気候変動対策の影
東京電力と東芝。
私が社会人生活を始めた2010年。
日本経済の根幹にあったこの二大巨頭が、後に紙面をにぎわすことを想像した人は多いはずだ。
もちろんそれは、赤字、上場廃止、債務超過といった暗い話題の提供者としてではない。
原発輸出の功労者としてである。
あの時、世界中が気候変動対策に夢中になり、原子力発電に熱狂していた。
ほとんど忘れかけていた記憶が、クローズアップ現代の特集を見て、鮮明によみがえってきた。
もはや忘却の影を辛うじて手繰り寄せる程度の記憶でしかない。
しかし、当時のニュースソースをあたってみても、動かぬ事実がある。
世界はクリーンエナジーとして原子力発電に熱い眼差しを向け、日本も国策として原発輸出を推進していた。
クローズアップ現代の特集によれば、東芝はこうした原発推進の世界的な潮流に乗って米国企業を買収したらしい。
東京電力もまた、原発輸出の最前線で日本代表として立っていた。
正直なところ、原発の是非については疑問を持っている。
しかし、一つだけ確信に近いことがある。
大きな崖を登り切った東電や東芝が、3月11日に見たもの。
振り返るとそこにはもう、梯子はなかった。
国際協力を通じ、世界の援助潮流や各国の国策を日々のニュースで追っている。
気候変動対策の議論も専門ではないが、アンテナには常にかかるようにしている。
そのたびに思いだすのは、この記憶である。