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民主主義が崩壊したのではなく、間接民主制が時代遅れなのかもしれない

外交・国際開発援助の最前線に立っている身としては、安保関連法案に思うところは多々あります。ただ、今日は民主主義の在り方について考えてみます。

今回の混乱の最たる原因は、法案の中身よりも、民主主義の在り方の問題のような印象を受けます。

国政選挙を経て選ばれた議員が多数決で法案を可決することを民主主義と呼び、今回の法案可決を正当化する人。一方で、議論が尽くされていないと納得しない人。民主的と「信じられている」プロセスを経て可決した法案に納得を得られていない状況です。

私が感じたことは、「民主主義が終わっている」のではなく、古代から続いてきた「間接民主制が今の世の中に合わなくなった」のではないかということです。情報へのアクセスが非常に困難だった頃は、地方へ議員がやってきて、講演会や座談会で支持者たちへ直接報告することが主流だったのかもしれません。情報は伝聞で伝わっていきました。その後、新聞が現れ、遠くの人々へも数日内に情報が伝わるようになりました。テレビや電話の普及はさらに情報の伝達速度を加速化しました。そして、現代、インターネットを通じて、議員の生の声がホームページやLive中継で世界中どこでも同時に配信されるようになっています。

日本では、情報がネットやメディアから簡単に取れる世の中になったにもかかわらず、民主主義の在り方は見直されてきませんでした。問題の根源は、国政選挙で選んだ議員が、特定の個別法案について支持者の意思に反して代理投票を行うことだと思います。間接民主制ならではの問題です。

ならば、ネット投票による直接民主制を採用することでこのギャップを解消できないでしょうか。現代社会では、国政で何が起こっているのか、情報が瞬時に世界中へ伝達される状況があります。これによって法案一つ一つについて国民が賛否の意見を持つことができる状況が生まれています。

例えば、重要法案はネット投票で直接民主制し、ネットに不慣れで議員へ委任したい人は投票権を委任する仕組みにした方が良い気がします。

忙しくて投票へ行けない人や、私のように在外選挙人名簿登録に間に合わず投票権を得られない人も民主主義に参加できる環境ができるかもしれません。

ソマリア難民支援から難民問題とホストコミュニティの負担を考える

北アフリカや中東から多くの「難民」がヨーロッパへ渡っている。受入国との間ですでに軋轢が生じ、受け入れたいと思っている人々の思いとは裏腹に、受け入れ能力が限界に達している国も散見される。難民問題が専門ではないが、実際にソマリア難民支援を行った経験から感じた留意点を紹介したい。

東アフリカ大旱魃 (2011年)でソマリア難民がケニアへ

2011年、東アフリカは60年に一度の大干ばつに見舞われた。エチオピア、ケニア、ソマリアを含むアフリカの角と呼ばれる地域で、食糧不足によって1,200万人が影響を受けたとされる。特に、内戦の激しかったソマリアでは人口の半数の約400万人が影響を受け、多くの人々が難民として隣国へ歩いて渡った。

ケニア東部の小さな州ガリッサにダダブという小さな町がある。ケニア政府は人口1万5千人のこの町で、30万人以上のソマリア難民を受け入れている。私も2011年の緊急支援案策定のための調査で足を踏み入れたが、町らしい町を見ることはなかった。数少ない現地住民のほとんどが遊牧で生活し、町を形成せず、定住していない人々だった。

何もないダダブという地域に1990年代初頭、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民キャンプを開設して以来、ケニア政府はソマリア難民を受け入れ続けている。そして2011年当時で、難民キャンプは地元住民の人口の数十倍まで膨れ上がっていた。

こうした状況下で支援を検討する際に留意すべきことがある。

難民支援の3つのポイント-ホストコミュニティと難民の不公平

1. 難民は帰ることが前提

まず、大前提として難民は一時的に滞在しているだけであって、自国が平和になった段階で帰ってもらうということ。つまり、受入国は永住を前提として難民を受け入れていないということだ。報道によればケニア政府はその点を明確にしていたし、時として強硬策(難民キャンプの閉鎖)も辞さない構えを見せていた。

この前提が無ければ、単なる移民となり、人道的な観点で受け入れることが難しくなる。つまり、中長期的にこの人を受け入れて良いことがあるか、審査を厳格化する必要がある。一時的に受け入れるのであれば、人道的観点から受け入れやすい心情は理解しやすいだろう。

また、支援する側の立場を考えると、人道支援(Humanitarian Assistance)なのか、開発援助(Development Assistance)なのかで大きく意味合いが異なる。人道支援は人道的観点から今窮地に立たされている難民へ緊急物資の配布などを行うもの。開発援助は中長期的な地域開発をサポートするもの。

