GRABドライバーとの会話から考えるインドネシア年金制度

インドネシアではニンニク注射ならぬ点滴がサラリーマンたちには人気らしい。血液検査諸々のあと、ウイルス性ではないらしいが、体調悪いので点滴。たしかに元気になる。

診療所へ行く道中も楽になったもので、Grabで簡単にタクシーを呼べる上に行き先を告げる必要もない。ドライバーは時折英語を話す人もいて、英語を話すのになぜGrabでドライバーなんてやっているのだろう、と思うことも多い。

もちろん軽蔑の念ではなく、日本では英語を話せるだけでそこそこ仕事は得られるのに、なぜ大して稼げないGrabで個人営業しているのだろう、とふと思うわけだ。

体調の悪い中、英語で話しかけてくるドライバーとふらふらしながらそんなやり取りをする。安全管理の観点からも、あまり自分のことを話さないように心がけていて、最も効果的なのは、こちらから質問すること。

今日のドライバーは、新車を運転していて、「Grabでそんなに稼げないでしょう」と聞くと、「娘の車だ」という。車種は安いダイハツとはいえ、150万円の新車。どうやって買ったか聞くと、ローンだという。

ジャカルタでは日本メーカーの新車が街を埋め尽くしているが、銀行と販売店が組んでローンとパッケージで販売しているようだ。運転手の場合、月々3万円払っていて、全額返済するには300万円払わねばならないようで、車両価格の二倍。それでもジャカルタ市民は新車を買うようだ。

なぜ英語を話せるのか問うと、若い頃にアメリカに住んでいたことがあったらしい。ワシントンDCに2年住んでいたことを伝えると、話が盛り上がった。違法か、合法か聞かれ、不思議に思っていると、「俺の場合は3年違法に住んでいた」と運転手は笑い始めた。違法労働でアメリカはそれほど長期で滞在し、何もなく出国できるのか、謎は多かった。時々英語の流暢な運転手はいるが、大抵の場合、外国で出稼ぎをしていた経験を持っている。ジャカルタでは副業としてGrabドライバーをやっている人にはあまり出会ったことはなく、本業でやっている人が多い気がする。

3万円のローンを返しながら生計を立てるほど稼げるとは思えないが、社会保険や税の支払いをほぼせず、子供が親を養っているのだと思う。負担を次の世代へ先送りすることが当たり前の社会で、年金制度改革を説明するのは難しい。それでも、インドネシア社会は今やらないと、かなりまずいことになる。