携わっている仕事について書きます。

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人脈を作る仕組みづくり

インドネシアで社会保障関連の政策会合を主催・共催し、あるいは招待を受けて発言する機会が仕事を通して多い中で、この国独特の人脈構築の必要性を痛感している。インドネシアは個人のつながりが直接仕事につながる国であり、組織対応が苦手な国である。個人の繋がりがなければ仕事が進まない構造となっている。ビジネスを行っている人は多いが、公的機関と仕事をする機会がある人はそれほど多くないのではないだろうか。

日本や他の先進国では公的機関との関係において組織対応が普通である。そうでなければ公的機関を名乗ることはできない。担当者によって対応が違ったり、窓口が変われば対応が違うということがあってはならないが、インドネシアは残念ながらまだそのような状況にない。国の政策を司る行政機関と仕事をする際も同様で、個人的な繋がりがなければ政策対話の中に入ることすら困難である。

そのため約2年前から、個人的にWhatsAppを交換する機会を積極的に増やすことにした。これは非常に地道な作業の連続である。例えば、国際労働機関(International Labour Organization: ILO)の所長からレターを送付する際も、レターを送る公的な窓口が存在しない。どこに送るべきかは、それぞれの担当者や個人が個人的な繋がりで判断するしかない状況である。

日本国内であれば総務窓口に何かを送れば担当部署にその人がつなぎ、レターが届くことは普通である。しかしインドネシアではそのようなことはまずない。総務窓口に何かを伝えても全く伝わる可能性はない。窓口担当が上に繋がないのはもちろん、自分と関係ない部署についても横の繋がりが全くないからである。

公的機関と仕事をする際にも個人の繋がりが重要になってくる。裏返せば、汚職の可能性も非常に高くなってしまう。そのため汚職撲滅委員会が最近活発に活動している。個人の繋がりで仕事が公的機関でも決まっていくため、日常的な仕事においても組織対応は非常に少なく、個人対応が99%と言っても過言ではない。

このような環境で仕事を進めるためには、個人の繋がり、具体的には個人のWhatsAppを集める必要がある。これを何とか仕組み化できないかと考え続けた結果、最初は現地スタッフに任せて面会のたびにWhatsAppを聞き、職歴や職位、組織名をデータベース化するよう指示していた。しかしスタッフによって対応が異なり、電話番号と名前、組織とポジションを緻密にデータベース化することはできなかった。できるスタッフがいる会社であれば問題ないが、私の働いている環境ではそれがうまくいかなかった。

スタッフの能力以上に、これは文化的な要素があると考えている。WhatsAppで個人的な繋がりがある人は、その人も個人的な繋がりで仕事をしており、個人的に抱えているデータベースを組織に共有するという概念がそもそも存在しない。感覚として、組織としてデータベースを作る仕組みが作りにくい事情があったのだと思う。

この2年間でうまくいっていると感じる方法は、あくまで私個人が関係者のWhatsAppを集めることである。そのために私が主催する会議、組織として主催する会議では必ずカメラマンを雇うようにしている。これは広報活動にも使用でき、資金提供者である外国政府に対するレポーティングの際にも写真を活用できる。

それだけでなく、半日の会議でたくさんの写真を撮影してもらうことにより、それぞれの参加者に渡すことができる写真が手元に生まれる。会議が終わると主要な参加者とその場でWhatsAppを交換する。WhatsAppを持っていなかった参加者についても、よく参加してくれる人については同僚を通じて「この人のWhatsAppをください」ということで連絡先を入手する。顔写真が手元にあるため、同僚に写真を送ってその人のWhatsAppを依頼することができる。この作業を会議の翌日頃には自分で行うようにしている。

非常に時間はかかるが、これが有効な方法である。私自身も名前を一致させることができ、スマートフォンの連絡先レコードにもなる。その後何をするかというと、参加してくれた人でWhatsAppを交換した人、それからよく見かける人たちには「昨日は来てくれてありがとう」という言葉を添えて写真を送るようにしている。

個別に送ることで、会議のサイズによって20人から30人になることもあるが、この一言を添えて写真をそれぞれ個別に送ることで、それぞれと個人的な繋がりができるという感覚が非常に強い。これを2年間続けており、非常に有効であると感じている。このように送ることで相手から「次にこういう会議があるのだが」という声がかかったり、「こういう機会があるのだが」という声をかけてもらうことも増えてきている。

