国際機関の資金繰りが厳しい今、ILOの現場における事業運営はいかに?

私個人の状況について述べると、幸いなことに、アメリカの影響が薄い、現場のプロジェクトマネージャー兼責任者という立場にある。社会保障分野でインドネシアを担当する場合、私が全責任を負う形になる。もちろん上司である所長などが存在するが、日常的には誰かからの指示を受けてインドネシアに社会保障のアドバイスをするのではなく、どのような助言をするか、労働法改正でどのような提言をするかは私個人の判断で行っている。

このような現場責任者が多数存在し、それぞれが独立採算制で事業運営を行っている。ILOでは、各自が企業内で起業し、零細企業を運営している感覚に近い。そのため、アメリカ政府から資金を受けている事業運営者とそのスタッフは影響を受けるが、アメリカ政府からの資金が入っていない事業については何の影響もなく継続される。

私の場合、日本政府からの資金が大きな割合を占めており、給料もそこから相当部分が支出されている。さらに、ILO本部とニューヨークの国連本部から調達した資金もある。これらILOとニューヨーク国連本部からの資金は、企画書を提出してコンペティションに勝ち抜いて獲得するものだ。これら3つのプロジェクトが、私の事業資金のソースである。

日本政府からの資金は当然アメリカとは関係ないため影響を受けておらず、ニューヨーク本部とジュネーブILO本部からの資金も現在のところほとんど影響はない。論理的には、ILO本部と国連本部の予算にはアメリカの影響もあるため、多少の影響があるかもしれないが、現時点では特段影響は見られない。そのため、私個人はほとんど影響を受けることはない。

ILOの現場での仕事は、他の国際機関と比較して特殊である。組織として仕事をするというよりも、完全に個人の名前と個人の能力、個人のネットワークで運営している。現場の仕事は基本的にそうした性格を持つ。極端ではないが、現実的には資金繰りがうまくいかなければ、ILOとしてその国での仕事を完全に辞めることになる。それは私の責任にかかっており、他国で事業を行っている社会保障専門のプロジェクトマネージャーも同じ状況である。マネージャーが第三国から資金調達できなければ、ILOとしてその国での事業継続はできなくなる。

ILOとして事業継続できないだけでなく、プロジェクトマネージャーは自身の契約も自分で管理している。自分で資金調達を行い、自分の給料とスタッフの給料を支払った上で事業費を割り当て、何を実施するかという事業計画を決定していく。全てを担当するのだ。冗談に聞こえるかもしれないが、事務所家賃や光熱費も、ILOジャカルタ事務所から私宛に請求があり、年初に支払う。予算のないバンコクの同僚に、「光熱費をどうやって払ったらよいか」と相談を受けたこともある。

その結果、事業成果を説明する相手は、私たちのクライアントであるインドネシアやカンボジアといった国々ではなく、資金を提供してくれている第三者になる。私の場合は日本政府、ILO本部、ニューヨーク国連本部の3者に事業成果を説明しなければならない。クライアントが喜んでいても、この3者が納得しない限り追加予算や追加資金の振り込みはない。

クライアントがいかに喜んでいるかも重要だが、実際にその国の社会がどう変わったかが私のKPIである。私だけでなく、他の社会保障専門家も同様だ。社会保障分野で特に難しいのは、制度が変わらないとインパクトがないとみなされることである。

インドネシアの法令レベルで変化を起こさなければ私たちの存在意義がない。存在意義があるかないかは、資金提供者が評価することだ。インドネシア政府が感謝してくれることはありがたいが、それだけでは次に繋がらない。なるべく見える形で成果を資金提供者に説明していくことが非常に重要なプロセスである。ソーシャルメディアで私が活発に発信しているのも、この一環である。説明責任があり、何をやっているかを日常的に発信していくことは非常に重要だと考えている。

英語でLinkedInやXでの発信を強化している背景には、調達と営業の観点もある。事業経費の中から給与経費を割いてスタッフを雇うが、スタッフを抱えることは固定費増加を意味し、維持が困難になる。将来的に業務委託できるところは業務委託で回すという考え方をしないと事業運営していけない。特に資金繰りが非常に厳しいので、地方の零細企業とほとんど変わらない状況だ。

父ともよく話すが、零細企業を運営していた父の状況と、私のやっていることは感覚的にほとんど変わらないか、むしろ厳しい。資金繰りが1年先まで見通せないような状況で、10年近くこの仕事を続けている。非営利でやっているため、顧客に喜んでもらうだけでは収入に繋がらないという、民間に存在しないクリアしなければならない困難なレイヤーがもう1つ存在する。また、単年度予算であるため、第4四半期にならなければ翌年の見込みが立たず、痺れを切らしたスタッフはよりよい仕事を見つけて頻繁に離職する。私を含め、職員の契約も1年契約が最長なのだ。この状況で法令を変えるレベルの仕事をしなければ追加資金(売上)を獲得できないため、かなり不安定な事業運営にならざるを得ない。


※この記事は、AIが筆者のポッドキャストを文字起こし・執筆し、筆者が編集したものです。