があるとされる。ターゲットとなるべき対象世帯へ正しく給付できていないことや、汚職の蔓延などがあげられる。

また、インドではベーシックインカムに関するパイロット事業のインパクト評価が過去に行われており、貧困削減に一定の効果があったとされる。

インドでベーシックインカムを議論する場合、財源が大きな課題となる。「13億人へベーシックインカムを給付することが難しいのであれば、上記のように75%へ給付すればよい」という意見も聞こえてきそうだ。しかし、それでは現行の貧困層を対象とした給付プログラムと同様に、ターゲティングの制度設計や実施体制を整備しなければならず、ベーシックインカム最大のメリット(行政コストの削減)を実現できない。

現状で3億人が貧困世帯とされている中、全ての人々へ同額を給付することがどれほど効果的なのか。検討は始まったばかりだ。

政府関係者はベーシックインカムの制度化に関する具体的な議論は無いことを強調し、あくまで可能性の一つとして議題になっていることを示唆した。

パキスタンのポリオ撲滅へドナー会合、JICAも出席

2月9日にパキスタンの首都イスラマバードで開催されたドナー会合に、国際機関や二国間援助機関の関係者が出席。「ポリオ撲滅へ向けた支援継続で一致」と、地元紙『The News International』が報じた。

具体的な支援金額やファイナンス方法については報道されていないことから、全体方針の確認に留まったものとみられる。

一般的にポリオ対策は、一定期間に集中的にリソースを投入し、一気に撲滅することが有効とされている。

日本の支援状況については、国際協力機構(JICA)が「ポリオ撲滅事業」に関する円借款供与を2011年(49億9,300万円)と2016年(62億9,000万円)に実施している。これはゲイツ財団との連携案件で、前者については一定の事業成果があったことからゲイツ財団から返済が決定済み。後者については今後成果の確認を経て、同様に返済手続きが進むとみられる。

会合では今後の日本政府の支援方針については触れられていないが、日本からも政府およびJICAの代表がそれぞれ出席したと報じられている。


参考資料

フィリピン産休制度改革、100日間へ改善

産休制度改革が議論されていたフィリピンで、産前産後休暇を100日間へ延長する法案が上院議会で可決され、下院での審議が始まった。

現行法では、政府機関は60日間、民間企業は60~78日間の産休を認めなければならない。一方、この水準は国際労働機関(ILO)が求める98日間(14週間)には満たないこともあり、同法案が提出されていた(ILO母性保護条約第183号)。

フィリピンは同条約を批准していないため国内法の改正義務は無いが、国内で活躍する女性が多いことも後押しし、制度改革に着手していた。


参考資料

アフリカ・アジア・中東の食糧・栄養分野でWFPへ97億円拠出、日本政府

日本政府は世界食糧計画(WFP)の人道支援活動へ85.2百万ドル(約97億円)を拠出し、アフリカ・アジア・中東の33ヶ国で食糧・栄養分野の支援を実施する。

緊急性が必要とされる人道支援と、中長期の開発援助の連携が重要とされる昨今、WFPはJICAなどの開発援助機関との継ぎ目のない支援の実施を約束している。

拠出金の内訳は以下の通り。

  • イエメン(1,300万ドル)
  • イラク(710万ドル)
  • ヨルダン(600万ドル)
  • ニジェール(510万ドル)
  • 南スーダン(410万ドル)
  • トルコ(400万ドル)
  • アフガニスタン(320万ドル)
  • モーリタニア(290万ドル)
  • ソマリア(290万ドル)
  • ウガンダ(290万ドル)
  • マラウイ(260万ドル)
  • 中央アフリカ共和国(220万ドル)
  • コンゴ民主共和国(220万ドル)
  • ギニア(220万ドル)
  • エチオピア(220万ドル)
  • ケニア(220万ドル)
  • レバノン(200万ドル)
  • ブルンジ(150万ドル)
  • カメルーン(150万ドル)
  • チャド(150万ドル)
  • シエラレオネ(150万ドル)
  • ジンバブエ(150万ドル)
  • ルワンダ(150万ドル)
  • レソト(120万ドル)
  • ジブチ(110万ドル)
  • ブルキナファソ(100万ドル)
  • スーダン(100万ドル)
  • シリア(100万ドル)
  • ナイジェリア(100万ドル)
  • スワジランド(100万ドル)
  • コンゴ共和国(90万ドル)
  • リビア(70万ドル)
  • エジプト(50万ドル)

参照:Japan’s US$85 Million Donation Helps Feed Millions Of Hungry People In 33 Countries