たとえば、難民キャンプへ住居の提供を要請されたとき、簡易なテントを配布するか、煉瓦造りの建物を作るか議論をしたことがあった。テントの場合、耐久性は3ヶ月だが安価。煉瓦造りの場合、高価だが数年使える。当然、費用対効果の観点からは煉瓦造りを選ぶのが妥当。しかし、煉瓦造りの建造物を造ると定住される恐れがあることから、受入国の抵抗感が感じられるケースがあった。

難民は平和になれば帰るべき人たちであって、定住するのであれば移民。先の例は、この前提を確認する良いケースかもしれない。

2. ホストコミュニティの負担軽減

難民も過酷な状況から逃れてきた人々だが、それを受け入れる人々、ホストコミュニティの負担も尋常ではない。自分たちの言葉も文化も常識も解さない人々が大量に地元に住み込む環境の変化、圧迫感は計り知れない。

支援を検討する際も、ケニア政府へ最大限配慮する必要がある。たとえば、難民キャンプを訪問した際にキャンプ側からは学校の設備(机・椅子)の供与を求められた。

国際協力機構(JICA)はケニア政府を通じてあくまで、ケニアへ支援を行う。そのため、ケニア政府がYesと言わない限りケニア国内で支援を展開できない。当然ケニア政府は自国民に利益がなければYesとは言わない。この点、難民だけを考えて支援を行うことができる団体とは事情が異なるかもしれない。

話を戻す。結論として、ホストコミュニティの小学校へも平等に学校設備を供与することでバランスをとった。JICAのプロジェクト概要「ソマリア難民キャンプホストコミュニティの水・衛生改善プロジェクト」をご覧いただければ、成果5が追加されていることがわかるだろう。

3. 寄付金は難民に集まり、ホストコミュニティには集まらない

こうした緊急事態の際、世界の目は難民へと向く。ホストコミュニティもケニアの中では最貧地域であったにもかかわらず、世界は彼らへ目を向けない。当然、寄付金は国際機関やNGOを通じて難民支援へ多く集まり、ホストコミュニティは蚊帳の外だ。その結果、難民キャンプは発展し、ホストコミュニティは相変わらず何の変化もないままという状況が生まれる。

ダダブでも同様の状況があった。国際機関やNGOを通じて多くの支援が世界から届いている一方、ホストコミュニティは完全に蚊帳の外だった。

こうした事情を踏まえ、国際協力機構(JICA)はホストコミュニティの支援に特化して同地域を支援しており、本来もっと評価されるべきだと思う。しかし、ホストコミュニティ支援は難民支援に比べて地味であり、報道受けもしない。寄付金や予算が得られにくいこうした地味な支援は、国際機関やNGOができない分野であり、JICAのような二国間援助機関(バイラテラルドナー)だからこそできる分野かもしれない。

教訓-今回のヨーロッパへの「難民」問題と異なる点

難民なのか?という議論が近頃報道されている。上述したように、母国が平和になった際に帰国することを前提としているかどうかで、受入国の心情・負担は大きく変わる。今回のヨーロッパへの「難民」が市民権を得て半永久的に帰国しないとなれば、ご紹介したソマリア難民支援の事情とは相当状況が異なる。

いずれにせよ、受入国のホストコミュニティの立場からすれば難民ばかりに注目や支援が集まる状況は受け入れがたく、地元住民との軋轢をいかに回避するかが今後の課題だろう。

参考(当時の担当案件のニュースリリースなど)

Author: The Povertistの編集長。アジアやアフリカでの開発援助業務に従事する貧困問題のスペシャリスト。貧困分析や社会政策を専門とし、書籍・論文も執筆。

社会保障が開発途上国の貧困撲滅に不可欠-政治経済の4つのポイント

中所得国では自力で貧困から抜け出すことのできる全ての貧困層が貧困から脱出し、貧困状態に残された人々が社会政策を必要とするだろう(Raj M. Desai 2015)。2030年の貧困撲滅へのアプローチを考えるとき、経済成長を促す政策だけで全てが解決すると考える人々が現れるだろう。そのとき、この一文を突き付けてほしい。今回はブルッキングス研究所ラジ・デサイ研究員の見解を簡単に紹介する。

中所得国では「経済成長=貧困削減」はウソ

最近出版された 『ラストマイル(The Last Mile in Ending Extreme Poverty)』でデサイは「社会政策と絶対的貧困の撲滅(Social Policy and the Elimination of Extreme Poverty)」と題する論文を寄稿した。彼によれば、社会政策は貧困撲滅へ重要な役割を果たす。そして、開発途上国で社会政策を拡充するためには政治経済がカギとなる。

 

1990年から2010までに、開発途上国の貧困率は22%まで半減し、主な要因は労働収入の改善だった。しかし、これは過去の出来事に過ぎず、今世紀の国際開発には参考にならないかもしれない。労働所得が消費水準の改善に与える影響は、中所得国ではかなり小さくなるといった研究がある。これは容易に貧困から「卒業」できる人々が貧困から抜け出し、自力の無い最貧層が脆弱なまま社会の底辺に取り残されることが原因と考えられる。

