アジアと国益重視のODAは批判されるべきか

新ODA大綱が国益重視の方針を盛り込んで以来、日本の開発援助はアジア重視になりました。

大綱改訂前後にTICADでハイレベル会合に2回携わりましたが、アフリカからアジアへ支援がシフトした感覚は鮮明にあります。

JICA在籍時からインフラ開発ではなく政策支援に関心があった身としては、地域ではなく分野別の支援比率ももう少し議論されても良いと感じます。

ODA大綱に国益重視が明示されて以来、日本の開発援助が日本企業の進出斡旋になっていることに対して批判もあるようです。これについては一概に悪いこととは言えません。

昔から日本の援助は直接投資の尖兵となっていることはよく知られています。ヨーロッパ諸国が長年無償援助を実施してきたアフリカはなぜ成長しなかったのか。アフリカのリーダーは、「援助ではなく投資が欲しい」と言います。

JICAの新人時代に、「JICAの役割は何処にあるのか」と言うお題で議論する機会がありました。バチあたりな私は、「政策支援に力を入れなければ、日本企業の海外進出を支援する斡旋会社に成り下がりますよ」と言って同僚から白い目で見られた記憶があります。

幸か不幸かODAはまさにその方向へ向かっています。そしてODAは今後も日本企業の海外進出の尖兵となるはずです。それが悪いことだとは思いませんし、むしろ求められていることだと思います。ただ、もう少し政策支援のポートフォリオを膨らませて頂けると、私たちのような海外組が凱旋しやすくなります。

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以前、某商社マンにこの点について訪ねたことがあるけど、「税金使ってるんだから、ODAで日本企業を支援して当たり前じゃん」とのこと。良く言えば、日本と途上国のWin-Win関係ということかな。 https://t.co/OSaxCTK5kn

tomonari takeuchi on Twitter

日本企業支援的なODAそのものは問題ではない。援助される側が何を求めているか?次第。日本企業の製品やサービスが求められているのか?で日本企業支援的ODAの是非が決まる。 https://t.co/s4d6fSehjm

こう言う見解も国民目線ではありですよね。政府のオーナーシップのある国では、この論理で押して受け入れ国に判断委ねるのもありだと思います。逆に、政府のオーナーシップの無い国では、基本的にドナー国の案件提案が強くなるのが、実態だと感じています。

政府のオーナーシップの無い国で、日本の国益を優先した案件形成をして提案すると、それはもはやODAではなく、日本の特定企業に対するビジネス支援になるリスクもありますね。日本はDACの一員なのでODAの国際ルールに反するリスクは避ける必要もあり、現場は大変だろうなと察します。

ちなみに中国が世界中で国益重視の支援展開をできているのは、DACに入っていないので国際ルールに縛られないことが効いていると思います。では国益重視して日本もDAC脱退すべきだという人もいるかもしれませんが、それは無茶な話でしょうね。

ODA、インド太平洋が70%超 「一帯一路」を意識: 日本経済新聞

外務省は8月下旬に2019年度予算の概算要求をまとめる。同省の予算のうち6割は政府開発援助(ODA)が占め、名実ともに日本外交の重要なカードだ。16年のODAの実績をみると7割超はインド太平洋地域に集中する。

RIETI – 開発援助は直接投資の先兵か?-重力モデルによる推計-

経済産業研究所RIETIの出版物です。