アインシュタインの挫折

若きアインシュタインはスイスの首都ベルンで役所仕事に従事します。アルバイトを転々とした末に得た、生きていくための仕事でした。

アカデミアでのキャリアを夢見た若者にとってそれは最初の挫折だったのかもしれません。美しい石畳の町並みも、憂鬱な曇り空と同じ色。春の訪れを告げる路上の花屋もきっと灰色に見えたはず。

それでも彼は、夢の続きを見ることを諦めませんでした。平凡な成績で学校を卒業したことで断たれた夢。その続きを見たい。そう思ったのでしょう。

仕事は週48時間。空き時間を使って研究を続けたアインシュタインは、それらから数年で夢の実現に立ち会うこととなります。

その後の偉業の数々は説明するまでもありません。

アインシュタインと私を比べることは今もこれからもないでしょう。しかし、ふと我に返ったとき、誰もが同じような体験の1つや2つあるのかもしれません。

私は大学院を平凡な成績で卒業しました。それが故に、博士課程への扉を今でも開けることができずにいます。

国際協力の実務に携わりはじめてからの数年間は、プライベートの時間の殆どを自宅の机の前で過ごしていました。論文を読んだり、書いたり、データ分析を勉強したり、学校へ通ったり。

ベルンに今も残るアインシュタインが住んでいた家の前を通ったとき、25歳の自分の背中が見えました。

仕事を選ぶとき、理想と現実の間で私たちは自問自答を繰り返します。それが良いのか悪いのか。答えは結局見つからず、理想を描いてみても思うように進まない。曇り空しか見えない日々の中で挫折を繰り返すのです。

科学者たちはアインシュタインの成功から多くを学びました。彼が天才であり、努力家であったからです。

私たちもアインシュタインの挫折から多くを学ぶことができるのかもしれません。彼が挫折を繰り返し、それでも好きなことを諦めない心を持っていたからです。