たとえそれが正しいとしても、適切な社会政策と成長を組み合わせれば絶対的貧困の撲滅は技術的に可能だと、デサイは主張する。しかし、政治経済が重要な課題として立ちはだかるだろう。対象世帯を厳格にターゲティングする社会保障システムは、非貧困層からの支持を受けることはできない。これは社会保障の拡充の大きな阻害要因となる。一方、国民すべてが裨益する社会保障システムは、非貧困層からの支持を受け、持続的に機能していくだろう。

貧困撲滅と社会保障の4つのポイント

デサイは社会保障が貧困撲滅へ重要な役割を果たすとしたうえで、4つのポイント挙げている。

1. 包摂的成長(Inclusive Growth)

所得向上と不平等の改善をバランスよく達成することが、貧困削減には効果的。貧困率が15%以上であれば、労働所得の向上が貧困削減には効果的であり、15%以下の場合は社会保障が重要な役割を果たすとする研究がある。

2. 社会保障システムの構築(Institution Development)

社会保障システムの構築プロセスは、20世紀以前の福祉国家と現在の低中所得国とでは異っている。たとえそれらの国が同じ経済水準であったもだ。現代の低中所得国の社会保障システム構築はゆったりとしたものにならざるを得なかった。グローバリゼーションの加速に伴う国際競争の激化、非正規労働者(インフォーマル経済)の比率が大きいことなどをとっても、かつての福祉国家とは前提条件がずいぶん異なっている。その結果、予算の制約が生じ、社会保障の対象世帯を絞る必要ができた。これがターゲティングプログラムが開発途上国でブームとなっている理由である。

3. 普遍性の欠如(Lacking Universality)

ターゲティングによって低所得層を社会保障の対象とすることは同時に、中所得層を排除することになり、政治的に不安定な状況が生じる。歴史的に見れば、注所得層は社会保障の拡充に重要な役割を果たしてきた。社会保障の拡充の最大の障壁は国内政治であり、所得再配分プログラムの規模や期間は国内政治によって決められる。政治家や官僚の国民からの評価がそれによって大きく左右されるからだ。

4. 所得階層を超えた結束の強化(Cross-class Solidarity)

貧困撲滅へ向けた最後の旅路(ラストマイル)を無事終えるためには、社会保障システムを通じて貧困層と非貧困層の間に連帯感を生む必要がある。それは社会保障を適切に運用する国家を作るためには不可欠なことだ。援助を提供するドナーは、貧困削減プログラムの対象を貧困層に絞るため、社会保障プログラムにターゲティングを組み込もうとする傾向がある。貧困削減が目的なのであれば、これで十分だろう。しかし、最終目的が貧困の撲滅なのであれば、開発途上国はもっと網羅的で普遍的な社会保障システムを構築し、国民が直面するリスクや脆弱性に取り組んでいくべきだろう。

Author: The Povertistの編集長。アジアやアフリカでの開発援助業務に従事する貧困問題のスペシャリスト。貧困分析や社会政策を専門とし、書籍・論文も執筆。

SDGsとMDGsの違いと特徴-経済成長・貧困削減だけでなく不平等も焦点に

持続可能な開発目標(SDGs)の最大のポイントは、経済成長が解決できない問題に焦点を当てていることだ(参照)。たとえば、栄養失調(Malnutrition)は経済成長と相関関係が無いことが確認されているし、不平等・格差も経済成長をもって解決できない問題として認識されている。

持続可能な開発目標(SDGs)で開発援助はどう変わる?

2000年以降のミレニアム開発目標(MDGs)時代では、経済成長を通じた貧困削減が焦点だった。経済成長を通じて国民の所得水準を向上させることで絶対的貧困の問題を解決する。貧困率の計算方法がまさにそうなっていて、こうしたある種の「常識」が開発援助に関わる者の間にあった。

しかし、SDGsには「これだけでは不十分。不平等も同時に解決しなければならない。」というメッセージが込められている。つまり、貧困削減(ゴール1)を達成するためには所得レベルを底上げするために経済成長を促す援助・政策が重要となるが、その結果、不平等を拡大させるような経済政策となるのであれば、ゴール10の達成の阻害要因となる。このような場合、SDGs全体の達成の観点から言えば、そうした政策には大きな欠陥があると言わざるを得ない。

開発援助とターゲティングの重要性

これまで以上に、案件形成段階で成長・貧困・不平等にどういった影響があるかを考える必要が出てくると言えるだろう。インフラ開発によって経済成長を促すことを目的とするのであれば、これまでは周辺住民の「所得向上=貧困削減に寄与」といった一文を入れておけば説明になったかもしれない。しかし、これからは鉛筆を舐めて作文するだけでは納得を得られなくなる。

