日本とカナダの雇用保険、マルチジョブホルダー制度
日本の雇用保険制度でマルチジョブホルダー制度というのができました。適用は65歳以上の労働者となっていて、65歳未満の労働者には適用されないという理解です。
日本の雇用保険制度では、パートタイム労働者は、1週間の労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に、事業所は雇用保険適用をしなければいけないことになっています。
この制度下では、雇用保険料を負担したくない事業所は、1人を40時間雇用するより、20時間ずつ2人を雇用しようと考えるかもしれません。そうすると、困るのはパートを掛け持ちしている労働者です。
事業所Aで月曜日と火曜日に16時間働き、事業所Bで木曜日と金曜日に16時間働く場合、どちらの事業所も雇用保険の適用義務はなく、この労働者は雇用保険に加入できません。
この状況を解決するために、「複数の事業所の勤務時間を合算して20時間以上あれば加入できますよ」と決めたのが雇用保険マルチジョブホルダー制度の意義だと理解しています。
でも、どうして65歳以上の労働者に限定されているのでしょうか。65歳未満の現役世代には適用されない制度のようですが、何か課題があるのでしょうか。私の好きな(第二の故郷出身の)たまきチャンネルで背景を解説いただけると嬉しいです。
ちなみに、カナダの制度はアプローチが若干異なりますが、比較的シンプルです。
カナダの雇用保険制度は、日単位ではなく、時間単位で適用条件を決めています(さらに、受給に必要な適用時間も居住区の失業率によって異なります)。給付額は平均賃金の55%です。
たとえば、週給500ドルのジョンさんが失業した場合、基本給付は275ドル(55% x 500)。受給期間中にパートの仕事を見つけたジョンさんは、3日間働いて週給300ドルを稼ぐ。
この場合、労働収入300ドル÷2=150ドルが、基本給付275ドルから差し引かれます。ジョンさんは、雇用保険制度から125ドル、パートの仕事から300ドル、合計425ドルの収入を得ます。
1ドルの労働収入を得るたびに、基本給付から0.5ドル差し引かれる計算です。前の収入の90%まではこのルールが適用され、それ以上の収入となった場合、1ドルの労働収入に対し基本給付も1ドル減額される形になります。
このカナダの制度設計では、日単位ではなく時間単位で適用条件を決めていることと、労働時間ではなく労働収入の上限を設けることでマルチジョブホルダーを取り込んでいます。行政側は保険料計算のために収入に関するデータを既に持っているので、労働時間で適用条件を決めるよりも容易に実施できます。
シンプルと言ったにもかかわらず、わけのわからないややこしい話になってしまったかもしれません。アジア諸国の政労使の実務家へ向けた雇用保険に関する研修のためにいろいろ準備しています。その中で日本の制度が気になったので調べていました。
【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について ~ 令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します~
申請をしていただく際は、以下の届出様式をご活用ください。 届出様式は各ハローワークでも配付しています。 <マルチ高年齢被保険者となるために申出を行うとき> (様式第1号)雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届 (様式第1号の2)マルチジョブホルダーの働き方に関するアンケート調査票(雇用保険被保険者資格取得時) <マルチ高年齢被保険者でなくなったとき> …