国際協力を生業としていますが、仕事以外の部分を書いていきたいと思います。国際協力仕事人はどのような私生活を送っているのか。何を考え、キャリアを選択しているのか。様々な角度からコラムを書くことで、国際協力がより身近になればと考えています。

政策支援で期待される成果と資金繰りへの影響

資金繰りの問題で言うと、人道支援のように黙っていても人道危機が起き、資金提供者から声がかかることは、私の分野ではありえない。社会保障や政策支援は、納税者や消費者には成果の見えにくい分野であり、人道援助に比べると資金調達が難しい。ILOの中でも、ほとんど資金がつかないところだ。そういう状況でどのように事業経営をしていくかといえば、まず目立たなければならない。目立った上でしっかり実績を出す。目立つというのは日々の発信が大切であるということだ。

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組織に頼らず、個人の力で仕事をすること

個人名で仕事することが、ILOでは特に重要な価値観である。2024年11月にアジア15カ国の代表をジャカルタに招待し、専門家会合を主催した。雇用保険や失業給付を実施している国は改善点を見つける機会とし、これから制度設計をはじめる国には学びの機会として企画した。BPJS-TK本部の会議場を借りて実施した。

こうした会議を主催したり、会議で発表すると、名前と実績を覚えてもらえるメリットがある。実際、これまでに多くの連絡をいただいている。北京に駐在するILOの同僚からは、発表資料を使わせてほしいと相談され、カンボジア政府やバングラデシュ政府からは個別に政策支援を求められている。これから雇用保険制度や失業給付制度を作りたい国にとって、ゼロから制度を立ち上げた経験のある人材は貴重なのだろう。日本の雇用保険制度について詳しい人はたくさんいるだろうが、日本の雇用保険制度を立ち上げるための作業に携わった経験を持つ人は少ない。そういった意味で、インドネシアの雇用保険制度立ち上げに、外国人として携わった経験を持つ人材は私しかいない。フィルターを重ね合わせていけば、自分だけの専門性がおのずと見えてくる。それを売りにするのだ。

こうした専門家会合を主催すれば、それはある意味で万博のようなものだ。昨年11月に実施した会合は、私が何をやってきて、何をする能力を持っているのか、15カ国の代表団に示す場となった。もちろん、会議自体の目的はあったが、個人としての目的はそこにもあったし、念頭に置きながら企画をした。

現在、様々な国から支援要請の声をかけていただいている。これらの国からも資金をもらわずに無償で出張し、無償で政策提言するための準備をする。資金の調達方法を少し考えなければならないが、それぞれの国を支援する際に、現地のILO事務所が運営する事業から多少の給料を私に支払ってもらうように交渉するなど、可能性は広がる。

私のようにアジア地域で事業経営するILOの社会保障事業のマネージャーは、完全に独立採算制でやっている。アジア地域で雇用保険や失業給付をゼロから立ち上げた経験があるのは私だけだと思うので、声がかかる。これは非常にありがたいことで、声がかかる状況を作るために発信していかなければならない。

声がかかれば、当該国で事業運営にあたる同僚から給与1カ月分を支払ってもらい、私がそれに応じた仕事をする。そうすることで、私はインドネシア事務所にいながら、出稼ぎのような形で他国を支援することができ、各国にいる同僚も自分に専門性がない部分を補いながら支援を実行することができる。

そうすれば、インドネシアで私が抱えている事業も資金繰りが安定する。1つの資金ソースのみでキャッシュフローを賄っているわけではないという状況が作れるからだ。ここ5〜6年でやってきているのは、資金源の複線化だ。3-5つの事業を同時に管理し、資金調達と新規事業の立ち上げを毎年行えば、資金繰りが安定する。逆に、そのように現場レベルで事業経営していかなければ、一つの事業予算では自分の給料さえ支払うことができないほど、一つの事業規模は小さい。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

国際機関職員にとってソーシャルメディアは営業、広報、調達ツール

ILOは零細企業や個人事業主の集団であると、私は常々思っている。実際、組織対応ではなく、何でもかんでもすべて個人がやらねばならない場面があり、組織的にもそうするように言われている。

スタッフの採用やや業務委託先の調達に関して、ILOが組織としてサポートしてくれるかというと、全くサポートしてくれない。残念ながら、これは公式に言われていることで、「専門家や事業運営に必要な人材確保、業務委託での人材確保に関しては組織はサポートしないので、それぞれ個人で対応してください」と言われている。