周辺の裨益住民が中間層・高所得層であれば、貧困層との格差増大に寄与する可能性がある。そうなれば、ゴール1には貢献するが、ゴール10にはマイナス効果となる。誰に裨益するプロジェクトなのかを明確に検討することがこれまで以上に求められることになろう。

日本の援助は元来、ターゲティング手法をそれほど研究・実践してこなかったが、ターゲティング抜きでは何も語れない時代がSDGsによって幕開けされる。

Author: The Povertistの編集長。アジアやアフリカでの開発援助業務に従事する貧困問題のスペシャリスト。貧困分析や社会政策を専門とし、書籍・論文も執筆。

貧困撲滅へ向けた最後の旅路-ラストマイル

もし、ジェフリー・サックス著「貧困の終焉」ポール・コリアー著「最底辺の10億人」ミレニアム開発目標(MDGs)時代の開発学の名著なのであれば、「ラストマイル(The Last Mile in Ending Extreme Poverty)」持続可能な開発目標(SDGs)時代には必ず読まなければならない名著となるだろう。SDGsが目標としているように、本書は2030年の絶対的貧困撲滅を見据えて議論を展開している。ここでは本書の序章「From a Billion to Zero: Three Key Ingredients to End Extreme Poverty」で展開されるポイントをレビューする。邦訳は現時点で存在しないが、英語が苦手な方でも序章(無料)はご覧になることをお勧めしたい。

10億人からゼロへ-絶対的貧困撲滅のための3つのカギ

貧困に終わりへの道のりは、各国の状況によって異なる。「最後の旅路(ラストマイル)」がどれ程長く険しいものになるかは、これまでにどのくらい旅をしてきたかで決まる。

たとえば、中国はハイペースで貧困削減を実現したが、コートジボワールは貧困状態を悪化させた。MDGsの一つ目のゴール(世界の貧困の半減)は予定より7年も早く達成されたが、個別の国を見れば達成状況に差があるというわけだ。

最後の旅路では、誰も見捨てることができない。中国は世界の貧困を半減させることに大きく貢献した。しかし、沿岸地域の急速な経済成長が所得水準を向上させた一方、内陸部では貧困状態が続いている。かつてアフリカ諸国から手本とされていたコートジボワールでも、北部地域の住民が貧困状態に陥った。

たしかに、経済成長は貧困削減のエンジンかもしれない。しかし、経済政策だけでは貧困に終わりを告げることはできない。経済成長が断続的であったり、富の配分が不公平である場合には、経済政策は無力だ。

貧困撲滅を達成するためには、平和、仕事、レジリエンスが重要な要素となる。

過去の研究が示しているように、貧困が紛争の引き金となり、紛争によって人々は貧困に陥る。実際、現代の貧困は紛争地域や脆弱国に残存している。また、紛争の終結がすぐに経済成長につながるわけでもない。紛争でボロボロになった国を復興する長い時間が必要である。そして何よりも、今後長期的に平和な状態が継続するという期待感が不可欠となる。

一方で、国内に紛争を抱える国が貧困削減を順調に進めている例があるのも事実だ。たとえば、フィリピンやインドが顕著な例だろう。しかし、紛争地域の住民は国の発展から取り残され、貧困状態から抜け出せない可能性がある。最後の旅路を終えるためには、彼らを見捨てるわけにはいかないのだ。

仕事(Job)

生産性の高い仕事の不足は、低所得者層を増加させ、貧困を生む。また、貧困は生産性の高い職へ就くための阻害要因ともなる。ここに急速な貧困削減に成功した国の研究がある。貧困家庭が貧困から抜け出すために得た追加的収入源は労働所得と労働生産性の向上だった。

貧困層にとって生産性の高い仕事は、賃金労働、バリューチェーンへのアクセス、農業で高い収穫高をあげることだ。これらの要素なしでは、彼らは貧困から抜け出すことはできないだろう。

雇用創出のためには、経済構造転換が重要となる。経済の構造を見直すことによって、労働生産性を向上させ、低所得者層が生産性のより高い仕事へ転職する機会を得られる環境を作ることが、特にサブサハラアフリカ諸国では必要である。

また、マーケットアクセスに対する投資不足も解決すべき課題である。人々がマーケットへアクセスできないということは、生産性の向上、雇用創出、労働生産活動すべてにおいてマイナスである。投資不足の原因は、陸封(大規模河川や海に面さない内陸国)であるためにあらゆる経費が高くついてしまうことだろう。

レジリエンス(Resilience)

貧困は脆弱性(Vulnerability)の原因である。貧困層は多くの場合、レジリエンスを提供する機関・システムの無い場所で生活している。一旦ショックが発生すると彼らは、公的な救済システム(保険、一時金借入等)に頼らずに対処しなければならない。過去の研究も貧困層が極めて脆弱であることを示している。一日2ドル以下で生活する成人のうち、23%しか公的救済システムへアクセスできないというデータが彼らの脆弱性を物語っている。貧困層は公的システムへ頼らず、親類間の助け合いでショックを切り抜けるしかないのが現実だ。レジリエンス(復元力)は、ショック(災害等の影響)を緩和する能力のことであり、最後の旅路を完結するために無くてはならない要素だ。ショックはあらゆる場所で起こる。病気や失業は家庭で起き、自然災害や凶作はコミュニティレベルで起き、政情不安や物価乱高下は国家レベルで起きる。あらゆるレベルでのレジリエンスが不可欠というわけだ。

