国際協力を生業としていますが、仕事以外の部分を書いていきたいと思います。国際協力仕事人はどのような私生活を送っているのか。何を考え、キャリアを選択しているのか。様々な角度からコラムを書くことで、国際協力がより身近になればと考えています。

ILOの人事関連の数字

ILOの人事配置はこういう感じです。私のような外国人は、Professional and aboveの少ない椅子の争奪戦になります。以前、別の機関の人から、「ILOはRegularの比率がDCに比べて高いですよね」と言われたのですが、おそらく、DCの絶対数がUNICEFやUNDPより少ないためにRegularの比率が大きく見えるのだと思います。RegularとDCの違いは、各国のGDP比で毎年入ってくる拠出金と、ドナーが好きな分野でプロジェクトを作りたいときに追加拠出する任意拠出金の違いです。資金源が異なります。前者の資金源の方が安定していて、後者はプロジェクトの期間が終われば契約が終わります。 さらに読む

失業給付の自己都合退職の給付制限撤廃について

転職を促すため、自己都合退職の給付制限期間(2カ月)を撤廃し、会社都合と同様に7日の待機期間後に支給開始の方針。これは保険料率の増加要因です。過去2年で失業給付部分の保険料率は0.6%から1.2%へ引き上げられています。既に織り込み済みか、更に増額するのでしょうか。私もインドネシアの政労使と同様の議論を日々しています。保険料と給付はトレードオフなので、政府は良い側面(給付増等)のみ説明するのではなく、それによって保険料がどのように変化(増額幅)するかも同時に示すことで、国民はメリット・デメリットを天秤にかけられます。

そして、こうした情報を政府や審議会が公開するのであれば、その情報を世の中に周知するのはメディアの役割と責任です。インドネシアのメディアがこうした技術的な議論を正しく報道しないため、メディアの方をトレーニングしてほしいと私にも依頼があります。しかし、記事にならない研修にメディア関係者が関心を示すはずもなく、実施していません。おそらく日本でも同様の状況なのかと思います。

いずれにせよ、日本で何がどのように議論されているのかは、東南アジア諸国にとって良い教材なので、私も勉強させてもらっています。そして、よく使わさせていただいています。

バンコク滞在記とジャカルタとの比較

ジャカルタ空港ラウンジは寒すぎて、長居できなかったのと、お粥は市中のほうが美味しかった。当たり前か。これから一年ぶりに国外出ます。新旧パスポート多すぎて、入管職員が困っていた。マスクは任意だが、誰もしていない。この国では任意は意味をなさない好事例。

4年ぶりのスワンナプームは空いていて、SIMショップがゲート内にも大量に開店していて、SIM行列が無くなった。Grabは相変わらず違法なのかわからないが、取締警察は見当たらなかった。降機、入管、ATM、SIM、Grabまで30ふんは過去最短。

スワンナプームからバンコクへ向かう高速道路で変わったことと言えば、空き看板が目立つこと。まだ景気は戻っていないのか。

季節が逆のせいか、島国と大陸の違いか、ジャカルタの方がバンコクより圧倒的に涼しい。

バイクの数はジャカルタの方がバンコクより圧倒的に多く、Grabバイクに関してはバンコクではほとんど見ない。ジャカルタの道路を埋め尽くすGrabバイクヘルメットを見慣れたせいか、実数が少ないのか。

バンコク撤退時に住居敷金の払い戻し用に残してあったSCB銀行口座の閉鎖手続き。日本への送金に2000バーツ(8000円)手数料がかかる。国外からインターネットバンクやモバイルバンクにアクセスは不可のようで、駐在を終えたら閉鎖するの賢明かと思う。なお、年間維持費は400バーツ。

途上国への投資環境はETFの登場で日本からかなり簡単にできるようになり、旅行先での現金引き出しもクレジットカードで手軽にできるようになった。これを踏まえれば、海外駐在先でたくさんの口座を維持する利点はかなり低くなった。

バンコクのタイ式マッサージ店はインフレに飲み込まれていないようで、どこも250-300バーツを維持している。ただ、日本円が弱くなったことから、円で給与をもらっている人は3割増に感じるだろう。

ジャカルタとバンコクの駐在生活で充実度が圧倒的にバンコクの方が高いのは食。三千円も出せば満腹でベロベロになるまで好きな酒と肴を頂けるバンコク。ジャカルタでは、三千円では保存状態の悪いまずいワイン一杯で終わりではないだろうか。ましてや、ホッケの開き、青森産イワシなど新鮮な肴もない。

タイ人もインドネシア人も鶏肉が大好き。セブンイレブンにサラダチキンを納品しているタイのCPグループは、インドネシアでも子会社を通じて鶏肉の製造・販売を行っている。