他の国際機関であれば、ロスターという専門家プールを組織的に運営するが、ILOは個人に任せますと公式に言われている。そのため、LinkedInや英語のXで普段の業務や私の考えを頻繁に高頻度で発信することで、専門家のネットワークを個人レベルで作っている。広報兼調達のために大切なツールとなっているわけだ。

これにより実際に、この仕事なら私もできる可能性があるので、履歴書を送るから機会があったら声をかけてくださいという人から多数連絡をいただいている。これは非常にありがたいことで、まさにそれを狙ってLinkedInで発信してきた。

英語のXに関しては、インドネシア語で翻訳して日常的に発信している。これはインドネシア国内の有識者や研究機関の人々とやり取りするためである。こうすることで、有識者が政策対話をする場で声をかけてもらえることが増える。実際にソーシャルメディア経由で声をかけてもらったことも何度もある。先日も国連本部からの出張者が、私のLinkedInでの発信を見て、打ち合わせの申し込みをしてきた。まさに、営業である。日常的に無数の人々へ発信することで、その数パーセントの人々から声を掛けてもらい、それが仕事につながる。

ちなみに、インドネシアからはお金を貰わないようにしている。AI翻訳が発達したことによって、インドネシア語で政策について発信することが可能となった。Xでは日常的に政策について発言していて、インドネシア国内の有識者との交流の場となっている。こうした交流を通じて、インドネシア各地の大学で講義をする機会を頂くことも増えてきた。しかし、旅費や謝金の提供を申し出て頂くところも多いが、インドネシア国内からの依頼については無償で引き受けることとしている。こちらが旅費や人件費を支出していることを考えれば、依頼を受けて、こちらがむしろ経費を支出しているということで、民間の感覚では理解できないかもしれない。こうした講演の機会も事業成果として資金提供者へ説明し、インドネシア国外から資金獲得している。

こうした日常的に困難な資金繰りと経営環境に加え、国際機関のあり方を問う、アメリカの動きがある。国際機関は存在意義を問われていることを含め、難しい局面に来ていると思う。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

国際機関の資金繰りが厳しい今、ILOの現場における事業運営はいかに?

私個人の状況について述べると、幸いなことに、アメリカの影響が薄い、現場のプロジェクトマネージャー兼責任者という立場にある。社会保障分野でインドネシアを担当する場合、私が全責任を負う形になる。もちろん上司である所長などが存在するが、日常的には誰かからの指示を受けてインドネシアに社会保障のアドバイスをするのではなく、どのような助言をするか、労働法改正でどのような提言をするかは私個人の判断で行っている。

このような現場責任者が多数存在し、それぞれが独立採算制で事業運営を行っている。ILOでは、各自が企業内で起業し、零細企業を運営している感覚に近い。そのため、アメリカ政府から資金を受けている事業運営者とそのスタッフは影響を受けるが、アメリカ政府からの資金が入っていない事業については何の影響もなく継続される。

私の場合、日本政府からの資金が大きな割合を占めており、給料もそこから相当部分が支出されている。さらに、ILO本部とニューヨークの国連本部から調達した資金もある。これらILOとニューヨーク国連本部からの資金は、企画書を提出してコンペティションに勝ち抜いて獲得するものだ。これら3つのプロジェクトが、私の事業資金のソースである。

日本政府からの資金は当然アメリカとは関係ないため影響を受けておらず、ニューヨーク本部とジュネーブILO本部からの資金も現在のところほとんど影響はない。論理的には、ILO本部と国連本部の予算にはアメリカの影響もあるため、多少の影響があるかもしれないが、現時点では特段影響は見られない。そのため、私個人はほとんど影響を受けることはない。

ILOの現場での仕事は、他の国際機関と比較して特殊である。組織として仕事をするというよりも、完全に個人の名前と個人の能力、個人のネットワークで運営している。現場の仕事は基本的にそうした性格を持つ。極端ではないが、現実的には資金繰りがうまくいかなければ、ILOとしてその国での仕事を完全に辞めることになる。それは私の責任にかかっており、他国で事業を行っている社会保障専門のプロジェクトマネージャーも同じ状況である。マネージャーが第三国から資金調達できなければ、ILOとしてその国での事業継続はできなくなる。