WhatsAppの履歴に相手の写真が残ることで、相手の顔とメッセージが一致し、次回「この人は誰だったか」ということもなくなる。顔と名前が一致しないのが私の最大の問題で、顔は覚えられるが名前と一致させることが困難であった。このような作業を繰り返すことで、人の顔と名前も覚えられ、相手とのWhatsAppやり取りの口実も作ることができる。写真を介することにより、非常に有効に活用させてもらっている。

これを仕組み化と言えるかは分からないが、会議を主催するたびにカメラマンに半日入ってもらい写真をたくさん撮影してもらう。そしてDropboxやGoogle Driveで全体共有するのではなく、私からフォルダーから1枚ずつWhatsAppに送っていく作業を地道に行っている。時間がある限りこれを続けたいと考えている。

私の連絡帳にはこの2年間でおそらく300人から400人が新規追加されており、その中のほとんどの人と年に1度程度はやり取りをしている状況である。時々全く覚えていないような人から連絡が来ることもあるが、そのような場合も以前にどこの会議で会った人かメモを加えたり、写真を送った履歴が残っていたりするため、その時に思い出すきっかけにもなっている。これは非常に有効な人脈を作るための仕組みとして、実践的に準備し続けている作業である。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

インドネシア社会保障制度改革への提言活動(6月下旬の振り返り)

6月の活動は、インドネシアの社会保障制度改革に向けた集中的な提言活動となった。この1か月間、国際労働機関(ILO)職員として、現地メディアから政府、労働組合、使用者団体まで幅広いステークホルダーとの対話を重ねた。

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インドネシア社会保障法改正と家政婦法案の動向(6月上旬の活動の振り返り)

6月29日現在、ジャカルタでは例年より長い雨季が続いている。本来であれば乾季に入る時期だが、秋のような気候となっている。今月の活動を振り返ると、インドネシアの社会保障制度改革と労働法制整備において、政府機関や国会との重要な協働が相次いで実現した。

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政策支援で期待される成果と資金繰りへの影響

資金繰りの問題で言うと、人道支援のように黙っていても人道危機が起き、資金提供者から声がかかることは、私の分野ではありえない。社会保障や政策支援は、納税者や消費者には成果の見えにくい分野であり、人道援助に比べると資金調達が難しい。ILOの中でも、ほとんど資金がつかないところだ。そういう状況でどのように事業経営をしていくかといえば、まず目立たなければならない。目立った上でしっかり実績を出す。目立つというのは日々の発信が大切であるということだ。

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組織に頼らず、個人の力で仕事をすること

個人名で仕事することが、ILOでは特に重要な価値観である。2024年11月にアジア15カ国の代表をジャカルタに招待し、専門家会合を主催した。雇用保険や失業給付を実施している国は改善点を見つける機会とし、これから制度設計をはじめる国には学びの機会として企画した。BPJS-TK本部の会議場を借りて実施した。

こうした会議を主催したり、会議で発表すると、名前と実績を覚えてもらえるメリットがある。実際、これまでに多くの連絡をいただいている。北京に駐在するILOの同僚からは、発表資料を使わせてほしいと相談され、カンボジア政府やバングラデシュ政府からは個別に政策支援を求められている。これから雇用保険制度や失業給付制度を作りたい国にとって、ゼロから制度を立ち上げた経験のある人材は貴重なのだろう。日本の雇用保険制度について詳しい人はたくさんいるだろうが、日本の雇用保険制度を立ち上げるための作業に携わった経験を持つ人は少ない。そういった意味で、インドネシアの雇用保険制度立ち上げに、外国人として携わった経験を持つ人材は私しかいない。フィルターを重ね合わせていけば、自分だけの専門性がおのずと見えてくる。それを売りにするのだ。

こうした専門家会合を主催すれば、それはある意味で万博のようなものだ。昨年11月に実施した会合は、私が何をやってきて、何をする能力を持っているのか、15カ国の代表団に示す場となった。もちろん、会議自体の目的はあったが、個人としての目的はそこにもあったし、念頭に置きながら企画をした。

現在、様々な国から支援要請の声をかけていただいている。これらの国からも資金をもらわずに無償で出張し、無償で政策提言するための準備をする。資金の調達方法を少し考えなければならないが、それぞれの国を支援する際に、現地のILO事務所が運営する事業から多少の給料を私に支払ってもらうように交渉するなど、可能性は広がる。