IMFがアフリカ諸国へ債務削減を要請、補助金削減と増税

国際通貨基金(IMF)がアフリカ諸国に対して財政赤字削減を要求している。これは特にアフリカの資源国に向けられた要請であり、資源価格の下落とともにマクロ経済状況が悪化していることが背景にある。歳入が減る状況を補助金の削減と増税で迎え撃つべしという、IMFらしい要求である。

アフリカでは過去10年の経済成長率は5%あったが、直近の経済見通しは0.5-1.4%。資源価格の高騰によってアフリカの高い経済成長率を牽引してきた国々が足を引っ張っている。アフリカ経済のトップランナーであったナイジェリアは20年ぶりに景気後退期(Recession)に入った。

IMFはどう見ているのか。アフリカ専門メディア「AfricaNews」がIMFアフリカ局長の談話を引用しているので紹介したい。

「ナイジェリアに関しては財政赤字削減は積みあがっておらず、効果的な政策パッケージを示すことができれば、財政支援を受けることは可能だ。一方、銅価格の下落が直撃を受けているザンビアに関しては、石油補助金を削減することで歳出を抑え、その代わりに社会保障プログラムを拡充することを勧める。」

アフリカ諸国には今、IMFが緊縮財政を要求するときの教科書通りの要求がなされている。


参照:IMF urges African states to cut deficits as growth grinds lower (AfricaNews)

AIIBと世界銀行がアゼルバイジャンのガスパイプラインへ巨額融資を決定

アジアインフラ投資銀行はアゼルバイジャンとヨーロッパを結ぶガスパイプライン(Trans-Anatolian gas pipeline: TANAP)の敷設へ、世界銀行と協調融資を実施する。

同案件は、AIIBが600百万ドル、世界銀行が800百万ドルを融資する大型案件で、パイプラインは全長1,850kmに及ぶ。

これによって、アゼルバイジャンで生産された天然ガスは、トルコ、ギリシャ、アルバニア、イタリアを通ってヨーロッパへ供給されることとなる。

AIIBに関しては日本やアメリカが賛同していない一方、ヨーロッパ諸国や開発途上国は歓迎ムードである。

特に、中央アジア諸国では中国やAIIBによるインフラ整備支援を期待する風潮も強い。


参照:AIIB and World Bank lend big to TANAP project (Global Trade Review)

AIIBと世界銀行がタルベラダム拡充へ協調融資、パキスタン

パキスタンのタルベラダム(Tarbela)の機能拡充へ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行が協調融資で合意した。AIIBが300百万ドル、世界銀行が390万ドルを融資する大型プロジェクト。

同案件では、タルベラ水力発電所へ3つの発電ユニットを追加することで発電量を増大させることが目的。

一部の日本のメディアは、AIIBが発足初年度に9件しか融資していないことを揶揄しているが、順調に協調融資を重ねているように見える。

JICA予算は1.4兆円、約80%が円借款へ

国際協力機構(JICA)の2017年度予算規模は、1.4兆円となるようだ。内訳は有償資金協力1.3兆円(80%)、技術協力0.15兆円(10%)、無償資金協力0.16兆円(10%)。

開発途上国への貸し付けである有償資金協力(円借款)が前年度比+20.9%となり、JICA予算の全体でも80%を占めた。

日本の財政が厳しいことから、ODAに占める無償供与分(技術協力・無償資金協力)が減り、円借款への移行が鮮明となった。

これは日本だけでなく全ての先進国ドナーに共通していることで、伝統的なドナー諸国が無償で資金供与できる余裕がなくなってきている。

こうした先進国の動きは、資金面で余裕のある中国などの新興ドナーや民間ファンド(ゲイツ財団等)の影響力の増大にもつながっている。


参照:平成29年度のJICA事業規模について

タンザニアの社会保障は障害者のニーズに合っていない?

タンザニアの社会保障制度は障害者(People with Disabilities: PwD)のニーズを満たしていないかもしれない。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の研究チームが発表した研究成果によれば、タンザニアの障害者は社会保障の高いニーズを示しているにもかかわらず、社会保障プログラムへの参加率は低い。

その要因としては、障害者に特化したターゲティング(受益者選定)がなされていないこと、ベネフィットパッケージ(現金・物資支給等)が障害者のニーズに合っていないことなどが、あげられている。

LSHTMの同研究チームは、開発途上国における社会保障と障害をテーマに研究を行っている影響力のあるチーム。

社会保障システムの構築と障害と開発が持続可能な開発計画(SDGs)の重要トピックの一つとなっている中、フレキシブルな社会保障システムの構築・運用が求められている。


参照:Kuper et al. 2016. Social protection for people with disabilities in Tanzania: a mixed methods study.