ILOで条約や政策づくりに携わることは、特効薬ではなく漢方薬なのかもしれない
先日の記事で「途上国を良くするには事業をやらねば」と書いてふと我に返った。自分が働いているILOの役割は何なのだろう。
開発途上国の現場からは遠く、開発事業は主流ではない。事業予算は増加傾向にあるようなので、プロジェクトは今後増えていくだろうが、伝統的には事業に強い機関ではないのはたしか。
ILOの強みは、条約を作ること。加盟国が条約を批准すれば、加盟国は国会に付議する義務が生じる。労働や社会保障の問題を国際場裏で議論するだけではなく、各国の政治の舞台へ上げることができる。国際機関はたくさんあるけれど、この芸当ができるのはILOだけである。
そもそも批准しなければ何も始まらないというのも事実。ただ、労働者の基本的な権利や、基本的な社会保障はみんなに必要だよね、といった国際会議では批判しにくいものも多い。そういう条約を作って、各国が批准し、実際の政策に反映されていく。
気の長くなるようなプロセスだが、ILOのお家芸と言える部分だろう。
事業は途上国をよくするために直接携わることができる場所。だとすれば、ILOで条約や政策づくりに携わることは、特効薬ではないけれど、長期的に国のシステムに変革を促す漢方薬のようなものなのだろう。