私のようにアジア地域で事業経営するILOの社会保障事業のマネージャーは、完全に独立採算制でやっている。アジア地域で雇用保険や失業給付をゼロから立ち上げた経験があるのは私だけだと思うので、声がかかる。これは非常にありがたいことで、声がかかる状況を作るために発信していかなければならない。

声がかかれば、当該国で事業運営にあたる同僚から給与1カ月分を支払ってもらい、私がそれに応じた仕事をする。そうすることで、私はインドネシア事務所にいながら、出稼ぎのような形で他国を支援することができ、各国にいる同僚も自分に専門性がない部分を補いながら支援を実行することができる。

そうすれば、インドネシアで私が抱えている事業も資金繰りが安定する。1つの資金ソースのみでキャッシュフローを賄っているわけではないという状況が作れるからだ。ここ5〜6年でやってきているのは、資金源の複線化だ。3-5つの事業を同時に管理し、資金調達と新規事業の立ち上げを毎年行えば、資金繰りが安定する。逆に、そのように現場レベルで事業経営していかなければ、一つの事業予算では自分の給料さえ支払うことができないほど、一つの事業規模は小さい。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

国際機関職員にとってソーシャルメディアは営業、広報、調達ツール

ILOは零細企業や個人事業主の集団であると、私は常々思っている。実際、組織対応ではなく、何でもかんでもすべて個人がやらねばならない場面があり、組織的にもそうするように言われている。

スタッフの採用やや業務委託先の調達に関して、ILOが組織としてサポートしてくれるかというと、全くサポートしてくれない。残念ながら、これは公式に言われていることで、「専門家や事業運営に必要な人材確保、業務委託での人材確保に関しては組織はサポートしないので、それぞれ個人で対応してください」と言われている。

他の国際機関であれば、ロスターという専門家プールを組織的に運営するが、ILOは個人に任せますと公式に言われている。そのため、LinkedInや英語のXで普段の業務や私の考えを頻繁に高頻度で発信することで、専門家のネットワークを個人レベルで作っている。広報兼調達のために大切なツールとなっているわけだ。

これにより実際に、この仕事なら私もできる可能性があるので、履歴書を送るから機会があったら声をかけてくださいという人から多数連絡をいただいている。これは非常にありがたいことで、まさにそれを狙ってLinkedInで発信してきた。

英語のXに関しては、インドネシア語で翻訳して日常的に発信している。これはインドネシア国内の有識者や研究機関の人々とやり取りするためである。こうすることで、有識者が政策対話をする場で声をかけてもらえることが増える。実際にソーシャルメディア経由で声をかけてもらったことも何度もある。先日も国連本部からの出張者が、私のLinkedInでの発信を見て、打ち合わせの申し込みをしてきた。まさに、営業である。日常的に無数の人々へ発信することで、その数パーセントの人々から声を掛けてもらい、それが仕事につながる。

ちなみに、インドネシアからはお金を貰わないようにしている。AI翻訳が発達したことによって、インドネシア語で政策について発信することが可能となった。Xでは日常的に政策について発言していて、インドネシア国内の有識者との交流の場となっている。こうした交流を通じて、インドネシア各地の大学で講義をする機会を頂くことも増えてきた。しかし、旅費や謝金の提供を申し出て頂くところも多いが、インドネシア国内からの依頼については無償で引き受けることとしている。こちらが旅費や人件費を支出していることを考えれば、依頼を受けて、こちらがむしろ経費を支出しているということで、民間の感覚では理解できないかもしれない。こうした講演の機会も事業成果として資金提供者へ説明し、インドネシア国外から資金獲得している。

こうした日常的に困難な資金繰りと経営環境に加え、国際機関のあり方を問う、アメリカの動きがある。国際機関は存在意義を問われていることを含め、難しい局面に来ていると思う。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

国際機関の資金繰りが厳しい今、ILOの現場における事業運営はいかに?

