生活環境や日々の気付きなどについて書きます。

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差別を嫌い、差別を好む西洋人たち

国際会議に出席していると、英語、仏語、西語、アラビア語、中国語は通訳があることが多い。英語が公用語のことは、当然多い。こうなると、アジアの会議であっても、西洋人が登壇者であることが多くなる。 さらに読む

ジャカルタのコーヒー文化のシングルとダブル

近所にできた小さなコーヒースタンド。

スタンドと表現するのが適切かわからないが、カフェ文化が隆盛を極めるジャカルタにおいて、コーヒー屋は大きく三つに分かれる。欧州や日本で一般的な店舗型のカフェを頂点に、キオスクの様に持ち帰りコーヒーのスタンド、路上で粉末コーヒーにお湯を注いで提供する移動販売店。大雑把な価格帯で表現すれば、30,000-50,000ルピア、15,000-20,000ルピア、5,000-10,000ルピアといった具体である。

コーヒースタンドの向こうには、家庭用を少し大きくした真っ赤なエスプレッソマシーンとコーヒーミル。

「これはアラビカですか?」

まだ真新しいエプロンを身にまとった若旦那に拙いインドネシア語で問いかける。

「アラビカです。」

自信に満ちた光が眼鏡の奥に輝く。コンデンスミルクで飲むベトナム式コーヒーを除き、ストレートで飲むコーヒーはアラビカに限る。

食後にミルクはいらない。アメリカーノ12,000ルピア。ジャカルタではエスプレッソをお湯で割ったコーヒーをアメリカーノと言ったり、ロングブラックと言ったりする。

「支払方法は?」

「現金でもQR決済でも大丈夫です。」

コーヒー豆を挽き、エスプレッソマシーンにセットする。手際よくタブレットでQRコードを示す。ジャカルタでは日常のやり取りで、言葉がわからなくても何を言っているのかはわかる。

「ダブルにしますか?シングルにしますか?」

「じゃあ、ダブルで。値段は?」

「同じですよ。」

支払いが終わってからダブルにするか尋ねられて困惑気味の私に、手際よく出来立てのコーヒーを渡す。立ち込める香り。間違いなくアラビカだ。

トボトボと帰路に着く道すがら、ふと思い出す。ダブルと言った時点でエスプレッソの抽出は始まっていた。コーヒーを二倍にはしていない。つまり、一般的なダブル・エスプレッソとは異なる。この場合、シングルと言えば、エスプレッソ一杯分で抽出を止め、お湯を注ぐ。ダブルと言えば、お湯を注ぐ代わりにエスプレッソ一杯分を抽出した後もそのままカップの上まで抽出し続ける。

ジャカルタでは店にもよるが、シングルとダブルで値段が同じところがある。値段が異なる場合は、一般的なダブル・エスプレッソのようにコーヒーの量が二倍。値段が同じ場合は、おそらく今回のパターン。

ジャカルタのコーヒー文化は独自の発展を遂げていて、飽きない。この価格。この味。日本の「コンビニコーヒー」の質の向上が著しいが、ジャカルタに五万とあるコーヒースタンドは多様性に満ちていて面白い。

日本とインドネシアの常連への対応の違い

毎日の日課で通うカフェがある。顔なじみなので、メニューもカップも支払い方法も毎回同じ。日本とインドネシアの違いで興味深いのは常連への対応。日本は常連を大切にする。インドネシアは常連になると、後回しにされる。テイクアウト客を捌いた後、ゆっくりと運ばれてくるマグカップに口をつける。 さらに読む

マカッサルの香り

スラウェシ島マカッサル。

空港の匂いは地域の匂い。マカッサルの空港印象は、煙草と中国語と涼しさ。

マカッサルは大航海時代に香辛料の集積地として発展した貿易港で、インドネシアの他の地域と同様に三百年以上オランダの植民地だった。

植民地時代にオランダ王室御用達だった香り高いコーヒー豆トラジャ。コーヒー好きであればピンとくる品種で、スラウェシ島が産地。インドネシア独立後、オランダが支配を止め、農園も荒廃した。日本のキーコーヒーが1970年代後半に復活させ、生産と輸出を開始。