ショックに対する脆弱性もまた、貧困の原因である。貧困層はしばしばショックへのやむを得ない対応として生産活動に不可欠な資本(家畜・土地等)を売却し、消費水準を短期的に確保しようとする。しかし、こうした一時的な対処法は長期的にマイナスの影響を残すことが報告されている。エチオピアとタンザニアに関する研究では、干ばつ発生から10年経過した時点でさえ、貧困層の消費水準はかつての水準から17%-40%も低いままだった。

また、貧困線より上の水準で生活している人々も、貧困に陥るリスクをはらんでいるとされている。ある研究では、貧困線の2倍の消費水準にある人々でさえ、貧困に陥る確率が10%あるとしている。

更に、費用便益分析を行った研究によれば、ショックに対する事前措置(リスクマネジメント)に投資することは高い費用対効果があるとされる。低所得国の貧困層はレジリエンスの最も無い人々であるにもかかわらず、ソーシャル・セーフティ・ネット等の社会保障政策のカバレッジは彼らのたった10%でしかない。ここに大きな課題が残されている。

 

 

 

書籍発表記念イベント(討論会)

関連記事

持続可能な開発目標(SDGs)貧困撲滅と栄養改善へ2030年までの道のり

今月末にニューヨークで開催される国連総会で、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)が採択される。17ゴールと169ターゲットからなる目標が、開発途上国だけでなく先進国にも課される。目標年は15年後の2030年だ。キーワードは貧困撲滅と環境。合言葉は、「一人も置き去りにするな」である。貧困撲滅と環境に優しい持続可能な開発へ向けた目標を掲げることについて国際社会は合意することになるが、2030年までの具体的な道のりについてはまだ議論されていない。新しい開発目標を決める一方、どうやって実施していくのか、「実務的な詰め」はこれからの大きな課題というわけだ。

9月2日、国際食糧問題研究所(IFPRI)SDGsに関する討論会を開催し、「SDGsでは何が課題であり、どう対処していくべきか」議論を行った。ここではパネリストの議論を紹介する。討論会の最後に、司会を務めたナビーハ・カジ(Nabeeha Kazi)は質問を投げかけた。「もし一つだけ議題を選ぶとすれば、月末のニューヨークへ何を持っていきますか?」パネリストの答えは、「貧困撲滅」、「実施」、「データ」だった。

フランシスコ・フェレイラ(世界銀行)

  • 世界銀行は2つのゴールを見据えている。絶対的貧困を3%まで改善すること、最底辺の40%の人々への富の配分を促すこと。SGDsが貧困だけでなく、不平等の問題を扱っていることはとても喜ばしい点だ。SDGsが不平等の問題への取り組みを求めることで、単に経済成長を追い求めて絶対的貧困を減少させるだけでは不十分となった。貧困削減は経済成長を達成すれば容易に進捗していくだろうが、それだけでは不十分だ。不平等の問題を解決するためには、公平な富の配分にも着目する必要がある。
  • 多元的貧困の重要性は広く理解されつつある。つまり、貧困は単に所得だけの問題ではなく、ほかの多くの要素で構成される。しかし、どの指標を用いて貧困を定義すべきかについては、明確なコンセンサスがない。経済成長が進めば所得で計測される貧困は減少するかもしれない。しかし、他の要素はどうだろうか。

ホミ・カラス(ブルッキングス研究所)

  • 飢餓、食糧安全保障、栄養(ゴール2)が重要な課題となるだろう。どの指標を用いて達成状況を計測するかが今後の課題となる。栄養失調の子供の数は、現在のトレンドが継続すれば12%から7%まで改善すると見込まれている。しかし、ゼロにすることは困難な課題だ。課題の深刻さに比べて、栄養に関する公共投資は極めて少ない。開発途上国の栄養問題への取り組みに関する予算は一人当たり205ドル。そのうち180ドルは開発途上国政府自らの財政支出で賄われている。先進国からの政府開発援助(ODA)や海外直接投資(FDI)の貢献度は極めて少ない。
  • データ収集・分析は、複数のステークホルダーの責任と考えるべきだ。このご時世、データは必ずしも開発途上国の統計局が入手すべきものではない。技術の進歩によって、私たちは遠隔から個人や地域のデータを収集することが可能となっている。

クラウディア・リングラー(国際食糧政策研究所)

