インターネット上の言論空間は批判ではなく称賛が増えた

30年間ネット住人をやっていて感じることは、肯定的な言論が好まれる風潮が強くなったということ。感覚的に、2000年代中旬にブログを始めた頃、インターネット上の言論空間は批判が九割、称賛が1割だった。2020年代の今、批判は1割、称賛が9割となった。

前向きな発言をすればフォロワーや閲覧数が稼げる時代となり、批判めいた発言は後ろ向きと捉えられる時代。

1990年代にインターネット上で自作の詩や小説を投稿するコミュニティサイトがあったが、そのような趣味の世界でさえ、投稿された作品には否定的なコメントが多く届いていた。かくいう中学生の私も、その経験者だった。

2010年代に就職してからは、実名でブログを書いている会社員は皆無で、異様な目で見られていた。前向きなことだけでなく、活動や社会が改善すべき点についても批判めいたことも書いていたと思う。振り返ってみて感じることは、肯定や称賛だけでは改善点が洗いだされず、成長は見られなかった。

一方、肯定や称賛で表向きの体裁を整える風潮のある現代社会において、それは革新的なアイデアや事業が生まれる可能性を秘めている。前向きな人々が集まった集団が同じ方向へ向くためだ。

しかし、全ての人、全ての事象が一発当てられるわけではない。批判に晒され続けることで、日々改善していく胆力と姿勢を鍛える機会を得ることは難しい時代となった。ただ、その一歩一歩が多くの人々にとって大切だということは、変わっていないような気がする。