トランプ関税、USAID解体、国連への拠出停止、インドネシアの状況

今年も残すところあと9ヶ月。やり残したこと、やりたいことはどんどん進めていく必要があるだろう。日本は春の桜の季節を迎える一方、インドネシアでは現在ラマダン明けの休暇で、官公庁を含む多くの機関が長期休暇に入っている。私のオフィスはインドネシアのカレンダーに完全には従っていないため、先週半ばからは通常業務を行っていた。

今朝は南スラウェシ地区のボントレルン地域のアラビカコーヒーを飲んでいる。スラウェシ島はジャカルタがあるジャワ島とは別の島で、マカッサルという主要都市がある。私がこのコーヒーを購入したのは、ジョグジャカルタの焙煎所だ。インドネシア国内には様々な焙煎所やコーヒー農園、カフェがあり、お気に入りの場所を見つけることも楽しみの一つになっている。

仕事の性質上、私はジャカルタを中心に活動しており、地方への出張機会は限られている。社会保障や雇用政策は中央政府の管轄であるため、地方出張より中央での業務が中心となる。地方の状況理解も重要だが、中央での課題が山積しており、そちらを優先せざるを得ない。結果的にスマトラ島にはまだ行けておらず、カリマンタン島も旅行で1回行っただけだ。スラウェシ島も1回のみで、主な活動拠点はジャワ島となっている。

地方大学での講義やワークショップなどで地方を訪れる際は、その土地の食事や地元の店を訪ね、カフェで一杯飲むことを小さな楽しみにしている。インドネシアではアルコールが手に入りにくいため、知人からコーヒーを楽しむよう勧められ、以来コーヒーを飲み歩くようになった。確かにインドネシアには日本では入手困難なコーヒーがたくさんある。現在飲んでいるボントレルン産のアラビカ種も、おそらく日本では取引されていないだろう。それほど高価ではなく、非常にお得な楽しみだ。

連休中はキンドルで本を読み、日本が行った台湾に対する開発政策について学んだ。これは国際協力、国際開発に携わる人にとって重要な知識だ。恥ずかしながら私もこの1年ほどで学び始めたが、もっと早く勉強すべきだったと感じている。イギリスの大学院で開発学を学んだ際には、イギリスの植民地政策をベースにした学問があったが、日本にも同様の学問があることを最近まで知らなかった。拓殖大学が台湾統治のための開発政策研究のために設立されたと知り、その教授陣による台湾での日本の開発政策に関する本を読んだ。

当時の日本は大英帝国と同等の外交的地位を得るため、彼らのやり方に倣いながら追い抜いていった。台湾では当時の最先端技術を導入し、東京でも実施されていなかった下水処理機能を台北で先に整備するなど、あらゆる知識と専門性を投入して開発を進めた。これらは開発学や国際協力に関わる人にとって大変参考になる内容だ。

さて、今年初めに発表されたトランプ政権によるUSAID(米国国際開発庁)の解体について触れたい。JICAとUSAIDは事業内容もアプローチも大きく異なるため、JICAが同様の状況になることはないだろう。USAID解体後、多くの優秀なスタッフはワシントンD.C.のシンクタンクなどに移っている。

先週、トランプ氏は世界各国に対する関税率を発表した。開発途上国の隅々までオフィスと人材を持ち、ネットワークを構築してきた組織を解体することは、1世代で可能かもしれないが、回復には1世代では足りないだろう。USAIDに関しては組織の問題点を理由に解体が進められたようだが、その裏側の真意は明らかでない。

トランプ氏の関税政策は経済的なカードを見せつつ、政治的な駆け引きの要素が強いと考えられる。トランプ氏自身も「全世界を対象とした関税発表により全ての国が交渉のテーブルに着いた」と述べていた。これは経済的な交渉というより政治的なブラフと見るべきだろう。

関税保護主義はアメリカの自由主義国としての信頼を損ない、株式市場の下落を招く。これはトランプ氏を支持した共和党の資金提供者の資産も毀損することになる。また、アメリカ国民の多くは老後資金を401k(確定拠出年金)で運用しているため、株価下落は国民全体に影響する。そのため、トランプ氏はこの政策を長く続けられないと見ている。

関税リストは経済学的な論理というより政治的な目的で作成され、交渉材料として使われている可能性が高い。各国、特に日本は独自の政治的交渉材料を持ち出し、日米の地位協定や在日米軍への資金支出などを含めた総合的な交渉を行うべきだろう。これは経済的な問題ではなく、政治的な交渉の場だと認識すべきだ。

インドネシアの市場は休暇中のため影響は出ていないが、月曜日の市場再開後には大幅な下落が予想される。インドネシアではルピア安がアジア経済危機時の水準に近づいており、インフレも進行している。この状況にトランプ関税が加わることで、市場はさらなるダメージを受ける可能性がある。

国際労働機関(ILO)としては、トランプ関税の影響分析も重要だが、政治的な戦略と捉え、インドネシア国内の問題にも注目すべきだろう。インドネシアの公共政策は人気取りの政策が中心で、長期的な投資になっていない点が問題だ。大統領が掲げた給食プログラムに全ての資源が集中し、他の重要政策が後回しになっている。

一方で、無駄な出張や高級ホテルでの会議を減らすなどの業務改革は評価できる。しかし、社会保障政策の観点からは、ポピュリスト的で長期的視点を欠いた政策が目立つ。最低賃金引き上げは労働組合の意向を反映したものだが、小企業や零細企業は対象外となっている。

また、労災保険については、インドネシアでは障害時に一時金しか出ない制度となっており、国際労働基準にも反している。これを年金化することが必要だが、政策立案者や政治家の多くがその重要性を理解していない。最低賃金引き上げと引き換えに労災保険料を削減するという措置がとられたが、これは世界的に見ても例がなく、長期的には保険財源を縮小させる。

ILOとして労災保険と雇用保険の財政検証を行い、政府に提案する予定だ。これには現状の批判も改善点も含まれることになるだろう。国際基準を満たすためには、労災保険の年金化が第一歩となる。

インドネシアの社会保障政策は、なるべく多くのお金を配り、なるべく少ない保険料を集めるという発想が基本にある。これは国民の支持を得るための短期的な戦略だが、最大の被害者は中間層、低所得者層、そして次世代となる。社会保険の積立不足は時間とともに次世代への負担を増大させる。

最後に、トランプ政権の国連や国際機関への姿勢は、1945年の戦後体制以来最大の危機をもたらす可能性がある。アメリカは世界最大のドナー国であり、国際機関への拠出金は各国のGDPに応じた経費配分と任意拠出金で成り立っている。アメリカの拠出金停止は、特に任意拠出金で運営されている事業やそのスタッフに大きな影響を与えるだろう。

国際機関の事業構造によって影響の現れ方は異なるが、ILOのような縦割り予算管理の組織では、資金源によって解雇の可能性が明確に分かれる。社会保障分野はアメリカからの予算がないため影響は少ないものの、組織全体としては人材の流動が生じるだろう。

こうした状況を見据え、私のチームでは昨年から職員数を減らし、業務委託を増やす方向に転換した。現地職員(シニア)1人を雇うには月7,000ドル前後、年間約84,000ドルの予算が必要だが、将来的な資金確保が難しいため、業務委託で短期専門家を多数活用する体制に移行している。おそらく1-3月だけで30-40人程度が業務委託として事業に参加している。

これからは限られた時間とリソースの中で事業を展開する経営感覚を持った人材が必要とされるだろう。私自身もその方向性でアウトプットを出し続けていきたい。


※この記事は、AIが筆者の音声ファイルを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。