  • 農業振興と環境保全に関するゴールとターゲットはどれも重要。SDGsが開発途上国だけでなく、先進国にも目標を設定したことはとても重要なことだ。例えば気候変動など、国際社会が一丸となって取り組むべき問題を明確に示した。

アンドリュー・スティア(世界資源研究所)

  • モニタリングが重要。それぞれのゴールの達成状況を計測するために、どのようにモニタリングしていくべきか議論する必要がある。例えば、森林破壊をどのようにモニタリングするべきか。
  • 飢餓撲滅のためには、食料ロス・食料廃棄の問題と向き合わなければならない。どのように計測すべきだろうか。技術革新によって、様々な方法でデータ収集は可能となりつつあり、計測方法については議論していくべきだろう。

シェンゲン・ファン(国際食糧政策研究所)

  • 食料安全保障と栄養(ゴール2)に着目している。2013年4月頃から、これらの課題は真剣に議論されるようになった。こうした課題に取り組むためにはデータが必要であり、目標を達成するためには研究と分析が不可欠。
  • 2030年までに飢餓問題は解決するかもしれない。しかし、栄養失調の問題は深刻な課題として残るだろう。2025年までに、開発途上国の子供たちの40%が栄養失調に苦しむと見込まれる。良い知らせもある。タイはわずか20年間で栄養失調を30%から7%まで改善した。ベトナム、バングラデシュ、エチオピアも改善傾向にある。開発途上国で栄養失調を改善した例は、良い事例となるだろう。
  • 栄養失調改善の成功の秘訣は、複数のアプローチを同時に実施することだ。保健、社会保障、栄養改善、コミュニティ開発の取り組みを通じて包括的に問題に取り組むことが大切だ。

日本がドミニカへ緊急援助を開始-熱帯性低気圧「エリカ」で被災

8月27日、熱帯性低気圧「エリカ」がカリブ海の島国ドミニカを襲った。既に数十人の死亡が確認され数千から数万人の被災者が見込まれている。

これを受け、国際協力機構(JICA) は緊急援助実施を決定。援助物資の輸送を開始した。現時点では発電機、浄水器、簡易水槽が支援物資に含まれる見込み。数量、輸送日等は今後発表される。

 

参考

国際協力機構(JICA)

外務省

慢性的貧困の撲滅には何が必要か?-2030年へ向けて実務の観点から

30年まで15年もある。いや、「15年しかない」という方が正しい。2030年までに貧困を撲滅することを目指すのであれば、今すぐに慢性的貧困の問題に取り組まなければならない。どのような課題があり、開発途上国や援助機関はどのように克服できるのだろうか。過去数十年にわたる議論の焦点は、「経済成長を通じていかに貧困を削減できるか」だった。一方、新しい開発目標の下では、議論の焦点は貧困の「削減」から「撲滅」へと転換しつつある。

削減から撲滅への転換によって、誰の貧困問題の解決を目的とする政策なのか、という問いが重要となる。たしかに、高い経済成長は消費水準を上昇させることで多くの貧困層にとって有益かもしれないが、貧困層の中でも最下層に位置する慢性的貧困層は裨益することができるのだろうか。言うまでもなく、慢性的貧困層が長期間貧困状態にある原因は、過去の経済成長から利益を享受できなかったためだ。彼らを貧困状態に留めておく構造的な問題を取り除かない限り、貧困はゼロにはならない。直近の慢性的貧困報告書(Chronic Poverty Report)によれば、慢性的に貧困状態にある人々とショックによって一時的に貧困状態にある人々を分けて考え、異なる政策を立案すべきだとしている。

その答えは現実的かつ実用的でなければ意味がない。私たちには残された時間は少ないから。2030年に貧困撲滅を達成するためには、今すぐ取り組みを開始する必要がある。つまり、長期的な貧困に苦しむ全ての子供たちへ教育や保健サービスを受ける機会を与えること。そうすることで、15年後、彼らが大人になった時には収入を得て家族を養えるようになる。15年という限られた時間を考えれば、世代間の貧困の連鎖を断ち切ることができるのは今しかない。では、慢性的貧困の解決へ向け何が重要なのだろうか。私は「実施」が重要な要素だと感じている。実務的な案件実施方法と言ってもよいかもしれない。案件を実施するためにはまず、当該国にどれくらい慢性的貧困層が居住しているのかを知る必要がある。そして、彼らの住環境、家族構成、収入減を調べ、どのようなクライテリアを用いれば彼らを案件対象家庭として選定(ターゲティング)できるかを考える。これらの分析は実践可能だろうか。

