国際開発、一流の研究者や実務家の条件
難しいことを簡単に説明できる。
国際開発の世界で一流の研究者や実務家の条件はこれに尽きると感じる。
幸いなことに、これまでの職業人生を通じて、世界の超一流の方々の話を聞いたり一緒に仕事をさせてもらう機会を得てきた。
ジェフリー・サックスがなぜあそこまで著名になったか。彼はプレゼンをするとき、統計データを紹介しながら議論を展開する。統計学や計量経済学を扱うエコノミストにありがちな「何を言ってるかわからない」話は一切ない。信頼区間だとか、95%で優位だとか、わけのわからないどうでもよいことは極力省いて話を進める。とにかく誰にでもわかる平易な言葉で語りかけるわけだ。そして、数字を全て(小数点以下まで)暗記しているので止まることなく話し続ける。聴衆は魅了される。
ジョセフ・スティグリッツ。コロンビア大学構内で学生に呼び止められたとき、彼は時間がないにもかかわらず耳を傾ける。取り巻きが次のスケジュールに間に合わないから急がせるものの、話を聞き続ける。そして、学生と同じ目線でコメントをする。これはアカデミックな共同研究の場で議論をするときも、アフリカ開発会議(TICAD)のような国際会議で基調講演するときも全く同じトーン。アフリカの産業政策など、一般庶民には到底考えたことも無いようなトピックを、誰にでもわかりやすく説明しながら主張を展開する。聴衆は魅了される。
こういう仕事をしていると優秀な実務家や研究者と出会う機会が多い。その中で時々、「政治家や官僚はデータ分析をプレゼンしてあげても、その研究結果をもとに政策を作っていく能力がない」というボヤキを聞くことがある。
私がいつも思うのは、「一流の条件」は精緻な研究や分析ができるだけでは満たされないということだ。