国民負担のある政策提言

数か月前に、JICA研究所ランチタイムセミナーでお話する機会を頂いた。その際の質問で印象的だったもの。痛みを伴う政策提言をする難しさは。

社会保障政策の場合、国民の負担が必ずある。開発途上国に携わる人の多くは、おそらく、税金が元手の事業・政策提言であることが多い。

元手が税金であれば、理論上は、国民負担じゃないか。と思われるかもしれない。現実的には、個人の感情として、税金が元手の場合は国民の負担とみなされないことが多い。

社会保険料の負担割合を政労使で決めてもらうときの話し合いは、極めて厳しい。労働者側は目に見える形で給与明細から保険料が抜き取られることに激しく抵抗する。一方、消費税率が10%から11%へ引き上げられた際には、ほとんど議論は起こらなかった。

負担が目に見えるか見えないか。政府予算か社会保険料か。100円の社会保険料の積み増しか、300円の消費増税か。後者で暗黙の了解となる世界もある。

それは、あなたたちの利益にならない、給与から負担すべきだ。などなど、真っ向から労働組合と違う提言をすることも多い。ILOと聞くと、労働組合の意見を尊重、と思われるかもしれない。僕らの仕事は、それが間違っていれば、違う、ということです。

こういう議論を、政府、労働組合、使用者(日本で言えば連合と経団連)の幹部と日々議論する。毎月2回、年20-30回くらい。調整コストは、単純に3倍とは言わないが、政府だけが相手の機関と比べると多いと思う。