国際機関で生き残りたい人へ、予算規模の観点

国際機関で働き始めた方や、これから働く方からよくいただく質問は、生き残る術。分野にさほどこだわりがない場合、金回りの良い機関に行くことをおすすめします。人道援助・緊急支援の実施機関やUNICEF・UNDPです。こういうことを言うと、現職員の方に苦労話をされて怒られるのですが、会計年度途中で先進国の補正予算が配布される要件は「緊急性」「予算執行力」です。日本の場合、通常予算が議論されるのは夏です。ウクライナ侵攻が始まったのは2月で、前年夏時点では想定されなかった緊急を要する支援に追加拠出するために補正予算を組みます。緊急性を要する名目で確保された予算なので、予算年度末までに確実に執行する能力が実施機関には求められます。また、ODA予算のほとんどは外務省に配賦。上に挙げた国際機関の担当省庁は日本の場合、外務省です。緊急性、担当省庁、実務能力の条件に合う機関に勤めるのが、生き残る近道となります。

それ以外の機関で生きていくには、安定したポストを運良く確保するか、経営者マインドで仕事をするかです。多くの国際機関職員は、「雇われマインド」です。上司や大使館から「プロポーザルを書いて」という話がやってきて、新しい資金源が確保され、契約が延長されていきます。

このチャンスが多いのが上記に挙げた機関だと思います。

ILOのように金回りの悪い機関の場合、生き残るためには経営マインドが必要です。誰にも頼まれていないのに、各国大使館、民間企業、現地企業に営業を常に行い、小さなチャンスをものにします。当然、時間をかけて書いたプロポーザルの打率は低いです。頼まれていないのですから。

技術協力の場合、事業規模も小さく、年間予算が500万円から3000万円程度であることが多く、一案件では人件費も賄えません。

例えば、私のポストを一年間維持するためには、2400万円の予算措置が必要で、現地職員一人追加すると1000万円です。ここには様々な費用が入っていて、実際の給与の何倍もの予算措置が必要となります。

小さな案件を一つ獲得するのも大変ですが、3件くらい掛け持ちしなければ、自分のポストすら維持できません。案件が終わる前に新しい事業獲得のために営業も同時に行う必要があります。上司や事務所や組織が探してきてくれるわけではなく、自分が獲得してきた案件が事務所の実績となるのです。

ここからは納得行かない部分ですが、人事部は新規案件を獲得してきた本人を無視して公募にかけることもあります。そんなときは、散々抗議して大声で騒ぎ回りましょう。大事にしなければ、誰も話を聞いてくれません。最終的に合理性を欠く形で不利益を被った際には、ILO設置されている国連職員のための裁判所に提訴する人も結構います。私は提訴した経験はありませんが、インターン時代の上司は急に雇い止めされたことを不服申立てし、一年分の給与を働かずして勝訴しました。

従業員マインドでやっていける環境にいる方は、幸運だと思います。経営者マインドで孤独に戦う人も増えていくと思います。

私の視点から見えている世界はこういう感じです。