カンボジアの貧困問題、現在の状況と見通し
※この記事は2016年に書かれたものです。カンボジアの貧困と開発に関する最新の記事一覧をこちらからご覧いただくことができますので、あわせてご覧ください。
世界銀行が2016年7月1日、カンボジアのマクロ経済見通し(Economic Outlook)を公開した。新しい世帯調査の結果を反映したものではいため、貧困指標(貧困率、貧困ギャップ率など)のアップデートは行われていないが、最新のマクロ経済状況を元に貧困を分析している点については参考になる。ここでは、世界銀行の報告書から貧困問題に関するポイントをまとめてみた。
カンボジアは低所得国から卒業
2015年の一人当たり国民総所得(GNI)は$1,070だった。これは低所得国の基準値$1,025を上回る水準。世界銀行は2017年からカンボジアを中低所得として扱うこととなる。なお、一人当たりGNIによるカテゴリ分けは、世界銀行を含む国際金融機関の貸し付け条件の目安となることが多い。
貧困削減の主役が農業から縫製業と建設業へ
カンボジアは農村部の農業の成長によって、貧困削減を進めてきた。しかし、最近では貧困削減の主役は縫製業と建設業に移りつつある。近年は天候不順によって農業の成長が芳しくなく、今年はエルニーニョ現象で干ばつの被害もあった。こうしたことから、世界銀行は貧困削減の担い手が農業から縫製業や建設業へと移っていると分析している。
都市部と農村部で異なる貧困削減の要因
都市部と農村部では貧困削減のドライバー(主役)が異なる見方もある。都市部では縫製業、建設業、サービス業が主役。農村部では農業収入の家計に占める割合が急速に縮小している。農村部の低所得者層40%の収入の内、農業収入は25%に留まる。収入源の多様化は食糧価格の下落による負の影響を軽減したと捉えることもできるが、同時に、農業収入の低下という側面も無視できない。
絶対的貧困は減少したが、脆弱層は減らず
絶対的貧困層は減少傾向にある。しかし、貧困線を少しだけ超えたところに多くの人々が留まっている。中間層への厚い壁を打破するためには、低所得者層の人間開発(教育、保健、衛生等)を改善する必要があるとの見方を世界銀行は示している。
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結論
貧困削減は引き続き継続されるも、そのペースはこれまでより緩やかなものになる見通し。
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