案件実施のためには、データがもう一つの重要要素である。一般的に慢性的貧困の測定にはパネルデータが用いられる。同じ家庭のデータを複数年にわたって収集し、貧困状態が継続したかどうかを測定する手法だ。この手法の最大の欠陥は実用性に乏しいことにある。実際に、全国規模の貧困分析を可能にするパネルデータを保有している開発途上国はほとんどない。研究費用を確保できた研究機関が、彼らの関心に基づき局地的に収集したパネルデータはあるだろう。しかし、政策立案・モニタリングを行うに足るデータは、定期的かつ全国規模で収集される必要がある。したがって、開発途上国は慢性的貧困の問題にパネルデータなしで立ち向かわねばならないことになる。繰り返しになるが、今からデータを集めるのでは手遅れだ。今あるデータを使って慢性的貧困層をターゲティングする手法を考え出すしか道は残されていない。

一例として、最近出版した論文でカンボジアの農村部での慢性的貧困の分析をパネルデータなしで行った。ポイントは定性データと定量データの融合にある。定性データは、参加型貧困アセスメントの結果。定量データは一般的に政府が行っている家計調査データ。どちらも全国規模で行われたものであり、全国規模の推計を行うには不足ない。定性データを用い、貧困層自らが考える慢性的貧困の定義を採用し、定量データで対象家庭を推計する手法だ。

詳細は論文を参照いただきたいが、驚くべき結果が得られた。カンボジアでは2004年から2010年のわずかな期間に貧困率が60%から40%まで改善したにもかかわらず、ここで推計した慢性的貧困率は11%からほとんど改善が見られなかった。この結果は、高度経済成長が慢性的貧困家庭の消費水準を上昇させた一方、生産用資産(Productive Asset)と人的資本(Human Capital)の拡充といった構造的な貧困要因を改善するに至らなかったことを示している。

更に、政策的観点から重要なことは、カンボジアの国家貧困線による消費ベースの測定方法では、ここで推計された慢性的貧困層のほとんどをとらえることができないということだ。これらの慢性的貧困層は消費水準こそわずかに高いものの、人間開発の水準は極めて低い水準に停滞しているため、単に計測方法の違いによるものとして片づけることができない問題といえる。これが示す政策的意味は、慢性的貧困の計測は、消費だけでは不十分であり、多元的な要素を考慮すべきということ。クライテリアの選定に当たっては本論文で示された慢性的貧困層の特性が参考となるだろう。特に、貧困層にとって最後の頼みの綱である国家社会保護戦略(NSPS)、セーフティネットの実施に際しては留意する点だろう。

論文中で示された手法はほんの一例に過ぎない。ただ、いずれにせよ現在利用可能なデータを用い、実務家・政策立案者がデスクサーベイですぐに実施可能な分析手法が望ましい。慢性的貧困層を見つけ出すにはパネルデータがベストかもしれない。しかし、データがなく、残された時間もない以上、ベストではなくともベターな手法を用い、すぐに案件実施へつなぐことが重要だろう。2030年を見据えレ場、私たちに残された時間は限りなく少ない。

ソマリアが中国を歓迎する理由とは?

タクシー運転手の途上国開発談話。今回はソマリア系移民の運転手が熱く語ってくれた。西欧経済圏で暮らしながら母国へ馳せる思い。台頭する中国。祖国へ残してきた実家。家族経営の農場。アフリカの仕事をしていた、ソマリア難民支援をしていたと伝えると、運転手の話が一気に熱を帯びた。

― 出身地

ソマリア

― 年齢

1967年生まれ。47歳。

― 職業

タクシー運転手。

― タクシーの運転手をする前はどのような暮らしを?

ソマリアでの暮らしはとても豊かなものだった。弟と両親の5人家族で、小さな家族だったが、父は大農園の経営者だった。牧場には常に200頭の家畜がいて、果物畑にはマンゴー、バナナ、オレンジの木。季節に応じて色を変える、色彩豊かな自然環境で育った。

― ソマリアへの想いは?

私たちの豊かな国はクーデターでバラバラになった。西欧の侵略はひどいものだった。ソマリアの国土は分断され、フランス(ジブチ)、イギリス(ソマリランド)、イタリア(ソマリア)に同時に支配された。今でも多くのソマリ人がそれぞれの『国』にいる。

クーデターの後、経済的な支配が継続された。最近では、イギリス、カナダ、アメリカが石油の掘削を開始した。ソマリア沖の油田から石油をとっていく。西洋人のやり方は好きではない。ソマリアの資源をとっていき、最後は武器を売りつける。そして、疲弊した国土と人々に対して人道支援を行う。人道支援で潤うのは、西洋の企業であり、ソマリ人ではない。経済的支配、武器の提供、人道支援。「合法的なやり方」でソマリアをどん底に陥れたのは誰だろうか。

私は中国を歓迎している。全てのソマリ人も同意するだろう。最近、中国も石油の掘削を開始した。彼らが西洋人と異なるのは、ソマリ人へ利益の半分を分けてくれるところ。ソマリアには石油を掘削する技術がない。中国は技術を提供し、利益を配分してくれる。これ以上良いことはない。

西洋人は中国のやり方を悪く言う。「金の亡者だ」と。それでもソマリ人は中国員の手にキスをして歓迎するだろう。ソマリ人はアメリカ人が来た時も歓迎した。でもアメリカ人は食糧と同時に武器もばらまいた。中国人は少なくとも利益の半分をくれる。中国のほうがましだ。

― ソマリアへ帰りたい?

