卒業プログラムは途上国の子供の貧困を改善できるか?

社会保護は貧困層を救うことができるのだろうか。ここで重要なことは、一時的な貧困状態の改善ではなく、貧困から抜け出した世帯が二度と貧困状態へ舞い戻ってこないことだ。社会保護(Social Protection)は一般的に貧困の悪循環を断ち切ることを目的としている。言い換えれば、貧困が長期的に継続することを防ぎ、世代間の貧困の連鎖(親から子供への貧困の連鎖)を食い止める役割を担う。それにもかかわらず、社会保護の実務では、短中期的な効果を狙った案件が多い。どうすれば社会保護は本当の意味で、貧困の根を断つことができるのだろうか。

子供の貧困が一つのアプローチだろう。最近では、貧困からの卒業プログラム(Graduation Programme)が貧困と社会政策の議論の中心になりつつある。つまり、社会保護の受給世帯をいかに自立させ、自らの足で生計を立てる手助けを意図するプログラムだ。5月13日、英国開発学研究所(IDS)は「社会保護からの卒業(Graduating from Social Protection?)」と題する論文集を発表した。そこに、まさに子供の貧困と社会保護の役割の概念整理を行った論文が含まれている。

論文の中でIDS研究員キーティ・ローレンは、「卒業プログラムは2つの投資の罠を考慮すべき」としている。そうすることで、貧困の世代間連鎖を断つことができるという。

卒業プログラムが貧困の世代間連鎖の時間軸を見過ごす「失敗」を犯すことで、子供を要する受給世帯は、本質とは異なる部分で無駄な配慮を要求されることとなる。つまり、卒業プログラムが短期的な効果を求める仕組みとなっていることによって、受給世帯は中長期的な貧困の世代間連鎖を断つことではなく、短期的な成果を出すことを心がけなければならない事態が起こりうる。

同研究員の概念整理によれば、このような状況下にある受給世帯は2つの選択に迫られる。

1. 子供への資源配分

  • 経済的な配分(投資)先の選択:受給世帯は現金給付を受けた時、現金を世帯内でどのように割り振るか選択する必要に迫られる。これに関しては、現金給付プログラムが子供に良い影響を与えるといった研究が多く存在する。
  • 時間の使い方に関する選択:生産性の高い活動へ時間を割くか、利益は生まれないものの子供の世話に時間を割くか、世帯は選択を迫られる。

2. 子供の世帯に対する貢献

  • 生産性の高い活動:世帯の幸せと子供の幸せは両立しない。世帯がより多くの時間を生産活動に費やせば、子供の世話をする時間が必然的に減少する。
  • 家事や子供の世話:世帯の生産性を向上させるために、子供自らが世帯の活動へ貢献することも考えられる。

私見では、これらの考えに賛同する部分が大きい。社会保護は本来の目的である中長期的な貧困の世代間連鎖をいかに断ち切ることができるか、改めて考慮する必要があるだろう。ポスト2015アジェンダの中で、開発援助業界は絶対的貧困を向こう数十年でゼロにすることを目指している。そして社会保護は貧困と脆弱性の削減の主柱に据えられた政策である。これらの開発課題と解決策を結ぶために、子供の貧困に関する「2つの投資の罠」に着目したアプローチは有効な考え方の一つと言えるだろう。

次のステップは、このアプローチをいかに実践に応用することができるかにある。研究者と実務家に課せられた喫緊の課題と言えるだろう。

参考文献

Keetie Roelen (2015) The ‘Twofold Investment Trap’: Children and their Role in Sustainable Graduation.

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