ジェンダー平等と女性のエンパワーメントへの挑戦
ジェンダー平等はスローガンで終わってよいのか?どのように実現するか?具体的に考えて行動に移すことが重要ではないか?このような当たり前のことに、世界のリーダーが気付かされた一幕があった。
持続可能な開発サミット-ジェンダー平等に拍手喝采
9月25日、持続可能な開発サミット(Sustainable Development Summit)の初日。持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、興奮冷めやらぬ中行われた討論会だ。『Tackling inequalities, empowering women and girls and leaving no one behind – Interactive Dialogue 2』と題して開催されたこの会議は、先進国、開発途上国、国際機関、市民団体、民間企業のリーダーが、「SDGsでジェンダー平等について、いかに取り組むべきか」議論を交わす場となった。
まず、共同議長を務めた、ケニヤッタ大統領(ケニア)が3つの質問を投げかける。
- 女性と若年層に対する不平等の問題にいかに取り組むべきか。
- 女性と若年層に対する暴力へいかに対処すべきか。
- 女性と若年層の金融へのアクセスと平等な社会の実現には何が不可欠か。
もちろん、ジェンダー平等に対してネガティブな意見を述べる者は少なく、たびたび拍手が沸き起こる一方的な展開となった。各国のアプローチについても言及され、「政策レベルで何を行っていくつもりなのか」を宣言する会合となった。
例えば、ダビド・グンロイグソン首相(アイスランド)は、重要な視点として3つの政策的アプローチを挙げた。所得格差、政策決定プロセスへの女性の参画、ジェンダー平等に対する男性による後押し。これらへの取り組みが重要であり、ジェンダー平等の達成の必要条件との意見だ。
ジェンダー平等は必要でしょうか?-水を差したレソト首相
ところが、会議の中盤に雰囲気が一変した。
ムランボ-ヌクカ事務局長(国連女性機関:UNWOMEN)が「国連女性機関はジェンダー平等に精一杯取り組んでいく」と力説した直後、それは起こった。
拍手喝采が納まりきらない中、モシシリ首相(レソト)の演説が静寂を生んだ。見事に水をさした強烈なメッセージに議場は静まり返った。
「皆さん、何か忘れてはいないでしょうか。人々に働きかけることの大切さです。私の国では高等教育では、女性のほうが男性よりも多く学んでいます。ジェンダー平等は必要でしょうか。」
ジェンダー平等言うが易し-具体案を示せ、村を見ろ
手元に原稿はない。自分の言葉で語りかける彼の言葉は、一言一言に重みを感じる。そして彼は続ける。
「私は先日70歳になった年寄りです。私の村では、女性を叩きのめすことすら出来ない男性は、真の男として認められません。そういった風習がまだ残っています。これが現実です。政策を作ることは簡単でしょう。法案を議会に提出して、可決することも簡単でしょう。ジェンダー平等に反対する人などいません。しかし、村で起こっている現実に取り組むことなしに、私たちは何も解決できないのです。皆さんが言うほど村の問題を解決するのは簡単ではありません。これを踏まえて、私は公的教育からジェンダー平等へ向けた改善を始めることを提案します。」
キーワードはやはり、「Implementation(実施)」だ。ジェンダー平等の議論はいつもきれいごとを並べるだけで終わってしまう。具体的に何をするのか、誰も語らないことが多い。
誰がどのように何をすることで、ジェンダー平等が達成できるのか。実務家に課せられた挑戦は大きい。
※各人の発言内容は翻訳ではなく、雰囲気を踏まえた意訳。参照する際は録画で確認頂きたい。