タイの食堂とインドネシアの食堂の比較での気付き。

タイ。代表的な鶏肉料理カオマンガイ。蒸し鶏とココナッツフレーバーのごはんと、大根と鶏肉の出汁が効いた薄味のスープで提供される。

インドネシア。アヤムゴレン。骨付き鶏に味を染み込ませた唐揚げ。スープは鶏出汁より化学調味料と塩味が強い。

気候はさほど変わらないが、国民の食生活は極端に異なる。バンコクが華僑の街であるため、茹でる・蒸す・出汁を取るといった料理方法がタイ料理には組み込まれている。

ジャカルタはジャワ人の街で、ほとんどの料理に油を使う。イスラム教の食に対する制約もあり、料理方法にバラエティが極端に少ない。油を使わない例外はスープと焼き物。

首都の比較で興味深いのは、バンコク市民はスリム体型が多く、ジャカルタ市民は肥満体型が多い。食生活と医療費や健康寿命の差が、今後数十年のASEAN諸国の社会・経済的な課題となると確信している。

街の労働者を見ていても、ジャカルタとバンコクは随分異なる。ジャカルタでは日陰でスマホやタバコを楽しむ労働者が極めて多く、バンコクではほとんど見ない。ジャカルタの知人によれば、「できる限り手を抜こうとする国民性がある」らしい。バンコク市民は勤勉に見える。

グーグルマップの評価の違いも面白い。ジャカルタは大して美味しくないレストランや世界展開する普通のチェーン点も満点に近い評価をえていて、市民は自分の家族写真から何から店のページに大量の写真を投稿する。承認欲求と批判することを下品だと考える国民性によるところだと思う。バンコクでは個人商店はグーグルに掲載されていない、登録していないことが多く、外国人が隠れた名店を見つけることが難しい。多くの個人商店は英語を併記することもなく、コツコツと営業しているように見える。実力以上に大きく見せることをせず、できることを淡々とこなしている。

ジャカルタがバンコクより進んでいる点は、電子決済の普及。多くの個人商店も屋台もQR決済に対応していて、カフェやレストランでは現金決済を受け付けないところも増えている。新しい物好きで法・規制遵守意識が低く、政府も「国民が守れない法は規制を緩くして遵守率を上げる」法改正を頻繁に行う。

私のバンコクに関する記憶は、2020年1月が最後で、2023年4月の現在と比較している。電子決済はジャカルタ程普及していないように見える。コロナ前、クレジットカードの普及率がジャカルタと比較してバンコクは高かった。個人商店でQR決済が普及していないのは、中間層がQR決済の必要性を感じなかったためだろうか。ジャカルタとバンコクではQR決済の普及率に圧倒的な差がある。

バンコク市内の変化で目につくのは大麻販売店。医療用大麻が合法化されたことで急増している大麻販売店。バンコク中心部では、カフェと同じくらいの頻度で販売店を見かける。

酒を飲む人にとってジャカルタは窮屈で、バンコク、プノンペン、ハノイ、ヤンゴン、ビエンチャン駐在が飲食の幸福度が高い。

バンコクの働く世代の所得は上がっているのかもしれない。以前は日本人が経営する居酒屋といえば、日本人駐在員や日本からの出張者向けが多かった。今は居酒屋の客の大多数はタイ人の若者。店で一番高価な獺祭と小料理をしこたま平らげ楽しそうにしている。

店側も地元客向けのところが多く、華金となれば満席に近い。日本人向けの古いスタイルの居酒屋は閑散としている。

居酒屋で隣に座ったOLが誕生日ケーキをお裾分けしてくれた。会計時にコインを大量に持っていた私を見て、店員はコインを私から取り上げ、何も言わずにお札と両替してくれた。

タイが世界中の旅行客を魅了するのは、こういう側面だと感じる。インドネシア人も仲良くなれば、こういうことはあるが、見ず知らずの他人への心遣いはタイ人は頭抜けている。

国際機関で生き残りたい人へ、予算規模の観点

国際機関で働き始めた方や、これから働く方からよくいただく質問は、生き残る術。分野にさほどこだわりがない場合、金回りの良い機関に行くことをおすすめします。人道援助・緊急支援の実施機関やUNICEF・UNDPです。こういうことを言うと、現職員の方に苦労話をされて怒られるのですが、会計年度途中で先進国の補正予算が配布される要件は「緊急性」「予算執行力」です。日本の場合、通常予算が議論されるのは夏です。ウクライナ侵攻が始まったのは2月で、前年夏時点では想定されなかった緊急を要する支援に追加拠出するために補正予算を組みます。緊急性を要する名目で確保された予算なので、予算年度末までに確実に執行する能力が実施機関には求められます。また、ODA予算のほとんどは外務省に配賦。上に挙げた国際機関の担当省庁は日本の場合、外務省です。緊急性、担当省庁、実務能力の条件に合う機関に勤めるのが、生き残る近道となります。 さらに読む

NHK党と政治家女子48のゴタゴタから見る部下の育て方

旧NHK党現政女党の動きを追っているのですが、勉強になります。部下を育てる方法。小隊が大隊になるための広報戦略。情報開示と信頼。会計。組織体制と権限。政治と選挙の分離。スピード感。メディアの切り抜きだけでは追えない情報量で朝と夜では状況が真逆になったりします。 さらに読む

