バンコク滞在記とジャカルタとの比較

ジャカルタ空港ラウンジは寒すぎて、長居できなかったのと、お粥は市中のほうが美味しかった。当たり前か。これから一年ぶりに国外出ます。新旧パスポート多すぎて、入管職員が困っていた。マスクは任意だが、誰もしていない。この国では任意は意味をなさない好事例。

4年ぶりのスワンナプームは空いていて、SIMショップがゲート内にも大量に開店していて、SIM行列が無くなった。Grabは相変わらず違法なのかわからないが、取締警察は見当たらなかった。降機、入管、ATM、SIM、Grabまで30ふんは過去最短。

スワンナプームからバンコクへ向かう高速道路で変わったことと言えば、空き看板が目立つこと。まだ景気は戻っていないのか。

季節が逆のせいか、島国と大陸の違いか、ジャカルタの方がバンコクより圧倒的に涼しい。

バイクの数はジャカルタの方がバンコクより圧倒的に多く、Grabバイクに関してはバンコクではほとんど見ない。ジャカルタの道路を埋め尽くすGrabバイクヘルメットを見慣れたせいか、実数が少ないのか。

バンコク撤退時に住居敷金の払い戻し用に残してあったSCB銀行口座の閉鎖手続き。日本への送金に2000バーツ(8000円)手数料がかかる。国外からインターネットバンクやモバイルバンクにアクセスは不可のようで、駐在を終えたら閉鎖するの賢明かと思う。なお、年間維持費は400バーツ。

途上国への投資環境はETFの登場で日本からかなり簡単にできるようになり、旅行先での現金引き出しもクレジットカードで手軽にできるようになった。これを踏まえれば、海外駐在先でたくさんの口座を維持する利点はかなり低くなった。

バンコクのタイ式マッサージ店はインフレに飲み込まれていないようで、どこも250-300バーツを維持している。ただ、日本円が弱くなったことから、円で給与をもらっている人は3割増に感じるだろう。

ジャカルタとバンコクの駐在生活で充実度が圧倒的にバンコクの方が高いのは食。三千円も出せば満腹でベロベロになるまで好きな酒と肴を頂けるバンコク。ジャカルタでは、三千円では保存状態の悪いまずいワイン一杯で終わりではないだろうか。ましてや、ホッケの開き、青森産イワシなど新鮮な肴もない。

タイ人もインドネシア人も鶏肉が大好き。セブンイレブンにサラダチキンを納品しているタイのCPグループは、インドネシアでも子会社を通じて鶏肉の製造・販売を行っている。

タイの食堂とインドネシアの食堂の比較での気付き。

タイ。代表的な鶏肉料理カオマンガイ。蒸し鶏とココナッツフレーバーのごはんと、大根と鶏肉の出汁が効いた薄味のスープで提供される。

インドネシア。アヤムゴレン。骨付き鶏に味を染み込ませた唐揚げ。スープは鶏出汁より化学調味料と塩味が強い。

気候はさほど変わらないが、国民の食生活は極端に異なる。バンコクが華僑の街であるため、茹でる・蒸す・出汁を取るといった料理方法がタイ料理には組み込まれている。

ジャカルタはジャワ人の街で、ほとんどの料理に油を使う。イスラム教の食に対する制約もあり、料理方法にバラエティが極端に少ない。油を使わない例外はスープと焼き物。

首都の比較で興味深いのは、バンコク市民はスリム体型が多く、ジャカルタ市民は肥満体型が多い。食生活と医療費や健康寿命の差が、今後数十年のASEAN諸国の社会・経済的な課題となると確信している。

街の労働者を見ていても、ジャカルタとバンコクは随分異なる。ジャカルタでは日陰でスマホやタバコを楽しむ労働者が極めて多く、バンコクではほとんど見ない。ジャカルタの知人によれば、「できる限り手を抜こうとする国民性がある」らしい。バンコク市民は勤勉に見える。

グーグルマップの評価の違いも面白い。ジャカルタは大して美味しくないレストランや世界展開する普通のチェーン点も満点に近い評価をえていて、市民は自分の家族写真から何から店のページに大量の写真を投稿する。承認欲求と批判することを下品だと考える国民性によるところだと思う。バンコクでは個人商店はグーグルに掲載されていない、登録していないことが多く、外国人が隠れた名店を見つけることが難しい。多くの個人商店は英語を併記することもなく、コツコツと営業しているように見える。実力以上に大きく見せることをせず、できることを淡々とこなしている。

ジャカルタがバンコクより進んでいる点は、電子決済の普及。多くの個人商店も屋台もQR決済に対応していて、カフェやレストランでは現金決済を受け付けないところも増えている。新しい物好きで法・規制遵守意識が低く、政府も「国民が守れない法は規制を緩くして遵守率を上げる」法改正を頻繁に行う。

私のバンコクに関する記憶は、2020年1月が最後で、2023年4月の現在と比較している。電子決済はジャカルタ程普及していないように見える。コロナ前、クレジットカードの普及率がジャカルタと比較してバンコクは高かった。個人商店でQR決済が普及していないのは、中間層がQR決済の必要性を感じなかったためだろうか。ジャカルタとバンコクではQR決済の普及率に圧倒的な差がある。

バンコク市内の変化で目につくのは大麻販売店。医療用大麻が合法化されたことで急増している大麻販売店。バンコク中心部では、カフェと同じくらいの頻度で販売店を見かける。

酒を飲む人にとってジャカルタは窮屈で、バンコク、プノンペン、ハノイ、ヤンゴン、ビエンチャン駐在が飲食の幸福度が高い。

バンコクの働く世代の所得は上がっているのかもしれない。以前は日本人が経営する居酒屋といえば、日本人駐在員や日本からの出張者向けが多かった。今は居酒屋の客の大多数はタイ人の若者。店で一番高価な獺祭と小料理をしこたま平らげ楽しそうにしている。

店側も地元客向けのところが多く、華金となれば満席に近い。日本人向けの古いスタイルの居酒屋は閑散としている。

居酒屋で隣に座ったOLが誕生日ケーキをお裾分けしてくれた。会計時にコインを大量に持っていた私を見て、店員はコインを私から取り上げ、何も言わずにお札と両替してくれた。

タイが世界中の旅行客を魅了するのは、こういう側面だと感じる。インドネシア人も仲良くなれば、こういうことはあるが、見ず知らずの他人への心遣いはタイ人は頭抜けている。