覚悟
東京都知事選に立候補している石丸伸二さんの公開討論会を見ていると、地元を変える、日本を変える意義を感じます。人口減少が続く20年後、30年後の日本を想像し、今、変えなければならない。そういった趣旨の話をされていて、ふと気づくわけです。
人口2.7億人、若年層が増え続けるインドネシアで、私が国民を説得しようとしていることを。
「30年後にやってくる高齢社会への備えを今からやっておいた方が良い。そうすれば日本と同じ轍を踏まなくて済む。」
年配者の声が大きいインドネシアにあって、「息子世代が何とかする」「俺は死んでおらんけん」「女性は家庭を守るべき」と言われ、まともな議論ができない。
私はインドネシアの政治家ではないが、大演説をしなければならないことも多い。「自分の国ではないのに」と思いながらも、国の未来を語るとき、感極まってしまうこともあります。
それでも、毎年のべ500人から1,000人の政府、労働者、企業代表と議論をしました。これを六年間やりました。
この間、私が「単騎突撃」を繰り返したこともあって、雇用保険制度が新設され、国民皆年金制度や産休育休制度の新設についても国会で議論がはじまりました。インドネシアは少しずつ、良い方向へ向いています。
先週、私は40歳になりました。ジャカルタの居酒屋のカウンターで、ささやかな贅沢をしました。刺身をつまみながら、日本酒を半年ぶりに飲みました。一人、冷酒に浮かぶ泡を眺めながら思うわけです。
「公務15年。外国の社会をよくするために、10年もの間、日本で仕事をしていない。沈みゆく祖国のために何もしていない。それでよいのか。」
石丸伸二さんが三菱UFJ銀行を止め、安芸高田市長選挙に立候補したのは四年前。その動機は、腐敗政治の結果実施されることとなった地元で、無投票で新しいリーダーが選ばれることへの危惧だったように記憶しています。そして、安芸高田市は消滅の可能性がある過疎地であり、人口減少が課題の地方都市。
何を隠そう私の地元である士幌町は、30年以上もの間、無投票でリーダーが決められてきました。過疎も進み、子供の頃にあった商店街はほとんどなくなり、町には大型スーパーが一件あるのみ。消滅の可能性がある過疎地の筆頭の町である。浮上の見通しはありません。
また、北海道知事は20年6期続けて、北海道外の出身者です。北海道はよくなったのか。本州へ、首都圏へ、富も、人も吸い上げられているだけではないか。
40代。自分の居場所は、インドネシアや開発途上国なのか。この国をよくするために働くことはやぶさかではない。しかし、沈みゆく地元や祖国を眺めているだけで後悔しないのか。他国の開発政策、社会保障政策に15年費やして得たことを還元できないか。
東京都知事選の公開討論を聞いていると、そんなことを思いはじめるわけです。