RCTが理解を得られない

RCTは予算がかかりすぎるのと、設計しても同僚の理解を得られない弊社から見れば羨ましい限りです。 さらに読む

専門家と営業マンの対立と私

ピーターティールの本の一節に「科学は見るからに難しそうなので、過大評価される」「専門家は自分の仕事は大変だと感じ、営業がランチに2時間出かけていることをサボっているとみなす」という話があって、研究と実務を行き来する私は5万回頷いて首がもげそうになった。 さらに読む

インドネシア人の気質と管理職に求められること

インドネシアで仕事をするときに念頭に置いているのはインドネシア人の気質。私は毎月のように労働者・経営者・官僚と公開討論のようなことをやっている。その中で、インドネシア人の気質や性格を理解した上で話さなければ、心に刺さらないことも良く理解した。

最も特徴的なインドネシア人の気質は、承認欲求・自己顕示欲が極めて強いこと。大勢がいる中で叱責することは論外として、部署や班といった身内の中で失敗の再発を防止するための改善策を議論することも嫌う。自分の尊厳が傷つけられていると感じる極めてナイーブな気質を持つ。

顕著な事例としては、良い知らせは黙っていても耳に入るが、悪い知らせは手に負えなくなるまで耳に入ってこない。報連相が根付いていないインドネシアでは、自分の成功を最優先に報告し、失敗やリスクは上司や関係者に黙っていることが多い。自分に権限があるかどうか関わらず、失敗やリスクを内密に帳消しにする方法を模索する傾向にあるため、上司や取引先の知らないところで権限・契約に反する形で行動していることもある。そもそも権限・契約・規程を遵守する意識はほとんどない。そのため、上司・取引先は知らないところで何が起きているのか常に注視する必要があり、マイクロマネジメントが不可欠になる。

裏返せば、マイクロマネジメントする人が優秀な管理職とみなされている感覚もある。部下や取引先が期日通りに仕事をしているかを常に管理する。約束を忘れていることが極めて多いため、部下や取引先へのリマインドが日々の仕事になる。

解決策は、マイクロマネジメントに秀でたインドネシア人を管理職に置くことだと感じる。しかし、これができる人材がインドネシアには極めて少ないうえ、超高給でトップ企業で働いていることが多いため、一般の中小企業には手が届かない。

日本にはこの手の人材は山ほどいて、超高給でもない。こういう気質の違いを作るのは教育なのだろうと日々感じる。期日を守らなくとも、仕事をしなくても、責められず、成功したときだけ褒められる社会。どちらが幸せかは正直わからない。

注釈。私のサンプルには大企業はない。労働者、経営者、官僚のいずれも、日本企業が直接投資しているような超優良な市場で生きている人々ではなく、ジャカルタの中流階級がサンプルだと考えている。

マイナンバーカードとオンライン在留届

在留届は「在留届電子届出システム(ORRnet)」でオンライン登録可能だが、在外選挙人登録は窓口のみ。「在留届を在外公館の窓口へ提出する際に一緒に行えます」と案内されているが、PDF印刷・署名のうえ「窓口」のみ。

現状、「在外選挙人証の申請から受け取りまでには約2~3か月程度を要し…在外選挙人証は、市区町村での発行手続きの後、外務省経由で当館に届く」。マイナンバーカードを出国時に自治体に返却せず、それを使って在外選挙人登録を行えれば3か月も省庁間調整に時間が掛からなくなるのだろう。

多くの国際機関で働く人がそうかもしれないが、私の場合、契約期間は必ず1年更新かそれ以下で、2-3か月ごとの延長ということもよくある。実際、5月末で契約が切れるので、年末までの7か月延長手続きを丁度始めたところだ。来年一月以降の契約は、予算はあるがキャッシュフローの問題で、今は延長できない。国際機関の中にもキャッシュフローが膨大な大企業である世界銀行、UNDP、UNICEFや人道援助機関ではこういうことは少ないのかもしれない。しかし、中小企業であるILOの中の小さな部署の責任者である私の感覚は、零細企業の経営者。毎日資金繰りと人員のことばかり考えていて、組織から予算が配賦されるわけでもなく、独立採算制で私が解決しなければならない。スタッフの給料を支払った後に残った予算で自分の契約延長を行う。

私のように一年以下の契約で在外勤務している人にとっては、3か月先というのは見通しが立たない長い期間と感じる。マイナンバーカードとデジタル技術でオンライン在留届と一本化されることを切に願っています。

昨年、日本の一時滞在を終える際にマイナンバーカードを自治体へ返却しようとした際、将来的に国外在留者にもマイナンバーカードを発給する見込みがあることを聞いた。そのため、返却せずに渡航することを勧められた。現状、在留届をして国外に滞在しているが、マイナンバーカードは保持している。

こういう状況を鑑み、おそらく、新年度早々には国外在留者にも発給が始まるのだろうと思います。

研究をフルタイムでやる人

私の仕事は経営・運営もありますが、零細企業なので自分で手を動かす必要もあります。それで最近の比重が物書きになっていて良く煮詰まります。これを一生やるフルタイムの研究者や物書きを生業にできている人を尊敬します。ご覧のように私のリストは大したことないです。 さらに読む