もちろん。でもソマリアへは住まない。過激派は自分を諜報機関のエージェントとみなすだろう。家族が保有している土地を売りたい。かつて保有していた農場は、推定4億円と言われている。ただ、国が安定するまでは売らないつもりだ。土地の権利書は今でもアメリカの銀行へ大切に保管している。ソマリアに戻れば裁判所がこれを正当な権利書として認めるだろう。

※談話はあくまで個人の意見であり、客観的な見解ではありません。

日本はなぜ呟かないのか?コンプライアンスと広報の狭間

「日本は何をしているのかわからない」

開発業界で仕事をしていると耳にタコができるほど耳にする言葉だ。日本の援助は見えない。これが定説となって久しい。関係者はもちろん、広報活動に力を入れて、この汚名を返上したいと努力している。しかし、努力と結果は必ずしもすぐに結びつくものではないのだろう。

開発業界では、ソーシャルネットワークの活用が一大ブームとなりつつある。研究者、実務家が、ツイッターやフェイスブックの公開アカウントから生の声を届けるのが広報活動の主流となりつつある。日本はどうだろうか。残念ながらヨーロッパやほかの主要援助国の後手をいく。組織の公式アカウント以外に、実名でSNS等で情報発信している関係者はどれだけいるだろうか。諸外国の同業他社に比べるとアリとゾウほどの差がある気がする。

ではなぜ日本の開発業界ではSNSが広報の主流となっていないのだろうか。

この質問に対して私の考えを書く前に、紹介したい記事がある。5月18日に英国開発学研究所(IDS)のホームページに投稿された記事だ。IDSは世界の援助関係機関の中で、SNSを活用した広報活動で最も成功している機関の一つだ。研究成果や開発業界をけん引する議論の発信にSNSを積極的に使い、約140,000のFacebookフォロワーがいる。

広報部長のジェームス・ジョージャラーキスは、IDSの成功を次のように説明している。

IDSのニュースや活動内容に限定して広報活動を行ったことは一度もない。むしろ、他の団体が発信する記事や活動を定期的に紹介している。IDSの成功の秘訣は以下の6つ。

1. 全てのSNSチャネルを活用し、ニュースや記事を迅速に発信すること。BufferAppのような便利なツールも活用する。
2. 自らの記事だけでなく、パートナー団体の記事も発信する。
3. 同様の関心を持つ人々を見つけ、フォローする。
4. フォロワーからのメッセージへは迅速に回答する。
5. 特定の人々にターゲットを絞る(卒業生や同僚を通じてその友人等への波及効果)。
6. メディアポリシーを作成し、SNSで積極的に発信する職員を支援・保護する。

The Povertist立ち上げから運営を振り返ると、これらの考えに実感を持って同意できる。では、これらの成功要因を日本が真似できないのはなぜだろうか。経験則から言えば、コンプライアンスと広報活動の利害が対立しているためかもしれない。

つまり、日本の組織は次の壁に直面している。

  1. 新しいサービスの使用:組織が大きくなればなるほど、新しい試みへの対応は遅くなる。コンプライアンスと責任問題が常に大きな壁として立ちはだかる。もし新しいサービスを使うことで何か問題が起こった場合、誰が責任をとるのか。長い長い議論の始まりで、気の遠くなるほどの事務手続きを経て、こうしたサービスの使用許可が下りる。ツイッターアカウント一つ作成するのにも多大な労力を費やしている組織は多いのではないだろうか。
  2. インターアクションのリスク:SNSの最たる魅力はユーザーとの交流にある。日本の組織はこうした交流を通じて何か悪いことが起きることを恐れる傾向にある。悪意のあるユーザーがコメント欄を荒らした場合、誰の責任となり、どう対処すべきなのか。ここでも責任問題が大きな壁となる。どんなにSNSのメリットがあっても、こうした小さなデメリットのほうが大きく目に映る。そういった企業文化が根付いている組織は多いのではないだろうか。

これらのリスクによって、日本はSNSのメリットを十分生かしきれていないような気がする。組織のニュースや活動に関するプレスリリースを共有するにとどまり、他団体のニュースへのコメントやそれらの共有を行っている組織はどれほどあるだろうか。責任問題からの脱却がない限り、IDSのようなSNSの活用は難しい。ではどうすべきか。

解決法はすでに示されている。日本の開発業界は、ジェームス・ジョージャラーキスの6番目の秘訣から学ぶことができるはずだ。メディアポリシーでSNSを活用した職員個人レベルの発信を推進し、擁護する。日本の援助をもっと可視化するためには、これが一番早い方法である気がする。

世界一の機関がいうのだからやってみて損はないはずだ。