ILOとして事業継続できないだけでなく、プロジェクトマネージャーは自身の契約も自分で管理している。自分で資金調達を行い、自分の給料とスタッフの給料を支払った上で事業費を割り当て、何を実施するかという事業計画を決定していく。全てを担当するのだ。冗談に聞こえるかもしれないが、事務所家賃や光熱費も、ILOジャカルタ事務所から私宛に請求があり、年初に支払う。予算のないバンコクの同僚に、「光熱費をどうやって払ったらよいか」と相談を受けたこともある。

その結果、事業成果を説明する相手は、私たちのクライアントであるインドネシアやカンボジアといった国々ではなく、資金を提供してくれている第三者になる。私の場合は日本政府、ILO本部、ニューヨーク国連本部の3者に事業成果を説明しなければならない。クライアントが喜んでいても、この3者が納得しない限り追加予算や追加資金の振り込みはない。

クライアントがいかに喜んでいるかも重要だが、実際にその国の社会がどう変わったかが私のKPIである。私だけでなく、他の社会保障専門家も同様だ。社会保障分野で特に難しいのは、制度が変わらないとインパクトがないとみなされることである。

インドネシアの法令レベルで変化を起こさなければ私たちの存在意義がない。存在意義があるかないかは、資金提供者が評価することだ。インドネシア政府が感謝してくれることはありがたいが、それだけでは次に繋がらない。なるべく見える形で成果を資金提供者に説明していくことが非常に重要なプロセスである。ソーシャルメディアで私が活発に発信しているのも、この一環である。説明責任があり、何をやっているかを日常的に発信していくことは非常に重要だと考えている。

英語でLinkedInやXでの発信を強化している背景には、調達と営業の観点もある。事業経費の中から給与経費を割いてスタッフを雇うが、スタッフを抱えることは固定費増加を意味し、維持が困難になる。将来的に業務委託できるところは業務委託で回すという考え方をしないと事業運営していけない。特に資金繰りが非常に厳しいので、地方の零細企業とほとんど変わらない状況だ。

父ともよく話すが、零細企業を運営していた父の状況と、私のやっていることは感覚的にほとんど変わらないか、むしろ厳しい。資金繰りが1年先まで見通せないような状況で、10年近くこの仕事を続けている。非営利でやっているため、顧客に喜んでもらうだけでは収入に繋がらないという、民間に存在しないクリアしなければならない困難なレイヤーがもう1つ存在する。また、単年度予算であるため、第4四半期にならなければ翌年の見込みが立たず、痺れを切らしたスタッフはよりよい仕事を見つけて頻繁に離職する。私を含め、職員の契約も1年契約が最長なのだ。この状況で法令を変えるレベルの仕事をしなければ追加資金(売上)を獲得できないため、かなり不安定な事業運営にならざるを得ない。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

USAIDだけではない、国際機関へのアメリカの影響

TBSラジオの「週刊ワシントン」エピソード73「USAIDの解体」で、国際協力機構(JICA)田中所長がゲスト出演した内容に刺激を受け、国際機関の現場から見たアメリカ政府の対外援助政策変更の影響について考察したい。 さらに読む

インドネシアのドタキャン文化と、国際社会への適応

5月7日の会議運営が終わり、落ち着いたので、直前に起きた出来事を振り返ってみる。 さらに読む

インドネシア版ハローワークと朝のコーヒーを飲みながら、課題と解決方法を話し合う

インドネシアのジャカルタ南部にある労働市場センターを訪問した。この施設は日本のハローワークをモデルに構築されたもので、失業給付の支給、職業紹介、技能訓練が必要な求職者を適切な訓練機会へ繋ぐという、いわゆるワンストップサービスの役割を担っている。 さらに読む

新しい挑戦と新しい技術

毎年何か新しいことに挑戦することは大切だ。それによってできなかったことができるようになり、できることが増えれば、複利的にできることが増えていく。 さらに読む

Google NotebookLMを使ったポッドキャスト

先週公開されたGoogle NotebookLMの新機能を使って何かできないか、数日考えていた。

ChatGPT、Claude、Gemini、DeepSeekはあらかじめ学習した内容やインターネット検索で得た情報を元にタスクをこなす。一方、NotebookLMは与えた情報に基づいてタスクをこなす特徴がある。前者を不便だと感じるのは、情報源の信頼性が怪しいことや、知ったかぶりをして回答してくることが多々ある点だ。NotebookLMは与えた情報以外を参照しないという前提があるので、情報源の信頼性に関してはユーザーが信頼したものを投下すればよいわで、心配はいらない。そのため、学術論文を大量に読み込ませて論点整理したり、膨大な法令を読み込ませて、該当箇所を検索するには有用なツールとなっているようだ。