私個人の状況について述べると、幸いなことに、アメリカの影響が薄い、現場のプロジェクトマネージャー兼責任者という立場にある。社会保障分野でインドネシアを担当する場合、私が全責任を負う形になる。もちろん上司である所長などが存在するが、日常的には誰かからの指示を受けてインドネシアに社会保障のアドバイスをするのではなく、どのような助言をするか、労働法改正でどのような提言をするかは私個人の判断で行っている。

このような現場責任者が多数存在し、それぞれが独立採算制で事業運営を行っている。ILOでは、各自が企業内で起業し、零細企業を運営している感覚に近い。そのため、アメリカ政府から資金を受けている事業運営者とそのスタッフは影響を受けるが、アメリカ政府からの資金が入っていない事業については何の影響もなく継続される。

私の場合、日本政府からの資金が大きな割合を占めており、給料もそこから相当部分が支出されている。さらに、ILO本部とニューヨークの国連本部から調達した資金もある。これらILOとニューヨーク国連本部からの資金は、企画書を提出してコンペティションに勝ち抜いて獲得するものだ。これら3つのプロジェクトが、私の事業資金のソースである。

日本政府からの資金は当然アメリカとは関係ないため影響を受けておらず、ニューヨーク本部とジュネーブILO本部からの資金も現在のところほとんど影響はない。論理的には、ILO本部と国連本部の予算にはアメリカの影響もあるため、多少の影響があるかもしれないが、現時点では特段影響は見られない。そのため、私個人はほとんど影響を受けることはない。

ILOの現場での仕事は、他の国際機関と比較して特殊である。組織として仕事をするというよりも、完全に個人の名前と個人の能力、個人のネットワークで運営している。現場の仕事は基本的にそうした性格を持つ。極端ではないが、現実的には資金繰りがうまくいかなければ、ILOとしてその国での仕事を完全に辞めることになる。それは私の責任にかかっており、他国で事業を行っている社会保障専門のプロジェクトマネージャーも同じ状況である。マネージャーが第三国から資金調達できなければ、ILOとしてその国での事業継続はできなくなる。

ILOとして事業継続できないだけでなく、プロジェクトマネージャーは自身の契約も自分で管理している。自分で資金調達を行い、自分の給料とスタッフの給料を支払った上で事業費を割り当て、何を実施するかという事業計画を決定していく。全てを担当するのだ。冗談に聞こえるかもしれないが、事務所家賃や光熱費も、ILOジャカルタ事務所から私宛に請求があり、年初に支払う。予算のないバンコクの同僚に、「光熱費をどうやって払ったらよいか」と相談を受けたこともある。

その結果、事業成果を説明する相手は、私たちのクライアントであるインドネシアやカンボジアといった国々ではなく、資金を提供してくれている第三者になる。私の場合は日本政府、ILO本部、ニューヨーク国連本部の3者に事業成果を説明しなければならない。クライアントが喜んでいても、この3者が納得しない限り追加予算や追加資金の振り込みはない。

クライアントがいかに喜んでいるかも重要だが、実際にその国の社会がどう変わったかが私のKPIである。私だけでなく、他の社会保障専門家も同様だ。社会保障分野で特に難しいのは、制度が変わらないとインパクトがないとみなされることである。

インドネシアの法令レベルで変化を起こさなければ私たちの存在意義がない。存在意義があるかないかは、資金提供者が評価することだ。インドネシア政府が感謝してくれることはありがたいが、それだけでは次に繋がらない。なるべく見える形で成果を資金提供者に説明していくことが非常に重要なプロセスである。ソーシャルメディアで私が活発に発信しているのも、この一環である。説明責任があり、何をやっているかを日常的に発信していくことは非常に重要だと考えている。

英語でLinkedInやXでの発信を強化している背景には、調達と営業の観点もある。事業経費の中から給与経費を割いてスタッフを雇うが、スタッフを抱えることは固定費増加を意味し、維持が困難になる。将来的に業務委託できるところは業務委託で回すという考え方をしないと事業運営していけない。特に資金繰りが非常に厳しいので、地方の零細企業とほとんど変わらない状況だ。

父ともよく話すが、零細企業を運営していた父の状況と、私のやっていることは感覚的にほとんど変わらないか、むしろ厳しい。資金繰りが1年先まで見通せないような状況で、10年近くこの仕事を続けている。非営利でやっているため、顧客に喜んでもらうだけでは収入に繋がらないという、民間に存在しないクリアしなければならない困難なレイヤーがもう1つ存在する。また、単年度予算であるため、第4四半期にならなければ翌年の見込みが立たず、痺れを切らしたスタッフはよりよい仕事を見つけて頻繁に離職する。私を含め、職員の契約も1年契約が最長なのだ。この状況で法令を変えるレベルの仕事をしなければ追加資金(売上)を獲得できないため、かなり不安定な事業運営にならざるを得ない。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。

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