官僚の道へ進んだ友は家を建て、コンサルタントを選んだ私は違和感を持つ

四日間のジョグジャカルタ出張の最終日、シティリンク航空の突然のキャンセルにより想定より長く、ジョグジャカルタ市内に滞在することとなった。LCCが仕事に向かない最たる例で、LCCはコストカットのために客が少ない便をキャンセルして、別の便にまとめるということをよくやる。今回は往路も復路も同じ目にあった。みんな、断食明けのレバラン休暇に備えてか、今は旅行を控えているのだろうか。

このキャンセルによって思わぬ形で昼食の機会を得た。火曜日にBPJS-TKと打ち合わせした様子をリンクトインへ投稿したところ、知人からメッセージが届いた。「ジョグジャカルタにいるなら、夕食を食べよう」と。彼は50代の業界人で、世界銀行や国連開発計画のコンサルタントとして豊かな経験を持つ。昨年末、インドネシア大学人口問題研究所の60周年記念式典のパネルディスカッションに呼んでもらった際に初めて会い、その後一度コーヒーを飲んだくらいの付き合いだ。とはいえ、メッセージをせっかく送ってくれたのだから会わないわけにはいかない。一期一会である。

断食中のようだが、それ程厳格にやっているわけではなく、せっかくなので昼食を食べようという話になった。アディスチプト国際空港から10分程度のところにある、魚の養殖場に付属したレストランで食事となった。

昨日可決した軍法改正(軍人が出向できる政府機関の数を増やした)に係る大規模デモ、大統領の肝煎り給食事業、政府の汚職体質など、話題は多岐に及んだ。この世代の人々は、1990年代後半に起きたスハルト政権崩壊前夜に青春時代を過ごしていて、業界の知人たちの多くがデモ隊に参加していた。学生運動が独裁体制を崩壊させた美談だけでなく、それに伴う軍による暴力も同時に経験している。

彼の知人の話が興味深かった。官僚の道を選んだ知人は最近、大きな家を買い、富を自慢するために彼を招いたそうだ。「その金は合法的に稼いだのか?」と言いたくなるのを押し殺し、帰ってきたという。彼は政府の汚職体質に加担するのが嫌で、個人コンサルタントの道を選び、行政改革の仕事に陰ながら携わってきた。

たしかに、政府高官の基本給はせいぜい7百万ルピアで、それ以外の官僚は1-3百万ルピアが関の山であり、どうやって家や車を買っているのかと、いつも思う。副業規程がないのでサイドビジネスで稼いでいる人も中にはいるが、基本給以外に貰える成果報酬が大きいそうだ。政府高官ともなれば成果報酬部分が30百万ルピアにもなるようで、基本給はあまり意味のある指標とならない。そもそも官僚の成果報酬がどのように計算されるかはブラックボックスであるが、政府内で決められている講演料のやり取りもその一部なのだろう。インドネシア政府の仕事のサイクルとして、議論をするときにはショー形式でパネルディスカッションを五つ星ホテルでやる。その際に登壇すると一時間4百万ルピアといった形で加算されていくとされる。これはあくまで合法的に処理されているので質が悪い。

2015年から2020年にかけて、全国各地に空港が開業した。経済効果があるという理由で建設されたものらしいが、建設業へお金を還流することが目的だったと彼は言う。どの国でも同じだが、選挙で応援してくれた利益団体と産業へ税金で予算を配賦し、仕事を見返りとして与える。今回の大統領肝煎りの給食事業も同じで、利益団体と集票が念頭にあるという。

真偽は誰にもわからないが、新興国だけでなく先進国でも民主主義はそのように回っている。