働かないインドネシア人を監視する仕組みと写真文化

インドネシアでは部下がちゃんと働いていない場合がほとんどなので、上司の仕事は常に部下が働いているかどうかをチェックすることだ。大規模な組織になればなるほど、この役割は鮮明になっていく。一度指示したことを自立して黙々とこなしていく日本のような国とは異なり、この国では上司がいなくなるとあからさまに部下はサボり始める。同じ東南アジアであればベトナム、ミャンマー、タイでも仕事をしてきたが、これらの国では同様の問題に直面する機会は少なかった。この国ではほぼ毎日起きる。

インドネシアの会社や省庁もこれをよく理解していて、ちゃんと仕事をしているかどうか、定点観察をする仕組みを取り入れている。たとえば、省庁では、仕事をしている場面の写真を撮って上司に送ったり、システムにアップロードすることになっているところも多い。

街を歩いていると、清掃会社やホテルのスタッフ、道路で交通整理をしている警察が仲間と写真を撮っている場面をよく目にする。これはまさに上司に写真を送って報告しているところだ。また、イベントで登壇しているときにパネリストが自撮りをしていたので何をしているのかきいたところ、省の人事システムにアップロードしなければならなかったようだ。

ある時、知人が面白い話をした。空港からの配車で運転手が突然写真を撮ろうとしたというので、大きな揉め事になったという。知人としては子供の写真を勝手に撮るなという話だったが、おそらくこのドライバーとしては上司に報告するために、いつもの感じで写真を撮っただけだろう。運転手は顧客と写真を撮って配車会社へWhatsAppで送ることで証拠を提出する商習慣となっている。

そもそも、この国では誰も肖像権なんて気にしないし、他人を勝手に写真に収めることを何とも思わない。インドネシアの人がそれで嫌がる場面は一度も見たことがないし、むしろ写真を撮ってくれとみんな言うくらいだ。