マカッサルの名物料理は牛肉を煮込んだものが多い。特筆すべきは、スープは一様に素材の味を活かした調理法で、塩味は極めて薄い。辛い、塩辛い、甘いジャワ島の料理とは一線を画す。薄味で繊細な香りや旨味を好む日本人の舌には合う。

また、鮮魚の水揚げが有名で、インドネシアで一番魚介類が美味しいと言われている。

金融に関しては、キャッシュレス化が急速に進むジャカルタと異なり、多くの商店では現金決済が中心。交通に関しては、交通規則を守らないジャカルタ市民に比べ、信号待ちをする人が多数であることに驚く。

移動手段はGrabとGojekを簡単に呼べる。空港には専用デスクが設けられ、担当が仲介してくれるほど便利で安心な移動手段となっている。ジャカルタはインド型トゥクトゥクが多いが、マカッサルでは目にしない。むしろ、バイクで押すタイプの力車をよく目にする。

ジャカルタの床屋

旅人には庶民の床屋を試してみて欲しい。

ジャカルタの床屋は価格とサービスもピンキリで、高価格帯選べば必ず良いサービスを受けられるかと言えばそうでもない。ショッピングモールに入居している床屋はカットのみで200,000ルピア前後のだが、日本の田舎の床屋の質には到底届かない。ジャカルタの一般的な暮らしをしている庶民は2席前後の小さな床屋へ通っていて、価格は30,000ルピア前後。路上で営む床屋にいたっては20,000ルピアが相場となっている。価格はどれも2023年時点のものだが、場所による価格差が縮まることは今後もないだろう。

庶民の暮らしに触れたい旅人には小さな床屋や路上の床屋を勧める。「同じタオル、はさみ、ハケ、櫛の使い回しはけしからん」という人は、こだわりを捨てなければならない。ショッピングモールに入居する高価格帯でさえ、衛生面は気になるだろう。あくまでジャカルタ庶民の暮らしに溶け込むことで幸せを感じる旅人へ向けたメッセージだ。

プラカノン市場の外にある屋台

市場外の麵屋は庶民の朝食場。

週末の朝市は托鉢の僧侶と朝食の買い出しに忙しい人々でごった返している。路上にプラスチック椅子とテーブルが並べられ、即席の屋台が朝だけ開店する。何年も通い続けている常連老婆が友人と向かい合い、お気に入りの麺をすすっている。40バーツの幸せは麺の美味しさだけではなく、朝の涼しさや賑やかさ、市場を出入りする人々と柔らかな朝日、全ての要素の価値としては安すぎる贅沢な時間。

庶民の食事を安全に楽しむ方法

地元のグルメを楽しむには自己防衛が大切。

地元のグルメを食べ歩くには、衛生面に注意することが不可欠。衛生意識の低いインドネシアでは、ガラスケースに食物を入れたまま炎天下で丸一日営業している屋台をよく見る。もちろん、氷や冷蔵設備のない状態。30度以上の高温多湿の環境で屋台を引いている。程度の差はあれど、屋内レストランでも衛生状態が良いところは少ない。インドネシアに揚げ物が多いのは、滅菌のための調理法として人々に受け入れられてきたためかもしれない。いずれにせよ、先進国のように客が食中毒になったからといって営業停止となることもなく、あくまで自己責任で食事をする必要がある。

自己防衛の簡単な方法を紹介する。辛いものを食べ過ぎないこと。少しでも違和感のあるものは吐き出すこと。辛いものに慣れていない人は大抵の場合、胃腸が唐辛子に耐え切れず、数日間は腹痛に悩まされる日々を過ごすことになる。辛さに体が慣れるまでは控えたほうが良い。また、匂いや味が少しでも変だと感じたら、迷わず皿の隅に吐き出すことが大切。特に魚肉のすり身や厚揚げを含む豆腐料理は危険なことが多い。高温多湿の環境下で保存された肉団子や豆腐は細菌が繁殖しやすい。高温で揚げたとしても中心部まで熱が通りにくい。回転の良い食事処は比較的安全だが、回転の悪い食事処は高確率で食材が腐っているので要注意。