国民性を理解して、国際社会で仕事をすること

様々な国や社会で生活をし、チームを統率して仕事を前へ進めようと思う時、その国の国民性を理解することは必要不可欠となる。

もっと噛み砕いた話をしよう。喫茶店で食べ物を注文する場面を想像してみて欲しい。日本では席に着くとウェイターがおしぼりと冷たい水を持ってきて、メニューを渡すなり「決まったらお声がけください」と笑顔で帰っていく。注文が決まると、それを察したウェイターは遠くからやってきてポケットから注文票とペンを取り出す。コーヒーと軽食を注文するとウェーターは言葉を返す。「コーヒーは食後がいいですか」そのようにして欲しいと伝えると、軽食を食べ終わるにを見計らってコーヒーが運ばれてくる。

これがインドネシアだとどうなるか。まず、座席についてから手を大きく振ってウェイターを呼ぶことになる。ウェイターの視線はスマートフォンに落ちているので、存在に気付いてもらうまでに相当時間がかかる。それからウェーターがようやくやってきて、「メニューをください」と頼む。ウェイターは奥からメニュー表を持ってきて、こちらはコーヒーと軽食を頼む。その際、「コーヒーは食後でお願いします」と伝える。数十分後、軽食とコーヒーが同時に運ばれてくる。

これを回避するためにやらなければならないことは、まず座席に着く時にメニューを自分で手元に持ってくる。メニューが決まるとウェーターを呼び、軽食のみを注文する。軽食を食べ終わるとウェーターを呼び、コーヒーを別に注文する。

これをマネージャーの立場から考える。一度に頼んでも頼んだことの3割ぐらいが実行されればよいほうで、物事を一度に頼んではいけない。その上で大切なのは可能な限りマイクロマネジメントをすること。日本ではマイクロマネージャーが嫌われるが、インドネシアではマイクロマネジャーが良いマネージャーと部下から見なされる。上司の仕事は戦略を示すことではなく、日々の仕事を部下にリマインドし続けること。

客が座席に着けばメニューを持って行けと指示する。部下が注文を取ってきた時に、コーヒーと軽食を同時に出すのか、コーヒーを後から運ぶのか聞いてくるようにもう一度指示を出す。部下が厨房にそれを伝えた時、厨房に改めてコーヒーと軽食を別々に作るように指示をする。コーヒーを間違えて作り始めた時、それを止めさせ、軽食のみを提供するように指示をする。ここまで細かく指示を出して初めてインドネシアでは仕事が動く。