国際機関の資金調達と予算の奪い合いという醜い争いの解決法

国際機関で長く仕事をしていると、企画書を書いて資金調達をする仕事を年に何回か行う機会がある。この仕事の一環で多くの同僚や他の国際機関の人たちと協力して一つのプロジェクトを実施することも多々ある。

その際に一番揉めるのは、小さな予算のパイを複数に切り分ける作業である。私が最も不毛で嫌いな仕事の一つである。論理的に突き詰めて、どれぐらいのインパクトを出せるかと考える人がいる一方、ただお金が欲しい、人件費が欲しい、給料が欲しいと考える人もいる。

仮に後者の人と不幸にもパイの切り分け作業を一緒にしなければならなくなった時、そこにはもはや解決手段というものは存在しなくなる。残念ながら、他方が良い事業にするという目的に向かうのではなく、自分の契約のために予算をなるべく多く獲得しようとする姿勢を取り続けることで、周りのやる気のある人たちからもやる気を奪っていく。

「曲がりなりにもプロフェッショナルなのだから、そんなことを面と向かって言う人はいないだろう」と考えるかもしれない。しかし、「事業の実施は後でどうにでもなるから、なるべく自分の給与予算を多く確保するために他の予算を削ろう」と真顔で言う人もいる。

こういったサイクルに入ってしまった時にはもはや打つ手はなく、協力関係は崩壊している。この最悪の状況の中で最良の選択は、プロジェクトの実施段階でなるべく別々に行動できるように計画を作ることで、議論をそちらへ誘導していくことが最も重要な作業となる。こうすることで、違う目的に向かってプロジェクトを運営しようとしている人と別行動することが可能となり、自分の周りのやる気のある人たちと良いプロジェクトに仕上げることが可能となる。

ちなみに、こういう醜い争いに持っていってしまう人は、ある意味可哀そうでもある。予算を獲得できるかどうかに自分の契約がかかっており、追い詰められた挙句、それをそのまま口に出して主張しなければならなくなっているからだ。

ただ、自分がそういう立場になりそうだと事前に察知し、リスク回避策を何重にも張り巡らしておくのが、「できる」人の作法であることも事実である。

資産運用と同じで、分散投資してポートフォリオを組む。つまり、複数のプロジェクトに首や足を突っ込んで、その都度数か月分の給与・活動予算を確保しておく。その代わりしっかりと給与分以上の成果を出す。こうすることで、一つのプロジェクトが何かの拍子になくなった場合、全滅するリスクを回避することができる。

とはいえ、明日は我が身、お互い様の側面もある。優しく、大らかに対応したいものだ。