そんなNotebookLMが先週、日本語にも対応した音声機能を導入した。この機能を使えば与えた情報の内容をまとめ、二人の会話を通じて要約することができる。こうした新しい機能はほぼ毎週のように公開されていて、AI開発の早さについていくのは大変だ。そして、使わなければおいていかれるばかりで、追いつくことが難しくなる。そろばんが電卓となり、電卓がエクセルとなった時代と似ている。

会社の業務に使えるかどうかも、まずは触ってみなければわからない。そういうわけで、私が管理するコンテンツの充実にNotebookLMを使えないか考えてみた。たどり着いたのは、「敦賀書店」で公開している書評のポッドキャスト化である。書評と呼べるほどの代物ではないが、感想とハイライト箇所の蓄積が既にある。それらをNotebookLMに読み込ませ、以下のように指示を与える。

「URLにある本(著者略歴・登録情報参照)を読んだ感想です。これをベースにポッドキャストを作って欲しい。若い二人が、感想やポイントを共有し合うラジオ番組を作って欲しい。一般のリスナーにもわかりやすいように。なお、””で囲まれた部分は本の直接引用部分であり、それ以外の冒頭の部分は「店長(てんちょう)」の感想。ただ、ポッドキャストでは店長にすすめられた若い二人が読んだ設定でよろしく。また、冒頭のタイトルコールでは「こんにちは。つるがしょてんのポッドキャスト、はじまりました。」と言ってください。「『あなた』が共有したソースファイル」という立ち位置ではなく、「店長(てんちょう)に勧められた本を読んだ二人」という設定でよろしく。「あなた」ではなく、「店長(てんちょう)」と言ってください。また、「ソースファイル」ではなく、「店長のメモ」です。最後の締めで、「(著者名)「(書籍タイトル)」、ぜひ読んでみてください!」と言ってください。」

その結果、ものの5分で音声ファイルができあがる。NotebookLMから音声ファイルをダウンロードし、Spotifyへ手動でアップロード、予約投稿を入れる。次の展開としては、この手動作業に関しても自動化されるだろうし、音声も自分の声を指定することができるようになるだろう。

https://open.spotify.com/show/3dDP2eGe6A6Ed2keq4B9TD?si=f4228fb180674a22

SpotifyからYouTubeチャンネルへはRSSフィードで自動的にポッドキャスト配信ができる。その設定も行ったので、Spotifyで音源公開するだけでYouTubeのフォロワーの皆さんへも自動配信が完了する。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLwtzJLNYNVcpICdHgiy0hEqWUfgLPWHiJ

YouTubeに新規投稿された場合は、IFTTTを経由して自動的にX、Facebook、Threadsへ更新情報が投稿されるように設定している。日本語のコンテンツは日本語のアカウントへ、英語のコンテンツは英語のアカウントへ投稿されるようにしている。Threadsへはすべての言語の更新情報が届くようになっている。

現在の配信日時は以下のとおり。ただ、コンテンツ不足の場合には更新されない場合もある。そこは自然体で無理なく、楽しみながらやっていきたい。いずれにせよ、AIの登場によって、一人で色々なコンテンツを作ることができるようになってきた実感がある。どのAIとどういう仕事をするのがベストなのか。模索しながら最適な方法を考えていきたい。自分に向き不向きがあるように、AIにも向き不向きがある。自分の得手不得手と、AIの得手不得手がどこでかみ合うか。人間と仕事をするときと同じような試行錯誤が続く。現時点で言えることは、ようやく体制(AIとの分担)ができ、制作サイクルができてきたので、人間はコンテンツ制作に集中できるようになった。

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近視眼的なインドネシアの世論を動かすには?

最近、経済界、労働組合、政府とやりとりした中で、いくつか印象的なやり取りがあった。健康保険、労災保険、雇用保険、失業対策、経済政策、関税、年金政策、介護保険など、ここ最近はあらゆるテーマで三者会合に出席している。ありがたい悲鳴である。 さらに読む