被災するインドネシア、地震と雇用保険

インドネシアで災害が起きている。この国で社会保障整備を仕事としている身としては、どこかのタイミングで災害と社会保障についてプレゼンせねばと思っている。

インドネシア地震・津波、犠牲者の埋葬始まる 死者数は大幅増加

9月28日にマグニチュード(M)7.5の地震と津波に襲われたインドネシア・スラウェシ島パルで1日、ボランティアによる犠牲者の共同墓地への埋葬が始まった。 9月28日の地震はスラウェシ島西部の広範囲に被害を引き起こした。インドネシア国家防災庁は2日、死者数が1200人超になったと発表。これまでの844人から大幅に拡大した。 …

まず、今回の震災で多くの方が死亡している。インドネシアの社会保険に加入している労働者は死亡保障給付を受ける権利がある。これは雇用主が毎月の給与の0.3%を天引きの上、納付することで加入義務化されている制度。一方、大多数の非正規雇用者は対象となっていない。

しかし、死亡保障給付は労働関連での死亡に限られるため、労働中の被災による死亡が給付要件を満たすかどうかは不透明な部分がある。

震災が多い日本には、震災失業という言葉がある。震災に伴う失業のことで、インドネシアのように日本と同等に災害が頻発する地域への教訓は多い。

震災が起きた際、休業を余儀なくされる会社が増え、労働者は必然的に大量失業となってしまう。これが震災失業であり、雇用保険の役割は極めて大きい。

雇用保険のある日本では、震災の際に特例措置を適用した。実際に離職していなくとも失業給付が受け取れる仕組みであり、被災者の一時的な損失を緩和する役割を担う。

被災の規模や復興ペースを見極め、政府は失業給付の給付期間の延長を行うこともある。これは雇用保険制度が整備されているからこそ、迅速かつ柔軟に対応できるもの。

インドネシアでは雇用保険制度はない。こちらのページには「ある」と書いてあるが、「ない」。あるのは企業の退職金制度で、法律で義務化されている。これは社会保障制度ではなく、企業責任。

雇用保険制度がないインドネシアでは、雇用保険制度導入が議論されている。制度設計やコンセプトを議論している段階だが、ILOは助言する機会を得ている。今回の震災も一つの題材として議論に取り上げたい。

最後におまけ。日本の雇用保険財源の推移。

【図解・行政】失業手当に関する国庫負担割合の推移(2016年12月):時事ドットコム

グラフィック・図解:  厚生労働省は2日夕、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会に、失業手当などに充てる雇用保険料の引き下げを柱とした雇用保険制度改革案を示し、大筋了承された。2017年度から3年間、労使折半で負担する保険料を総賃金の0.8%から0.6%に、失業手当に関する国庫負担割合を13.75%から2.5%に下げる。いずれも過去最低となる。 …

敦賀一平◆国連職員◆元JICA職員 on Twitter

ちなみに、社会保障の最低基準を定める102号条約を批准しているアジアの国は日本だけです。ベトナムが批准へ向けて制度整備する方針を固めており、私を含めILOが支援しています。予算は日本政府の拠出金です。つまり、日本はILOを通じて、ベトナムの社会保険制度整備を支援しているわけです。 https://t.co/48pYG7h8au